昨年は410冊で多め。(標準は350冊くらい) 仕事のストレスが多いと読書が増えるという従来の法則どおり。最近は目が疲れて読む速度が遅い。特に、日本のミステリで筋がない、読みにくい、時間と語り手の入れ替わりなど多く面倒だ。更にラノベみたいなのも多い。翻訳は下訳そのままとか、姓と名、通名(ウイリアムをビルとか)を平気で直訳が多い。日本の作にも「人物表」はつけよう。これは人物が入れ替わるのがあらわにならないようにする(日本独特の)叙述ミステリ(禁じ手と海外では言われる)のある日本ミステリの欠点だ。
とまれ、歴史ものが増えるのは年のせいか。
伊藤之雄が堂々の2冠、今まで初めてだ。大京都と大隈重信は詳細な調査とそれに基づく見解の提示が良かった
・「大京都」の誕生 伊藤之雄 京都の都市政策、会派の意向、補償と区画整理事業、景観、道路拡幅、上下水そして受益者負担と国家負担の調整、起債など詳しいが、まとまりが悪い、法学の観点
・大隈重信 伊藤之雄 大作、明治の激動のなか、元気で、輿論の要点を把握し、粘りある精神力、交渉力と待つ力、そしてポピュリズムの遊説、新聞メディア押さえ、運、あとがきの紺碧の琵琶湖が良かった
大隈に対し、慶應の小林だ
・小林一三 鹿島茂 人口変動と小林のマーケティングと対応、100歩先を読む慧眼、若いころからの文筆と女たらし、阪急百貨店の分析も秀逸
しっとり感じられる著作で桂・修学院の背景など分かり、是非とも小堀遠州の研究を進めたいと思った。葉室麟の作品は完読したい
・孤篷のひと 葉室麟 小堀遠州の生涯、戦乱と茶の特徴、松籟の音ともに生きる茶道を考える、綺麗寂び、千利休、古田織部、伊達政宗、藤堂高虎、桂利休、修学院離宮、仙洞御所、後水尾天皇、東福門院の関係、との作庭、時代、人間、茶道の織り成す物語に引き込まれる
どう考えても変な現在の各国政府の金融緩和制作が続くマクロ経済状況と地域でいがみ合う国際関係の理解には下記2著作が理解の助けとなった
・成熟社会の経済学――長期不況をどう克服するか 小野善康 需要の停滞がデフレの原因と看破、参考になる需要着目と資金の貯めこみ経済理論
・「世界史」で読み解けば日本史がわかる 神野正史 破壊と創造は表裏一体、歴史に正義はなく、マクロ視点と時代の読み方が面白く理解
ユニコーン企業の化けの皮がはがれたなか参考になる。実は新しいテクノロジーは産業間、産業内の闘いだった
・the four GAFA スコット・ギャロウェイ 産業分析、業界での位置付け、ファイナンス・リスク対策、あるべきキャリアなど有用
・訴訟王エジソンの標的 グレアム・ムーア エジソンとウエスティングハウスの電球訴訟と交流のステラ、そしてモルガンの思惑、オペラ歌手アクネスと青年弁護士の史実を読み物に
理系として参考になる著作だ
・葉っぱはなぜこんな形なのか 林将之 葉の形、付き方などで分類するというユニークな視点、植物、菌類と昆虫との共生、鹿・熊との共生など視点が面白い、さらに人間が最も危険
・インフルエンザ・ハンター ロバート・ウェブスター ウイルスの形式と構造、伝播経路、香港の温床、スペイン風邪の分析のため凍土の遺体からの検体、遺伝子操作と危険性、予防
・進化論はいかに進化したか 更科功 進化論の進化を分析、京大の今西学説も紹介
低調な日本ミステリでも面白いのはベテラン
・ノースライト 横山秀夫 圧倒的な筆力、建築士の出世作と発注の背景の謎、美術館コンペと併行し、謎ときと家族の再構築
・沈黙のパレード 東野圭吾 自白しない2件の殺人事件の容疑者、町おこしパレードで関係者が窒素ガス殺人を仕組む、湯川の洞察と配慮、真相が入り込む
・中野のお父さんは謎を解くか 北村薫 ユーモアあふれる、逢坂剛が村山冨美男としてソフトと野球で登場、軽妙な会話と謎解き、懐かしいクオレ
・欺す衆生 月村了衛 コンゲームの様で悲しい、パートナー、部下、ヤクザのパートナーと組織、家庭、恐怖のシリアルキラー女、政界、財界を相手に生き抜いて、幸せの絶頂でぼける結末
海外ミステリもベテラン
・ザ・ボーダー ドン・ウィンズロウ 3部作の掉尾、カルテルのドンの死亡、麻薬と金、政治の新たなつながりと麻薬の薬物利用、そして、個人の反撃、途中に錯綜するエピソード、長いが楽しめる
・訣別 マイクル・コナリー 無給刑事としてボッシュは連続レイプ犯を追いながら、探偵として大金持ちの隠し子とその一族を探す、結果は元刑事逮捕とアート地区再生
今年こそ、真言密教の研究を今年こそ進める。あとは、庭園と数寄屋建築から茶道(実践含む)にも幅を広げたい。ゆったりした研究時間が欲しいな。