文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活

2015-03-08 10:30:37 | 書評:ビジネス
貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活 (オレンジ世代新書)
クリエーター情報なし
明治書院


 日本銀行調査統計局が昨年12月18日に発表した「資金循環統計(2014年第3四半期速報)」によれば、2014年9月末において、家計の金融資産1654兆円のうち52.6%は現金・預金であり、株式・出資金は9.4%、投資信託は5.2%、債権にいたっては、1.7%しかない。この低金利の時代にも関わらず、どうして国民は、資産を増えもしない現金・預金で持とうとするのだろう。言いかえれば、なぜ国民は、株式などに投資することに、これほど躊躇しているのか。

 かって、投資を区分するのは、ローリスク・ローリターンとハイリスク・ハイリターンという分類だった。すなわち、増え方は少なくともよいから元本の安全性を優先するのか、それとも元本の保証はないが、大きく儲かる可能性のあるような投資が良いのという選択だった。しかし長引く超低金利と不況の時代では、私たちの前にある選択肢は、ローリスク・ノーリターンとハイリスク・マイナスリターンしかないように思える。増えないのと、損をするのとどちらを選べと言われれば、損をしない方を選択するのは当然のことだ。どうせ増えないのなら、現金・預金で持っておくのが、流動性を確保できるうえに、色々と面倒くさくなくて良い。これが、国民の気持ちを投資に向かわせない一番の原因だろう。

 しかし、公的年金も十分ではないこの時代、大金持ちならいざ知らず、普通の人にとっては、いつまで待っても「金の卵」を産んでくれない現金・預金だけでは、老後の保証としては不足するのは目に見えている。それではどうすれば良いのだろう。本書「貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活」(野尻哲史:明治書院)は、そのためのヒントを与えてくれる。

 本書の教える投資のキモは二つだろう。一つ目は、「投資を分散して行う」ということだ。この分散というのは、投資内容の分散だけでなく、時間的な分散も含まれている。著者は、国内株式、国内債券、海外株式、海外債権の4つに均等に行うことと、毎月定額で投資することを進めている。投資先を分散すれば、どれかで損失を抱えても、他でカバーできる可能性が高くなり、時間を分散すれば、高値でつかんで後で泣くということもなくなるからだ。これは、私のささやかな投資経験からも納得できることである。

 そして、もうひとつは、「使いながら運用する」ということだ。著者は、引き出し率を年率4%にして、残りを3%で運用することを目指すことを推奨する。何しろ老後資金として、必要なのが、60歳で2800万円、75歳になってもなお2400万円ということだから、ただ使ってばかりでは、すぐに底をついてしまう。運用に終わりはないのである。しかし、3%運用とというのは、プロならともかく、我々素人には、少しハードルが高いような気もするのだが。

 このほか、本書には、NISA(少額投資非課税制度)やDC(確定拠出年金)などの活用のみならず、究極の裏技?として物価の安い地方都市への移住というようなことも紹介されている。安心・安全な老後のために、一読しておいても損はないだろう。ただし、投資はもちろん自己責任で。

☆☆☆☆

※本記事は、姉妹ブログと同時掲載です。


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