またしても、幼馴染の寺の跡取り息子の話である。
大学時代、幼馴染である寺の跡取り息子が、僧侶になる勉強をするために、京都にある仏教系の大学に通っていたことは、既に書いた通りだ。
時々会っていたが、人の顔を見ると、いつも女の子の話しかされた記憶しかない。いかにも自分が、もてもてのような感じでしゃべっていたのだが、そのわりには、いつも、合コン、合ハイ(合ハイとは、女子大の女の子たちと一緒に行う「合同ハイキング」のこと。昔は、健全な男子大学生は、こんなことでもしないと、女子と知り合う機会がなかったのだ。合コンは、昔は大学生限定で使われていたと思うが、最近はもっと幅広く使われているようだ。しかし、合ハイってどうなんだろう。今でもうやっているのだろうか)やろうと、人にけしかけてくる。そんなにもてているのなら、合コン、合ハイなんて必要ないだろうと思うのだが。もう一回念押しすると、彼は寺の跡跡取り息子である。立派な坊さんになるために、わざわざ京都の大学まで、勉強をしに来ていたのである。
さて、この寺の息子、ある時、ちょっと来て手伝って欲しいことがあると電話をかけてきた。行ってみると、食事をおごるから、卒論を手伝ってくれと言う頼み。いったい何をすれば良いのかと思ったら、いきなり浄土真宗関係の書籍を渡され、使えそうなところを抜き出してまとめてくれとのこと。皆さんはもう知っていると思うが、私の専攻は電気工学である。いくらありがたい親鸞様のお言葉でも、そうすぐに、内容が頭の中にすうっと入ってくるわけがない。そのうえ、彼が、どんな論旨で論文を書くつもりかも分からないのである。(多分、本人も何も考えてなかったと思うが。)
それでも、まあ、適当に書いて渡したが、後でしっかりカップラーメン1杯おごってもらった(これが約束の食事だそうだ)。私も本当に人がいい。その2年後には、彼の弟の卒論も、同じように手伝うはめになろうとは、その時点では知る由も無かったが・・・。
その後、彼がどのような卒論を仕上げたかは知らないが、ともあれ、その彼も、いまは立派な?住職になっている。
※本記事は、2006.02.15付で、「時空の流離人」に掲載したものに加除修正を行ったものです。
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