雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

重税が民を飢えさせる ・ ちょっぴり『老子』 ( 82 )

2015-06-19 06:05:49 | ちょっぴり『老子』
          ちょっぴり『老子』 ( 82 )

               重税が民を飢えさせる

重税や無用な施策を戒める

「 民之飢、以其上食税之多。是以飢。民之難治、以其上之有爲、是以難治。民之軽死、以其上生生之厚。是以軽死。夫唯無以生爲貴者、是賢於貴生。 」
『老子』第七十五章の全文です。
読みは、「 民の飢えるは、其の上の税を食うの多きを以ってなり。是を以って飢える。民の治め難きは、其の上の為す有るを以ってであり、是を以って治め難い。民の死を軽んずるは、其の上の生を生とするに厚きを以ってなり。是を以って死を軽んずる。夫れ唯生を以って貴しと為すこと無き者は、是生を貴ぶより賢(マサ)る。 」
文意は、「 民が飢えて苦しむのは、其の上に立つ為政者が税を多く取り立てるからである。それで民は飢えて苦しむのである。民が治め難いのは、其の上に立つ為政者が必要以上に施策し過ぎるからである。それで治め難いのである。民が自暴自棄になって軽々しく死ぬような行動をとるのは、其の上に立つ為政者が自分の生活を豊かにすることに厚いが為である。それで民は軽々しく死ぬような行動をとるのである。そもそも為政者たる者は、自分の生命をことさらに貴いものとしない方が、自分の生命を貴しとして重税を課したりするより優っている。 」

『老子』が説いているのは、絶対的な君主が人民を治める上での心がけであって、現在の日本と一致するわけではないでしょう。
ただ、税をはじめとした国民の公費のための負担は、常に悩みの種であり、上に立つ者の中には、ごくわずかな数かもしれませんが、血税といわれるものをむさぼっている輩もいるにはいるようです。

一人一人の自覚

現在の私たちの国家は、様々な意見はあるとしても、まあ、民主的な国家だと言えるのではないでしょうか。
つまり、飢えに苦しむ税金も、その税金をむさぼる上に立つ者も、すべてを国民の意志で選定できるということなのです。
そんなことが出来るはずがない、とは思うのですが、制度上は可能だという恵まれた国に生きているということなのです。

しかし、どのような制度、どのような法律、長年にわたる教育などを積み重ねていったとしても、その結果、世界中の国々と比べて全く恥ずかしくない国家が出来上がったとしても、やはり、犯罪はあり、飢えもあり、汚職も絶滅することはないでしょう。
つまり、『老子』の時代よりはるかに恵まれている私たちだとしても、その根底にあって必要とされているものは、「一人一人の自覚」であり、自立する心構えではないでしょうか。

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