雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

粥汲みの達人 ・ 今昔物語 ( 10 - 37 )

2024-05-20 08:06:52 | 今昔物語拾い読み ・ その2

      『 粥汲みの達人 ・ 今昔物語 ( 10 - 37 ) 』


今は昔、
震旦の長安の市に、粥をたくさん煮て、市の人に食べさせる媼(オウナ)がいた。
この市に行き交う人の数は多く、日の出から日の入りまで、市の門を出入りしていたが、その市の門の前に粥をたくさん煮て準備し、百千の器を並べ置いて、粥をその器に盛って、人に食べさせて功徳を造っていた。

ところで、始めは、その粥をひしゃくで汲んで、きちんと器に入れていたが、しだいに年月を重ねるに従って、年期を積んだので、一、二丈( 3 ~ 6m ほど
)離れて、ひしゃくに粥を汲んで投げ入れたが、ほんの少しもこぼすことがなかった。
さらに年月を経ると、さらに年期が入り、四、五丈離れて、ひしゃくに粥を汲んで投げ入れたが、露ほどもこぼすことがなかったので、見物人たちは、「なるほど、何事であっても、年期を積めば、このように出来るのだなあ」と言い合った、
となむ語り伝へたるとや。

      ☆   ☆   ☆


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