珍しいアイルランドのファンタジー。舞台はアランモア島。この島は、時が何層にもなっている。この島に夏休みを利用して、姉のタラとアイルランドの首都ダブリンからやってきたのがフィオンという少年である。ちなみに、アランモア島もアイルランドの西にある実在の島である。
訳者あとがきによれば、本作は、三部構成が予定されているものの第一部ということで、既に原書第二巻は刊行されており、来年3月には第三巻も刊行される予定だという。
この闇とはアイルランド神話に出てくる戦いの女神モリガンだ。対するはアイルランド神話の最高神ダグザ。しかし、この作品の中では二人とも魔導士という設定になっている。モリガンは長い年月復活の時を待っている。目覚めてはいるが完全に復活はしていないようだ。このモリガンの復活を阻止するというのがこの作品のテーマのひとつだろう。
これに対して、モリガンを復活させようとしているのが、ソウルストーカーと呼ばれるモリガンの手下。アイヴァンという男だ。
タイトルの嵐の守り手とは、キャンドルの中に天気を封じる力を持つようだ。ついでにその時の時間も。これが本作品では、かなり大きな働きをする。
しかし、一巻に出てきた伏線の多くは回収されていない。特にギフトに関する部分。おそらく次巻以降に回収されるものと思うが。この島には、いくつかのギフトを与えるものがあるが、フィオンの挑んだのは海の洞窟だけだ。姉のタラを救出するという流れででてくるのだが、別に何か力を得た訳ではない。
二つ目のささやきの木も出てきたが、キャンドルに封じられた、別の時間での出来事だから、フィオンがこの時間の中で直接体験したわけではない。あと二つあるが、これらは名前しか出ていないのである。
全体を見渡せば、フィオンが嵐の守り手として成長する物語というところか。これからどう展開していくのだろう。
「ぼくが、<嵐の守り手>になったの?」「おまえが、<嵐の守り手>だ」祖父はそういうと、ぎゅっとフィオンの手をにぎった。(pp329-330)
それにしてもフィオンが嵐の守り手になったら、島にずっといなくてはならないので、学校の方は大丈夫かとつい心配してしまった。
☆☆☆