蝶になりたい

いくつになっても、モラトリアム人生。
迷っているうちに、枯れる時期を過ぎてもまだ夢を見る・・・。

蟹工船・体験実践版・呑み屋

2010-02-24 | 人々の風景
昨日は(さほど)酔わなくてよかった。
その分、失敗もないし。


大阪市内のA呑み屋、繁盛しすぎ。
いつも席は、いっぱい。
次から次へと客が訪れる。
満杯になっても、ぎゅーぎゅーに限度ギリギリまで詰め込まれる。
隣の人と、袖すり合うどころか、カウンター前に一列にすっきり並ぶべき椅子が、
カウンター前の面積より椅子の占める割合が増えるため、ジグザグ凸凹に、はみ出す。
そこまでくると、もう、さすがに次は客を入れない。
でも、次から次へ、新しい客が顔を見せ、女将に断られ、すごすご帰っていく。

隣に座っていた40才ぐらいの男性客が、また、大人しいお方。
自分が食べた後、布巾でこまめにテーブルを拭き、食器をカウンター越しに返す。
腰も低く、態度も丁寧。自分が飲食したものをひとつひとつ女将に復唱し、お勘定。
あの人、こんな呑み屋であんなに気を使うんだったら、
いったい、職場や家では、どうしてるんだろう???

お客さんたちは、マインド・コントロールされているかのごとく、
大人しく一列に並んで、狭い店内に詰め込まれるだけ詰め込まれても、
文句も言わず、もくもくと安酒を飲んでいる。


あの呑み屋には、力関係がある。不動の上下関係。
一番、弱いのは、お客。
なにしろ、安いので、どんなに気に入らなくても、通ってしまう吸引力。
オソロシイ・・・・
女将は、強い。客は、女将の機嫌を損ねないよう、注文の仕方や、座り方に気を配る。
自分の席の後始末までして、女将に気に入られようと、涙ぐましい努力をする。
ちなみに女将は優に70を超えているだろう、背中の曲がった、貧相な怒り顔の人。
笑った顔は、見たことがない。

その女将を、ヒステリックに怒鳴り散らすのは、一緒に働く、女将の息子。
年の頃なら、40後半~50代?? 
この、老いた母親を客の前で罵倒する、怒りんぼ息子は、間違いなく独身だと推測する。
その、女性に縁のないイライラもあってか、必要以上に母親に当たり散らす。
すると母親は、その分、客に、当たり散らす。
客は、ますます、大人しく、飼いならされる。

番外編として、おじいちゃんが、いる。
つまり、女将の夫であり、Mr.怒りんぼのお父君。
この人は、一応、トップの座に君臨し、奉られている感があるが、
実情としては、女将にも息子にも、嫌われているように思う。
そして、もう一人。週末だけのお助けマン(→堂々と死語を照れもせず使う・・・)がいる。
(おそらく)娘さん。推定年齢50代後半の、ぽっちゃりさん。
つまり、黄金ファミリーなわけだ。

これだけファミリー・メンバーが勢ぞろいで、店を切り盛りしていたら、結構なことなのだが、
仲が悪い家族で、陰惨な雰囲気はひしひしと伝わり、家庭不和を客がヒヤヒヤどきどきしながら、
いつ、とばっちりがくるのではないかと恐れながら、少し距離を取りつつ、お酒を飲む。
客は、なにしろ、この店を閉められたら困るので、
どうか、家族で(喧嘩してもいいから)、店だけは運営してほしいと切に願う。

なので、客同士の連帯なし、客と店側の連帯もなし、和気あいあいムードなし。
時折、事情を知らない若い人が、訪れることがあるが、二度目に来るのを見たことがない。
若い人々には、あの「蟹工船」状況は、耐えられないに違いない。

それにしても、そんなにまでして、飲みたいかなぁ。
お金って、そんなに大事なFactorなのか・・・。
お金のために、牙をむくケースもあるが、牙を抜かれるケースもあるようだ。

そういう人がいっぱい、わんさか詰まって大盛況のそのA呑み屋、繁盛しているわけだが、
なんだか、刑務所にいっぱい人が詰め込まれているようにも見えてしまう。
看守は、女将と、怒りんぼ息子、所長は、おじいさん。
時折、まんまるい顔をした女性看守も姿を見せる。

哀しいけれど、不思議な連帯感、猿団子のような温もりがあったりして、
人生、いろんな場所に、意外な展開がある。





何も言いません。副題は、「猿団子のススメ」。
哀しい現状、みんなで猿団子。無理ですか?