雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

宮仕へする人々の

2014-04-21 11:00:51 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第二百八十四段 宮仕へする人々の

宮仕へする人々の、出で集まりて、おのが君々の御事、賞できこえ、宮のうち・殿ばらの事ども、かたみに語り合はせたるを、その家主にてきくこそ、をかしけれ。
家広く、清げにて、わが親族はさらなり、うち語らひなどする人も、宮仕へ人を、方々(カタガタ)に据ゑてこそあらせまほしけれ。

さべきをりは、一所に集まりゐて、物語りし、人のよみたりし歌、なにくれと語り合はせて、人の文など持て来るも、もろともに見、返り言書き、また、睦まじう来る人もあるは、清げにうちしつらひて、雨など降りて得帰らぬも、をかしうもてなし、まゐらむをりは、そのこと見入れ、思はむさまにして、出だし立てなどせばや。
よき人のおはしますありさまなどの、いとゆかしきこそ、けしからぬ心にや。


宮仕えをしている女房たちが、宿下がりした先で落ち合って、自分の主人のことを、おほめ申し上げ、宮家方や大臣家方の様子などを、お互いに話し合っているのを、その家の主人として聞くのは、まことに興味津々です。
自分の家が広く、美しくて、自分の親族はもちろん、親しく付き合っている人でも、特に宮仕えの人を、あちこちの部屋に住まわせておきたいものです。

何かの折には、一所に集まって、物語を聞かせたり、誰かの詠んだ和歌とか、何やかやと話し合って、ちゃんとした人から来た手紙を持ち寄ったのを、一緒に見て、返事を書いたり、また、女房と親しくしていて訪ねてくる男性でもあれば、室内をきれいに設えて迎え入れ、雨など降って帰れない場合でも、楽しくもてなして、女房が帰参するような時には、気を配って面倒を見、満足のいくようにして、家から出してやりたいものです。
高貴な方の日常のご様子などが、知りたくてたまらないのは、とんでもない好奇心というものでしょうか。



この章段は、枕草子全体の中でも珍しい内容ではないでしょうか。
この文章から見る限り、少納言さまはなかなかの世話好きで、私設サロンのようなものを持ちたいと考えていたのでしょうか。
いわゆる末法思想と呼ばれる厭世的な風潮は、今少し後の時代で、有力な公卿の夫人や宮家などでは、サロンのような雰囲気の所がつくられていたらしく、文芸などの発展に寄与した面もあったようです。
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