林信行の「今そこにある未来」セミナー(1) 3Dプリンティングによる第3次iT革命 (カドカワ・ミニッツブック) | |
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3Dプリンタというものをご存じだろうか。映画の3Dのように、赤青のメガネで見れば立体に見えるという画像を印刷するプリンタではない。コンピュータの中に収めた3Dデータに基づいて、断面をミクロン単位で印刷して、それを積み重ねることで、立体物をつくるという機械である。
印刷というのも正確な言い方ではないかもしれない。紙以外にも、樹脂、石膏、金属なども材料となるのだ。基本は形を積層していくということなのだが、もうこうなると、私たちが想像するプリンタの概念を遥かに超えてしまい、造形機械と言っても良いだろう。この3Dプリンタ技術の現状や将来展望などについて解説したのが、「林信行の「今そこにある未来」セミナー(1) 3Dプリンティングによる第3次iT革命」(カドカワミニッツブック)である。
この3Dプリンタの大きな特徴は、外部も内部も同時に作ることができるということである。だから、歯車を組み合わせたようなものをつくると、その歯車は本当にくるくる回るし、実際に吹くことのできるフルートの部品なども作れるという。さらには、人間の細胞をつかって、3Dプリンタの技術で臓器を作ってしまうことも研究されているらしい。その人の脂肪細胞から膝の三日月盤をつくって移植したという治験例もあるというから驚きだ。
本書には、色々と興味深い写真が掲載されているが、中でも凄いと思ったのが、3Dプリンタで印刷された人間の頭部だ。これが美女ならまだしも、おっさんの頭部だけに、リアル過ぎて気味が悪いくらだ。もし、暗い場所にこれが置いてあれば、獄門首に間違えてしまいそうである。
確かにこの技術は、「ものづくり」のパラダイムを根本的に変えてしまうに違いない。データさえあれば簡単にプロトタイプができてしまう。もう一つ忘れてはならいのが、ものづくりのパーソナライズ化が進むということだろう。誰でもこの機械があれば簡単にものを作れてしまう。「こち亀」にも、両さんが3Dプリンタを買った話があったが、やがては一家に一台なんていう時代が来るかもしれない。
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※本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。