爆速経営 新生ヤフーの500日 | |
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日経BP社 |
いわゆるIT企業というやつは、雨後のタケノコのようににょきにょきと現れては、どんどん合併したり、買収されたりあるいはつぶれたりして名前が消えていく。まさに、「流れに浮かぶうたかた」のようなもので、その方面の人なら違うのだろうが、私のような人間には、なかなか会社の名前を覚えることができない。今はすっかり世の中に定着したかに見える"yahoo"
なんかも、最初にこの文字を見た時は、「『ヤッホー』? 山登りの道具でも取り扱っている会社かいな?」なんて思ったものだ。
IT企業の特徴は、若い人が多く小回りのきく会社だと思っていたが、このヤフー、今では従業員5000人を超える大企業になっているというから驚いた。操業が1996年、20年も経ってないのに、もう意思決定が遅く社内調整ばかりに時間が取られるという大企業病の兆候が見えだしたというのは、意外や意外。「IT企業得意のワークスタイル変換はどうした!?」と突っ込んでみるが、まあこれが日本の会社の実態なんだろうなとも思う。
どんな企業でも、大きくなれば守りに回って活力が失われていってしまう。しかし、守りに入ってしまっては企業の発展は望めない。「爆速経営 新生ヤフーの500日」(蛯谷敏:日経BP)は、そんなヤフーが、どのように、新たな発展を目指して、改革を進めて行ったかを描いたものである。
ヤフーが行ったことは、まず経営陣の刷新。社長以下、主な幹部陣が大幅に変わった。次に目標を明確にした。「201X年までに営業利益を2倍にする」というのがそれだ。そしてビジネスの主戦場をスマートフォンの世界に定めた。ヤフーが提供している各サービスには、ヤフー番付という序列が付けられているという。番付で上位5位以内に入ると、社内から好きな人材を引き抜いてこられるという特権が与えられるというからすごい。逆に番付の最下位ランクに位置づけられ成長の可能性がないと判断されたサービスは取りやめになってしまう。人事評価制度も明快なものに変えた。
要するに、社員の側から見れば、何をどうしたら評価されるのかが、とても分かりやすいのだ。不透明な人事制度や社内システムほど社員のモチベーションを下げるものはない。ヤフーで行われた多くの改革は、大企業病を打破したいと思っている会社経営者には大いに参考になるだろう。しかし、無批判に取り入れればよいと言う訳ではないのは当然である。例えば、鉄道のような公益事業で、番付制度を取り入れたりしたら、田舎はみんな廃線になってしまう。自分の会社に合うようにアレンジすることは欠かせないのだ。それが経営者のセンスというものだろう。
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※本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。