枕草子 第二百九十一段 よろしき男を
よろしき男を下種女などの褒めて、
「いみじうなつかしうおはします」
などいへば、やがて、思ひおとされぬべし。譏らるるは、なかなかよし。
下種に褒めらるるは、女だに、いとわるし。また、褒むるままに、いひそこなひつるものは。
そこそこの身分の男を、下賤な女などが褒めて、
「たいそうお優しくていらっしゃいます」
などというのを聞きますと、すぐに変な勘繰りをしてしまって、男の評判は落ちてしまうことでしょう。悪口を言われるのは、かえってよろしいのです。
下賤の者に褒められるのは、女であっても、はなはだ迷惑なのです。また、褒めているうちに、ぶち壊しになってしまうものですよ。
このあたりの文章は、少納言さまの下賤なものに対する差別意識を感じさせます。
そういう時代であったということですが、若干抵抗も感じます。
ただ、下賤ということではなく、「下品な」とでも読み変えますと、現代でも共感できるものがあるようにも思います。
よろしき男を下種女などの褒めて、
「いみじうなつかしうおはします」
などいへば、やがて、思ひおとされぬべし。譏らるるは、なかなかよし。
下種に褒めらるるは、女だに、いとわるし。また、褒むるままに、いひそこなひつるものは。
そこそこの身分の男を、下賤な女などが褒めて、
「たいそうお優しくていらっしゃいます」
などというのを聞きますと、すぐに変な勘繰りをしてしまって、男の評判は落ちてしまうことでしょう。悪口を言われるのは、かえってよろしいのです。
下賤の者に褒められるのは、女であっても、はなはだ迷惑なのです。また、褒めているうちに、ぶち壊しになってしまうものですよ。
このあたりの文章は、少納言さまの下賤なものに対する差別意識を感じさせます。
そういう時代であったということですが、若干抵抗も感じます。
ただ、下賤ということではなく、「下品な」とでも読み変えますと、現代でも共感できるものがあるようにも思います。