雨、25度、92% 福岡
福岡市の繁華街天神のちょっと外れ、カトリックの教会があります。私が幼児洗礼を受けた大名教会です。その隣に,ロシア料理を食べさせてくれる店が小さい頃からありました。ツンドラです。
2日前です、義母とこのツンドラの話が出ました。話を聞いていると、その昔、まだ珍しかったロシア料理を義父と食べに行った思い出があるそうです。耳の遠くなった父がいつもの食卓に座り、私たち二人の様子を見ています。「明日、ツンドラにご飯に行かない?」と耳元で聞いてみました。耳ばかりか、足が不自由になって来ています。もうすぐ92歳ですから、当然です。それに、記憶も時々途切れます。ツンドラって、覚えているかな?と思っていると、「ぼく、行くよ。」とのお返事です。
父は、ここしばらく外食をしたことがありません。月の半分は、老人施設にショートステイです。お迎えが来ると、行きたくないと言うそうです。それに、こうした施設のご飯は、どこもあまりおいしいとは言えません。朝から鯛のお刺身のお茶漬けを食べて来た義父です。食べることは、どんな歳になっても一番の楽しみです。そんな父も、昔より食べる量が随分少なくなっています。
昨日の福岡、午後から雨の予報です。義父の外出の準備は時間がかかります。朝みえたヘルパーさんが驚く程、父が進んで外出の用意をしています。しかも、前の日のツンドラ行きの約束も覚えています。義母が新しいシャツを、義父の外出におろしました。新しいソックスも出して来ました。足がむくみ気味、ソックスを履かせて、靴は楽なスニーカーをと思っていると、義父は革靴をと要求します。おしゃれな義父です。むくんだ足をゆっくりと革靴に入れてやりました。
ポチポチとしか歩けません。片手に杖、もう片手は義母が支え、ツンドラの前で車を降りました。昔のままのお店作りです。好きなものを取ってもらおうと思っていたのですが、義父も義母も、私にお任せです。ボルシチもピロシキもきのこのつぼ焼きも、全て入っているセットを頼みました。
ピロシキは、ナプキンに包んで手に持たせました。パクパクと召し上がります。ボルシチの大きなお肉のかたまりも残さず食べました。 きのこのつぼ焼きは、真ん中に大きく穴をあけてあげると、蓋のパンが気に入って食べています。結局、全て食べてくれました。
義父は食事に日本酒を必ず少しいただきます。お酒をぬるめにお燗をしてもらい、喜んでくれました。こうして、義父と義母と食事に出かけるのも、もう、そう機会がないかもしれません。食事が終わると疲れたのか、家に帰りたいと言います。雨が降り出す前に、ポチポチ歩いて車に乗りました。
ちょうど、3人できのこのつぼ焼きと格闘していると、香港にいる主人がたまたま電話をくれました。ツンドラで食事をしていると伝えると、電話の向こうの方は驚いているようでした。
私が、イチゴのジャム入り紅茶を初めて飲んだのも、ピロシキやきのこの壷焼きを初めて食べたのも、このツンドラです。お店の中は明るい作りに変わっています。あの大きなロシアの紅茶を入れるサモワールが無くなっていました。