文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:幻獣の書 (パラディスの秘録)

2015-03-23 21:03:50 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
幻獣の書 (パラディスの秘録) (創元推理文庫)
クリエーター情報なし
東京創元社


 退廃と背徳の都パラディスを舞台に繰り広げられるおぞましい物語。ダークファンタジーの名手、タニス・リーによるパラディスの秘録シリーズの最新巻「幻獣の書」(東京創元社)だ。この物語は、「緑の書 エメラルドの瞳」から始まり、「紫の書 紫水晶を出でて」に続き、また「緑の書 エメラルドの瞳」に戻るという作りになっている。描かれるのは、古代アッシリアを期限とする鳥の魔物ウトゥクの恐ろしい物語。

 「緑の書 エメラルドの瞳」の前半は、大学で勉学のため、パラディスにやって来たラウーランという若者の話だ。彼は、下宿先の没落貴族の屋敷で、いるはずのない若く美しい娘を目撃する。名は、エリーズ・デュスカレ。彼女の瞳は、まるで一対のエメラルド。壁に囲まれた庭園にある廟にその名が刻まれ、死者として扱われている。その原因は、かってこの館で起きた凄惨な事件。彼女が嫁いだエロス・デュスカレは、なぜかエリーズに触れようとしない。彼女が、夫に媚薬を飲ませ、無理やり関係を結んだ時に起こったおぞましい出来事。そして、エリーゼに誘惑されたラウーランが、彼女と交わった時に、再び恐怖が幕を開ける。

 怪物の物語の始まりとなる「紫の書 紫水晶を出でて」では、舞台ははるか昔、古代ローマガ支配していた辺境の地に飛ぶ。ローマ軍人のウスカが娶ったのは、キリスト教徒の乙女ラウィニア。宗教の違いが二人の溝をひろげていく。夫婦関係は冷え切り、ウスカは、娼婦リリラに夢中になる。神憑りとなったリリラから送られた紫水晶の護符。それは、最初のうちは、彼に運をもたらしてくれるように見えた。夫婦関係も改善し、ウスカも司令官に昇進。しかし、しだいに彼の活力は無くなり、護符に刻まれた魔物の影が身の回りにちらつくようになる。ウスカは、山の民の男の力を借りて、再び活力を取り戻すも、これが恐ろしい因縁の始まりだった。生まれた息子ペトルスがやがてルキアという娘を娶るも、彼女と関係を持とうとしない。ルキアが媚薬を使って、ペトルスと結ばれたが、その時起きたことが、彼女を狂気に陥れた。

 そして、「緑の書 エメラルドの瞳」の後半では、再びラウーランの話に戻る。ウトゥクにとりつかれたラウーランは、自殺を図るが、ユダヤ人学者ハニナとその娘のルケルに救われる。二人の力で、ラウーランは魔物の呪縛から逃れ、ルケルを妻にして、物語は終わる。

 この物語には、男と女の対立構造が見える。ここでは、男は、怪物の命運を終わらせようとする存在だ。怪物に変化するのは、男なのだが、自分が怪物になるのを防止するため、女と交わることを避けたり、自らの命を断とうとする。一方、女は怪物を伝える存在として描かれている。自分に触れようとしない夫に媚薬を飲ませて、無理やりに交わったり、死してもなお、体の内に怪物を潜ませ、その怪物を伝える男を待っているような存在なのだ。こういった男女の役割構造が、物語の中では大きなアイロニーとなっているのではないだろうか。なにしろ、パラディスは、両性具有の都、男と女の区別さえ定かではない都なのだ。男と女の区別にどのような意味があろうか。こういった対立構造からくるアイロニーの面白さがリーの魅力となっているのだろう。


 さらに、この魔物を封じるために重要な役割を果たしたルケルも、魔物を伝える役割を持っているはずの女性だ。ここに二重のアイロニーをも感じる。それにしても、ラウーランを救うための儀式で、ルケルの舞った舞いのなんともエロチックなこと。

 闇の女王リーの描くパラディスの物語は、どこまでも暗く、退廃に溢れ、そして淫猥だ。しかし、人間の心には誰しも闇の部分がある。だからこそ、この暗い物語が、読者の心に響き、そして魅了するのだろう。読者は、読み進むうちに、どんどんパラディスの闇に囚われていき、抜け出せなくなってしまうに違いない。

☆☆☆☆

※本記事は、姉妹ブログと同時掲載です。
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放送大学の教材到着

2015-03-23 20:59:42 | 放送大学関係


 仕事から帰ると、放送大学から、H27年度1学期の教材が届いていた。昨年度の実績が、3月23日だったので、そろそろと思ってはいたが、予定通りだ。

 これまでは、あまりテキストを繰り返し読むこともできなかったが、今回は、せめて3回は読みたいと思う。できれば、参考文献まで手を回したいが。
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