Luntaの小さい旅、大きい旅

ちょっとそこからヒマラヤの奥地まで

「桃さんのしあわせ」@Bunkamura ル・シネマ

2012-11-09 11:36:38 | 機内食・映画・美術展
Bunkamuraでもう一本。

 香港映画、「桃さんのしあわせ」

アンディ・ラウ扮する映画プロデューサーが60年も家族につかえていた家政婦さんの老後を看取る話。
「危険なメソッド」のついでのつもりで見たが、こちらの方がずっと気に入ってしまった。

まずは香港の日常の風景。
魚や青菜があふれる市場とか、無愛想な店員のいる食堂、決して豪華ではない高層アパート。
香港に行くと好き好んで歩き回る景色がふんだんに出てきて、「おお、香港だ」。

そして香港を歩いているとよく見かける「老護院」の看板。
トラムなどに乗っていても目に付くのでよほど多いのだろうが、中があんなふうになっているとは。「個室」でさえもまるで災害避難所の仕切りのようで、食事もお粗末。ああいうところで最後をむかえるのはすごくわびしそう。

と入所早々はそのように感じさせて、慣れるにつれて親しい人間関係もできてくる、そのさりげない描写が人懐っこい香港人らしくてとてもいい。

大スター、アンディ・ラウが映画プロデューサーなのにいつも安っぽいジャンパー姿で、エアコンの修理工やタクシー運転手と思われるのがまたおかしい。
赤ん坊の頃から面倒みてくれた家政婦さんを最後まで見捨てないやさしい人なのだけれど、愛情表現がそっけないほどさりげないところ、アジアらしいと思う。
アンディ・ラウはちょっと高倉健に似て来たんじゃないだろうか。

子供の頃から苦労して、自らの家庭を築くこともなく、裕福な家族の家政婦であり続けた桃さん。
これまた多くを語ることなく、その人生を言葉の端や小道具で感じさせるところがうまい。
そして原題は A Simple Life。何が幸せか考えさせる。

アンディ・ラウが同世代だし、桃さんの姿も決して想像できない先の話ではない。
だからこそ身に染みるのだが、アジア的な抑制と優しさにあふれたこの映画、見てよかった。


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コメント (4)
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