暑いのはわかっていたけれど、3月以来ご無沙汰していた上野へおでかけ。
もうじき夏休みの終わる親子連れが動物園へ向かう中、こちらはその隣の東京都美術館で
「芸術ⅹ力 ボストン美術館展」
ボストン美術館は30年前に一度行ったことがある。
日本美術のコレクションが充実しているという事前知識はあったが、ちょっと行きづらい所にある巨大な美術館という印象しか残っていないのが悲しい。
今回は56点が来日しているが、中で一番面白かったのは12世紀に描かれたという「吉備大臣入唐絵巻」。
これ、吉備真備が遣唐使として唐に行くと優秀すぎるというので高楼に閉じ込められ、いやがらせの難問を出されるが阿倍仲麻呂の亡霊と力を合わせて相手方の鼻を明かすというお話。
神通力で空を飛んじゃったりして、笑える。
もう一つ、13世紀の「平治物語絵巻」はさらにすごい。
藤原信頼が頼朝のパパと後白河法皇を拉致る場面、武士や馬の表情がみんな違ってすごい迫力。
どちらもなぜこんなお宝が国外に流失してしまったのか、とその経緯が気になる。
とこの2つは素晴らしいのだが、古代エジプトの彫像から20世紀のサージェントの絵まで持ってきているこのセレクションが謎。一応部屋ごとにテーマらしきタイトルが上げられているのだが、これがどうもぴんと来ない。
国も時代もバラバラのものがまとめられているのでどうしても説明書きを見ることになるのだが、作品保護のために部屋が薄暗くしてあるのでこれが読みづらくてしかたない。
もっとテーマを絞り、説明書きにだけは別のライトをあてるとかすればいいのに、と不満たらたら。
どうも都美術館とはあまり相性が良くないらしい。
1時間ほどでボストン美術館展を出て、次は東京藝術大学美術館へ。
こちらで開催中の「日本美術をひも解く」は副題に「皇室、美の玉手箱」とある通り、数点を除いてすべて宮内庁三の丸尚蔵館の所蔵品、つまり皇室のお宝。
都美術館の観覧者も年齢高めだったが、こちらはさらに平均年齢が高い。
由緒正しい作品ばかりのこちらは各コーナーのテーマもしっかりわかりやすくて、見ていてすっきり。
特に「生き物わくわく」と名付けられたコーナー、かわいい物が多くて楽しい!
自分的には酒井抱一の「花鳥十二ヵ月図」、どこに生き物がいるのかと探すのも面白くて好き
明治以降の工芸品は正直技巧が目立ちすぎてあまり好みではないのだが、明治天皇がそばに置いていたというイタチの置物などは細かい毛の流れなどすごくて、なるほど、天皇はこういうのが好きだったのか。
こちらの展覧会でも圧巻は絵巻物。
13世紀の「蒙古襲来絵詞」では馬も日本の武士も蒙古人も血を流す迫力。
高階隆兼が1309年に描いたものとわかっている「春日権現験記絵巻」は登場人物一人一人の表情や着物の柄まで違ってすごすぎる。
この2つは国宝に指定されているほどのものなので当然素晴らしいのだが、自分的にツボだったのは「絵師草紙」という小品。
絵師があることからぬか喜びをするというお話らしいのだが、登場人物たちの表情などが生き生きとして14世紀に描かれたとは思えないほど、実に楽しい。
そう言えば鳥獣戯画はもっと古い13世紀に作られているし、こういうものを見ると日本の漫画は絵巻物から始まっているのかも、なんて思ってしまう。
絵巻物を堪能し、都美術館のうっ憤を芸大で晴らした美術展のはしごだった。
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