わたしは、こう見えても、(見えないと思いますが)、むかしは、若い娘でごさいまして・・・
雪の降る頃になると、年末紅白歌合戦の前に、なにやら古めかしい、討ち入りのドラマ。
田舎の我が家のテレビに映し出される画面に、こころのなかで、「ああ、年末の風物詩・・・」とつぶやいていた
可愛げのない子供だった。
もう何十年も前に、毎年繰り広げられる討ち入りのシーン。
そうとう幼いころには、単なる冬の風物詩としか捉えてなかったが、
ちょっと、こましゃくれてくると、ああー、カビ臭いなあ・・・と、子供のわたしの目には、そう映っていた。
あれから、かなりの年月が経った。
フランスには近年、熱をあげているが、忠臣蔵には、いまも、むかしも、まるで興味がない。
にもかかわらず、先だって観た「十三人の刺客」が、ちょっと面白かったので、
あの、忠臣蔵も、ひょっとして、面白いのかも??と、意外性を期待して、観に行った。
館内は、見事、お年よりばかり。
わたしがいちばん若いのでないだろうか・・・と思うぐらい。
途中、観客のひとりの、いびきが、うるさい。
後半、泣いている男性の、ぐすん、ぐすん、という音あり。
思い入れ、たっぷりの人もいるようだ。
わたしの感想。
若いころの役所広司は、NHKテレビで観たことがあり、
どこがいいのかさっぱりわからなかったが、いい顔になった。
佐藤浩市もシブいです。
それはそれとして、わたしには、申し訳ないけれど、武士道も、男の道も、さっぱりわからない。
「北の国から」を手がけた杉田成道が、監督ということで、そういう傾向にあるのかな・・・と予想はしていたが、
肝心の「北の国から」自体を観ていないので、なんとも、かんとも、比較はできない。
男性を中心に描かれたストーリー。
女性の気持ちなどは、みじんも取り入れられていないようだ。
それが、女性にはわからない、男の忠義心?
こうだったらいいな、という、男の理想を追求したような内容。
接点のないぶりを例えると、きゃーきゃーうるさいガールズトーク満載の「SEX AND THE CITY」を、
武士の熟年男性が観るような、そんなかんじ?
つっこみどころが、満載すぎて列挙しきれない。
オンナは、道具?
そんな気さえする。ただし、男も、道具。コマのひとつ。武士社会のコマ。
今でいえば、大企業の大きな歯車のひとつ?
元・花魁(おいらん)(キャスト/安田成美)に、
武士の娘として必要な教養、たしなみの全てを徹底的に教育されるというのも、ちょっとどうかと・・・
わざと、アイロニーの意味が??
二人の女性(生娘&熟女)から熱き思いを熱烈にラブコールされても、両方ふって、
今は亡き主に仕えて殉死するなんて、かっこよすぎませんか?
嫁入りさせたらそれで終わり、なんて、シンデレラ・ストーリーじゃあるまいし、
それからが、大変なんじゃないですか。
結婚してからが、その日からが、すべての始まり。
いろんな悩みや苦悩を聞いてあげ、相談にのってあげ、フォローしないと、
嫁に行った当日に自決してしまうなんて、なんと、責任を全うしてないか。
当時の武士社会の歴史的背景では、不自然ではないにしても、平成のいま、観ると、へん。
大石内蔵助の娘として気位高く、教養高く育てられたら、
金持ち町人の家とは、合わないのは、火を見るより明らか。
嫁に行ったあと、地獄だと思うけれど。
だいいち、隠し子、つまり、非嫡出子が、こんなに丁重に扱われるなんて・・・
まあ、当時の大奥やらなんやら、お世継ぎやら、なんやら、
お偉い方々はたくさんお子さんをいろんなところに作られていたので
洋の東西を問わず、昔はそうだったのだけれど。
男性の考え方、当時の考え方、どんなに歴史的背景を踏まえたとしても、
わたしには、どれをとっても、まったく共感も共鳴も示せなかった。
映画が終わって、トイレに行ったら、流れるBGMが、いま、やっているミュージカル映画の
明るい、楽しげな音楽だったので、思わず、ほっとした。
やっぱりわたしは、「マンマミーヤ」や、「イタリア—ノ」などのミュージカルのほうが、こころに添う。
そうでなければ、こういう暗いものだと、ちょっと風刺や強烈ギャグが効いたものなら、ヒネリに救われるのだが。
日本人なのに、日本人のこころを理解できないわたしは、実にイヤなヤツなんじゃないかと、
自責の念にかられ、後味は、いたってよくなかった。
ということで、忠臣蔵の愛好者のみなさま、ごめんなさい。
わたしには、愛する人のこころを踏みにじってまで貫き通す、「忠義心」というものがないようです。