![]() | 新しい物性物理―物質の起源からナノ・極限物性まで (ブルーバックス) |
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講談社 |
高名な数理物理学者であるヘルマン・ワイルの名著に、「SPACE TIME MATTER」というものがあり、これを日本語に直せば、「空間 時間 物質」となる。この本自体は、一般相対論を扱ったものだが、このタイトルは、物理学で扱われる対象を端的に表していると言えるだろう。
本書のタイトルにある「物性物理学」とは、その名が示す通り、物質を取り扱う物理学である。これが、ものづくりに応用されると、物性工学となり、現代の様々なハイテク製品が生まれたのは、この科学のおかげだといっても過言ではない。
実は、物性工学は、電子工学のなかの一分野としても扱われており、私の専攻が電気・電子工学だったため、学生時代は、かなり勉強した。ただ、この「物性」という用語は、日本独自のもので、英語では、「固体物理学」または、「凝縮体物理学」と呼ぶようだ。
本書は、量子論、素粒子論の基礎的な話から始まり、電子、原子や物質の構造について説明した後、電気伝導、磁気などの応用面に移り、更に新しい応用法についても展望しており、カバーする範囲はかなり広い。最初は、基礎的な話なので、量子論などについてある程度の知識がある人は、3章くらいまでは飛ばしてもよいだろう。
一般書なので、数式はなく、定性的な説明のみとはいえ、物性物理学を勉強していくための基本となる諸概念は沢山詰まっている。将来、この分野を目指す人は、熟読して、頭の中にイメージを作っておけば、専門書を読んで勉強する際に、大いに役立つだろう。そうでない人にとっても、本書により、現代の物理学についてのざっくりした知識を持っておくことは、いわゆるエセ科学に騙されないためにも、有効だと思う。
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