遠方に赴任している息子が、突然、帰省した。
なんの前触れもなく、いきなり帰ってくるので、いつも、あたふた。
スケジュールを聞かされていないので、予定はその場でわかることが多い。
帰省した翌朝、前の赴任地へ用事で行くと言うので、乗り継ぎに便利な駅まで、車で送って行った。
それで、ああ、もう帰ってこないんだ・・・と、さびしく思っていたら、
いきなり、その日の夜に、もう一度、顔を見せた。
ありゃりゃ、なんで?
仕事は?
同じ、関西圏なら、なんの問題もないけれど、
帰るのには、飛行機を利用しても8時間かかる、遠い赴任地。
日曜日の夜に、顔を見せたら、当然、翌日、平日からの仕事に間に合わない。
夏休みだそうだ。
なあんだ・・・もうちょっと前に言ってほしかったなあ。
でも、平日は、家族全員が、仕事なので、彼は、ひとりで家にぽつんと残されることになった。
せっかく遠くから帰ってきているのに、なんだか可哀そうだけれど、
まあ、夜には、ひさしぶりの家族集合で、とても懐かしかった。
土曜は、夫は飲み会から帰宅した後の、遅い時間にサプライズ帰省だったので、
シャンパンを1本空けただけだが、
その後、
日曜、月曜の夜には、ビール数本、白ワイン2本、赤ワイン1本、シャンペン1本、りんご酒1本が、次々と空いた。
日本酒も、冷で飲んでいたようだ。
空き瓶、ごろごろ。
息子をダシに、主に夫が、一人で飲んでいるようなものだが。
いつも、飲むと、夫は早々に酔いつぶれる。
下娘Rは、食事が終わるや否や、自室へ引き上げる。
(今、試験前で勉強中だから、仕方がないと言えば、仕方ないが、愛想なし人間)
土曜日、日曜日とは、話らしい話は、あまりしなかったが、
昨夜は、少々、酔いもあって、息子とわたしは、少し話をした。
仕事の話100%。
わたしは冗談っぽく話したつもりが、結構、息子はシリアスで、とても真面目に仕事に取り組んでいる。
仕事を通して見える、社会の問題点が浮き彫りにされ、
日々、それを息子は痛いほど感じるようだ。
大変だなあ・・・
日本には、いろんな社会問題を抱え、日々、止まることがない。
決して理想的なカタチではなく、このまま行くと、どんどん悪い方向に行くようなことを言っていた。
社会を悪くするのも、良くするのも、人々の意識。
意識を改革するのは、並大抵ではなさそうだ。
人は、困窮する社会にひっ迫して、はじめて、コトの重要性に気づくのだろう。
問題意識のなさ。
その時では、遅すぎるのだが、問題点を感じない時には、ぼーーっとしているだけで、
気がつかない。
自分の身に火の粉が降りかかってきて、はじめて、熱さに気づく。
現場から、従事者が訴えても、なかなか届かないようだ。
特に、東京に住んでいる都会人には、その傾向を強く感じると、彼は言っていた。
地方の人と、文化や考え方、暮らし方の違いが顕著だそうだ。
口は出すけど、手は貸さない。
問題点の責任を自分で負わないで、社会や人、担当者に向ける。
昔と今とでも、人々の意識はずいぶん変わった。
社会が豊かだから、そうなったんだろうけれど、結局、それで、別の歪みが生じている。
いろいろ、考えさせられることが多い。
日ごろ、のほほんと、アタマからっぽに、暮らしているわたしとしては、
平和そのものの毎日を送っているが、
息子も、学生の時とは違い、社会で働くようになると、様々な社会問題にぶつかり、
社会の一員として、もまれているんだなあ・・・と、感慨深かった。
今朝、空港行きのバス停まで、車で送り、車の中から窓越しに、赴任地に戻っていく後ろ姿を見送った。
息子の夏休みは、終わった。