曇り、25度、81%
パンを焼くことって、お米を炊くのとはやはり違います。お米は水を吸って熱をくわえることで柔らかくなりますが、パンは小麦の粉と水が出会って、そこに何やら生きた菌をくわえることで、大きく膨らみます。言い換えれば、この生きた菌がなければ、ただのベッタッとしたパンケーキです。この菌は、きっと、暑い土地でリンゴやブドウが腐り始めた時に出来たに違いありません。その菌が、ベッタッとしたパンケーキに偶然混ざって膨らんだのかもしれません。
30数年、下手ながらもパンを焼き続けて来ました。そして、使う菌といえばこれまた30数年浮気もせずに、サフというメーカーのドライイースト一筋です。保存に便利、作りたい時にすぐ作れる、そうはいうものの、イーストだって生き物です。気温が上がれば、我家のモモさんと同じように伸び切ってしまいます。そこは、なだめすかしてご機嫌を見ながら、イースト菌にヨイショっとやってもらいます。
天然酵母がどうのこうの、美味しいのよ、なんて聞いたって、酵母を起こすまでの時間や保存を考えるとまあいいや、と知らぬ顔。それが、オーストラリアにいる友人が天然酵母を起こしている様子を知らせてくれたときから、急に事態が変わりました。一番面倒だと思っていた、酵母菌を時間をかけて起こす、その作業に急に惹かれたのです。主人にいわせれば、仕事も辞めて時間があるからだそうですが。その上、天然酵母の小袋が日系のスーパーで売っています。おまけに、今の香港の気温なら、室温で放って置いても酵母菌が起こせそうです。 出来上がって、匂いを嗅ぐと、あれ、甘酒のような匂いです。思わず味見しようと思った程でした。何でも焼けますと書かれていますが、手始めに、小ぶりなカンパニュと呼ばれる田舎パンを焼いてみることにしました。
田舎のおばさんが焼く大きなずっしりしたカンパニュより少し軽めを狙っています。 バトンヌというかごに入れて、発酵させます。思うように発酵してくれないので、そのまま置いて買い物に出かけました。戻ってみると、 まあ、こんなものでしょうか。これを天板に移して焼きます。天板に移す時に、少し萎んでしまいました。
確かに、イースト菌のときとは焼いている間の匂いが違います。期待してオーブンの中をの頻繁にのぞきます。焼き始めても少しは持ち上がるはずですが、あまり縦伸びしてくれません。
香りだけではありません、引きが違うというか、つやのある大きな気泡がモッチリと甘みを持っています。イースト菌だって、人の手が加えられていますが、天然だよね、と思いつつ、このホシノ天然酵母の魅力に今ぞっこんです。
30年経っても、まだまだ、興味が尽きないパン作り。しばらくは、天然酵母にお世話になります。