雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

正道を行く ・ ちょっぴり『老子』 ( 63 )

2015-06-19 10:58:07 | ちょっぴり『老子』
          ちょっぴり『老子』 ( 63 )

               正道を行く

国家を治める者の心得

「 以正治国、以奇用兵、以無事取天下。吾何以知其然哉。以此。天下多忌諱而民彌貧。民多利器、国家滋昏。人多伎巧、奇物滋起。法物滋彰、盗賊多有。故聖人云、我無爲而民自化、我好静而民自正、我無事而民自富、我無欲而民自朴。 」
『老子』五十七章の全文です。
読みは、「 正を以って国を治め、奇を以って兵を用い、無事を以って天下を取る。吾何を以ってその然(シカ)るを知るや。此れを以ってなり。天下に忌諱(キキ・嫌がること)多くして民いよいよい貧し。民に利器多くして、国家ますます昏し。人に技巧多くして、奇物ますます起こる。法物(ホウモツ・法令)ますます彰かにして、盗賊多く有る。故に聖人は云う、我無為にして民おのずから化し、我静を好みて民おのずから正しく、我無事にして民おのずから富み、我無欲にして民おのずから朴なり、と。 」
文意は、「国を治めるには正道を以ってし、兵を用いるには奇を以ってなし、無事(人為的なことを為さない)を以って天下は治まる。私は何を以ってそういうことを知っているのか。次のような事によってである。すなわち、天下に民が嫌がる禁令が多ければ多いほど民は貧しくなる。民が便利な機器を多く持てば、国家はいよいよ暗くなる。民が技巧を多く持てば、実生活に役立たない奇妙な物を作り出して国が乱れる。法令が明らかに整備されると、法に触れるものが多くなりかえって盗賊が多くなる。だから聖人は云っている。私が無為であると民は自ずから感化され、私が静を好むと民も自ずから正しくなり、私が無事てあれば民は自ずから富み、私が無欲であれば民は自ずから純朴になる。 」

この章全体としては、天下(国家)を治める者は『道』にのっとり自然体であれ、といった『老子』の典型的な教えが述べられているものと考えられます。
たた、本章は、混入などがあるらしく、本来の文章についてや、意味の取り方にも諸説があるようです。

正道が一番

為政者のあり方についての教えですから、私たちの日常に直接伝わってきにくい内容といえます。
個々の言葉の意味は、興味本位で読む分にはなかなか面白いのではないでしょうか。
例えば、「規制が多いと国民は貧しくなる」などは今日的ですし、「国民に利器を与えたり、技巧を持たせると国家は危うくなる」などは封建政治の根本のように思えますし、もしかすると、極めて今日的なのかもしれません。

私たちが、この章から学ぶとすれば、冒頭の「以正治国」の「国」の部分を「己」とでもすれば、味わい深い面があるように思われます。
つまり、私たちが生きていく上で、むやみな背伸びや小細工を慎んで、悠々と正道を歩いていけば、たとえ得る物は少なくとも豊かな生活を手にすることが出来るように思われるのですが・・・。
ただ、それがなかなか難しいんですよねぇ。

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