朝8時に集まって正月迎えの注連縄を作っている奈良市疋田町の座中。
一番太い大サイズはご神木と三の鳥居の二組。
長さは4メートルにする。
二番目に太い中サイズは神域入口の一の鳥居(6m)、拝殿前の(右)檜、二の鳥居西側の灯籠、神饌所および拝殿入口のお飾りなど五組。
細縄程度の小サイズは神域内灯籠、神域入口の一の鳥居、神饌所前四つの灯籠、拝殿前二つの灯籠、二体の狛犬、社務所、倉庫、境内杉、手水鉢建屋/灯籠、下馬石、三の鳥居前灯籠、大池川灯籠、旧手水鉢など、14組にもなる。
注連縄の原材料は藁結いがし易いモチワラ。
品種は早稲のアサヒモチ。
アカモチの5束もある。
餅米のアカモチは穂先が赤いからその名がついているという。
いずれも座中一番の長老の一老が耕している田の稲を刈り取って用立てをしている。
大量に持ち込まれた藁束。
作業は藁打ちから始まる。
横槌で叩いて藁を柔らかくする。
それからシビを取り払いのける。
藁打ちと並行して作業も始まった縄結い。
年齢で分けているわけでもなく、できる作業をめいめいが判断して分担しているという。
疋田町を始めて訪れたのは平成26年12月25日だった。
県内事例の簾型注連縄調査に立ち寄った。
拝殿前に門松を立てて、その中央に簾型の注連縄を飾っていた。
その注連縄は「御前飾り」。
神さんの前に架けることからそう呼んでいると話してくれたのは最長老の一老だった。
「御前飾り」など、その他、多数の注連縄は12月2日に行っていると聞いていた。
その言葉を頼りに再訪すれば顔を覚えておられた。
ベテランの人たちがベテランの技で縄を結う。
昨年に作った注連縄の見本もあったが、「ワシが見本や」と云ったのは昭和元年生まれの一老だ。
一年ぶりにお会いした一老は、そう云いながら縄結いに熱中していた。
一本の縄が出来上がれば飛び出した細かい藁を拭い取って綺麗にする。
手にしたのはシビ取りしたシビだ。
一束のシビを掴んで縄面を上から撫でるように下ろす。
利用したシビは袋に入れる。
シビで膨らんだ袋は座布団にする。
この座布団に座ればお尻が温かい。
技やコツもあるが、無駄にしない再利用までを教えてくださる一老の作業っぷり。
いつまでも元気な姿で座中の十人衆のお手本になる動きを見せてくださる。
結った細縄は七・五・三の脚を付けて、昔懐かしい五徳のような形にする。
県内でこうした注連縄はどこでもしているわけではない。
私が訪れた処でもごくわずかだ。
細い縄で作るからゴンボという呼び名もあるが、五徳のような形をしているのは、だいたいがコジメと呼んでいるような・・・。
藁束を継ぎ足す方からみて「の」の字のように・・・。
受け手の方からみれば、これもまた「の」の字だ。
逆方向に捩じるので「ヨリ」は戻らない。
そう云って受け手になった一老は指示もしながら力を込める作業もある。
「ここをこうして「の」の字に拠っていくんや。それでな、拠った綱をな、こう曲げていくんや。1回、2回、3回、4回・・これぐらいでいい。そうしたらな、藁束をここに継ぎ足すんや」と作業の仕方を二人の継ぎ手に伝える一老。
「継ぎ足すのんはな、ここを割って、ここに挿し込むんや。それから「の」の字に何度も捩って強くするんや」と、細かい部分までも指導される。
綱を捩る際には三人の呼吸合わせがいる。
「せーの、よっ」、もひとついこか、と「せーの、よっ」でもう一回。
継ぎ手からみれば太くした綱は「の」の字に撚りながら反時計廻りに交差させて相方の継ぎ手に廻す。
これの繰り返しであるが、調子がでるまで若干の時間がかかる。
どこでもそうだが、始まりはいつも思いだせずに難儀する。
何度か休憩を挟んで太い注連縄がほぼできあがった。
これは一の鳥居に架ける長さが6メートルもある注連縄だ。
藁打ち、シビ取り、縄結い、綱結いなど身体をつかう作業であっても冷める。
トンドの火で暖めて再び作業に移る。
太い綱で二本撚りした注連縄はさらに太くする。
もう一本の藁束を挿し込んで撚っていくのだ。
残りの作業を経て作った太い注連縄は鋏で刈り込んで綺麗にする。
最後に仕掛けた作業が「門前飾り」と呼んでいる簾型の注連縄作りである。
適当な長さで伐ってきた青竹は実態に合わせて切断する。
飾る場所は拝殿前の両狛犬の場である。
狛犬の土台中央辺りに印を入れる。
垂らす縄の長さも実測する。
測った青竹は境内に移動して水平に保つ。
藁は5本ずつ。
縄結いの人に手渡して巻き付けていく。
当初は5本ずつであったが、なんとなくしっくりしない。
こうして、あーして、巻いて、締めつけて、次の5本・・・となるのだが、調子づかないのだ。
こんなもんやったかなと云いながら作業をすすめるが、しっくりこない。
ちょっとおかしい。
疑問が湧く縄結い。
昨年は偶然にできたのかどうか判らないが、なんとも思わず進展していた。
今年の縄結いに違和感をもった座中は長老の一老に助けを呼んだ。
「だいたい、こんな高い処でやったら感が狂う。垂れの長さがあるので、座ってできるぐらいの位置が良い」ともいう。
「それより、本数は5本でなくて3本や」という。
5本であれば巻く距離があるので早く済む。
効率を考えて、そうされたが一老のアドバイスは3本。
隙間があった方が良いという。
「他にもいろいろあるが、おまえらがそれでやり易いというなら、そんでえぇ、経験がものをいうことだ」と語りかける。
調子を掴めばあとは順調に進んでいく縄結いである。
門前飾りの垂れの長さは30cmと決まっている。
縄結いするときはその長さを考慮しておよそ40cmにしておく。
長さを測るモノサシは木製だ。
木製といっても正味の枝である。
垂れに沿ってモノサシをあてるが、その場では先端をまだ切らない。
トンドの火にあたって座っていた長椅子の処に運ぶ。
長椅子の端に合わせてモノサシをあてる。
長さ30cmのところに鋏を入れる。
向こうの反対側もモノサシをあてて鋏を入れる。
切った両端を長椅子の辺に合わせる。
動かないように青竹で抑えて鋏でジョキジョキ。
こうして出来上がった門前飾りは、雨に当たらないように倉庫の軒下に吊るして保管しておく。
門前飾りの最中に話してくれた他所の簾型注連縄がある。
生駒市の乙田町、新興住宅地の萩の台があるところの神社に同じような注連縄があるらしい。
話しの様相から、壱分町の往馬大社のようでもあるような、ないような。
乙田町であれば金毘羅神社(※かつては中尾神社と呼ばれていた)であるかもしれない。
朝8時ころから始めた疋田の注連縄作り。
4時間かけてようやく出来上がった時間帯は丁度の正午。
拝殿の間に設けた場で慰労の食事会。
乾杯を済ませて美味しい食事をいただく。
(H27.12. 2 EOS40D撮影)
一番太い大サイズはご神木と三の鳥居の二組。
長さは4メートルにする。
二番目に太い中サイズは神域入口の一の鳥居(6m)、拝殿前の(右)檜、二の鳥居西側の灯籠、神饌所および拝殿入口のお飾りなど五組。
細縄程度の小サイズは神域内灯籠、神域入口の一の鳥居、神饌所前四つの灯籠、拝殿前二つの灯籠、二体の狛犬、社務所、倉庫、境内杉、手水鉢建屋/灯籠、下馬石、三の鳥居前灯籠、大池川灯籠、旧手水鉢など、14組にもなる。
注連縄の原材料は藁結いがし易いモチワラ。
品種は早稲のアサヒモチ。
アカモチの5束もある。
餅米のアカモチは穂先が赤いからその名がついているという。
いずれも座中一番の長老の一老が耕している田の稲を刈り取って用立てをしている。
大量に持ち込まれた藁束。
作業は藁打ちから始まる。
横槌で叩いて藁を柔らかくする。
それからシビを取り払いのける。
藁打ちと並行して作業も始まった縄結い。
年齢で分けているわけでもなく、できる作業をめいめいが判断して分担しているという。
疋田町を始めて訪れたのは平成26年12月25日だった。
県内事例の簾型注連縄調査に立ち寄った。
拝殿前に門松を立てて、その中央に簾型の注連縄を飾っていた。
その注連縄は「御前飾り」。
神さんの前に架けることからそう呼んでいると話してくれたのは最長老の一老だった。
「御前飾り」など、その他、多数の注連縄は12月2日に行っていると聞いていた。
その言葉を頼りに再訪すれば顔を覚えておられた。
ベテランの人たちがベテランの技で縄を結う。
昨年に作った注連縄の見本もあったが、「ワシが見本や」と云ったのは昭和元年生まれの一老だ。
一年ぶりにお会いした一老は、そう云いながら縄結いに熱中していた。
一本の縄が出来上がれば飛び出した細かい藁を拭い取って綺麗にする。
手にしたのはシビ取りしたシビだ。
一束のシビを掴んで縄面を上から撫でるように下ろす。
利用したシビは袋に入れる。
シビで膨らんだ袋は座布団にする。
この座布団に座ればお尻が温かい。
技やコツもあるが、無駄にしない再利用までを教えてくださる一老の作業っぷり。
いつまでも元気な姿で座中の十人衆のお手本になる動きを見せてくださる。
結った細縄は七・五・三の脚を付けて、昔懐かしい五徳のような形にする。
県内でこうした注連縄はどこでもしているわけではない。
私が訪れた処でもごくわずかだ。
細い縄で作るからゴンボという呼び名もあるが、五徳のような形をしているのは、だいたいがコジメと呼んでいるような・・・。
藁束を継ぎ足す方からみて「の」の字のように・・・。
受け手の方からみれば、これもまた「の」の字だ。
逆方向に捩じるので「ヨリ」は戻らない。
そう云って受け手になった一老は指示もしながら力を込める作業もある。
「ここをこうして「の」の字に拠っていくんや。それでな、拠った綱をな、こう曲げていくんや。1回、2回、3回、4回・・これぐらいでいい。そうしたらな、藁束をここに継ぎ足すんや」と作業の仕方を二人の継ぎ手に伝える一老。
「継ぎ足すのんはな、ここを割って、ここに挿し込むんや。それから「の」の字に何度も捩って強くするんや」と、細かい部分までも指導される。
綱を捩る際には三人の呼吸合わせがいる。
「せーの、よっ」、もひとついこか、と「せーの、よっ」でもう一回。
継ぎ手からみれば太くした綱は「の」の字に撚りながら反時計廻りに交差させて相方の継ぎ手に廻す。
これの繰り返しであるが、調子がでるまで若干の時間がかかる。
どこでもそうだが、始まりはいつも思いだせずに難儀する。
何度か休憩を挟んで太い注連縄がほぼできあがった。
これは一の鳥居に架ける長さが6メートルもある注連縄だ。
藁打ち、シビ取り、縄結い、綱結いなど身体をつかう作業であっても冷める。
トンドの火で暖めて再び作業に移る。
太い綱で二本撚りした注連縄はさらに太くする。
もう一本の藁束を挿し込んで撚っていくのだ。
残りの作業を経て作った太い注連縄は鋏で刈り込んで綺麗にする。
最後に仕掛けた作業が「門前飾り」と呼んでいる簾型の注連縄作りである。
適当な長さで伐ってきた青竹は実態に合わせて切断する。
飾る場所は拝殿前の両狛犬の場である。
狛犬の土台中央辺りに印を入れる。
垂らす縄の長さも実測する。
測った青竹は境内に移動して水平に保つ。
藁は5本ずつ。
縄結いの人に手渡して巻き付けていく。
当初は5本ずつであったが、なんとなくしっくりしない。
こうして、あーして、巻いて、締めつけて、次の5本・・・となるのだが、調子づかないのだ。
こんなもんやったかなと云いながら作業をすすめるが、しっくりこない。
ちょっとおかしい。
疑問が湧く縄結い。
昨年は偶然にできたのかどうか判らないが、なんとも思わず進展していた。
今年の縄結いに違和感をもった座中は長老の一老に助けを呼んだ。
「だいたい、こんな高い処でやったら感が狂う。垂れの長さがあるので、座ってできるぐらいの位置が良い」ともいう。
「それより、本数は5本でなくて3本や」という。
5本であれば巻く距離があるので早く済む。
効率を考えて、そうされたが一老のアドバイスは3本。
隙間があった方が良いという。
「他にもいろいろあるが、おまえらがそれでやり易いというなら、そんでえぇ、経験がものをいうことだ」と語りかける。
調子を掴めばあとは順調に進んでいく縄結いである。
門前飾りの垂れの長さは30cmと決まっている。
縄結いするときはその長さを考慮しておよそ40cmにしておく。
長さを測るモノサシは木製だ。
木製といっても正味の枝である。
垂れに沿ってモノサシをあてるが、その場では先端をまだ切らない。
トンドの火にあたって座っていた長椅子の処に運ぶ。
長椅子の端に合わせてモノサシをあてる。
長さ30cmのところに鋏を入れる。
向こうの反対側もモノサシをあてて鋏を入れる。
切った両端を長椅子の辺に合わせる。
動かないように青竹で抑えて鋏でジョキジョキ。
こうして出来上がった門前飾りは、雨に当たらないように倉庫の軒下に吊るして保管しておく。
門前飾りの最中に話してくれた他所の簾型注連縄がある。
生駒市の乙田町、新興住宅地の萩の台があるところの神社に同じような注連縄があるらしい。
話しの様相から、壱分町の往馬大社のようでもあるような、ないような。
乙田町であれば金毘羅神社(※かつては中尾神社と呼ばれていた)であるかもしれない。
朝8時ころから始めた疋田の注連縄作り。
4時間かけてようやく出来上がった時間帯は丁度の正午。
拝殿の間に設けた場で慰労の食事会。
乾杯を済ませて美味しい食事をいただく。
(H27.12. 2 EOS40D撮影)