柱と懸造の象徴として神や仏(権現:本地垂迹説)との関係を分析し、特に岩座、湧水の近接性、そしてモデルとして三仏寺投入堂の分析がある。あわせて、歴史的な様式変遷、修行との関係など資料としても有用だ。しかし、論文のまとめのようで、フローがしっかりしていないのが惜しい。知見は:
・自然神道:山宮・里宮・田宮(景山春樹)、社殿神道:奥宮(小社)・神社・御旅所(祭)(神代雄一郎)
・心御柱(象徴としての柱):伊勢神宮、出雲大社は地中に埋められた柱→天柱(あまのみはしら)
・神社様式:平入:神明、流、妻入:大社、春日→本殿と拝殿、別棟の双堂(祇園社)、切妻、寄棟、入母屋、宝 造→庇 一面、二面、三面、四面:間面記法(奈良・平安)は正面の間数+〇面で記載、従来方式(母屋の桁行(正面)と梁間(奥行)の間数、屋根の形式、葺き方)
・柱:史実で事実か想像か、建築で建築か独立柱か
・懸造:崖造、舞台造、懸崖造→象徴的な岩座や湧水との建物一体化、拝殿、観音堂(平安末期~鎌倉:信仰時期との整合)
・岩座:厨子の土台(石山寺、長谷寺、東大寺二月堂、清水寺(土の段))、建物奥(延暦寺横川中道(閼伽井屋(あかいや)も)、円教寺、峰定寺(ぶじょうじ)、円教寺)、竹生島、信貴山
・山岳信仰:華厳経(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8F%AF%E5%8E%B3%E7%B5%8C)、不空羂索呪経( 観音 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E7%A9%BA%E7%BE%82%E7%B4%A2%E8%A6%B3%E9%9F%B3 )、行(修験者)→五体投地の発展
・投入堂( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%95%E5%85%A5%E5%A0%82 )は蔵王菩薩(権現)
・日吉大社( http://hiyoshitaisha.jp/about/ ):日枝の山(八王子)を信仰対象、金大巖(山王権現の座:奥社)八王子神社、三宮神社、比叡山延暦寺の鎮守( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8E%AE%E5%AE%88%E7%A5%9E )
・懸造の様式化:表だけ人工の崖、山岳信仰の平地への移入
・懸造の利用として梯子、階段、登楼なども整備、投入堂は岩を登る
・修験道と柱→花背の松上げ→柱松:山伏が駆け上り、火打石で火をつけ煩悩を焼くのが発祥
ためになり、面白いが建築と宗教知識の基礎のある方限定でおすすめ
梅雨が明けたら、坂本の日吉神社まで自転車で走って行こうかと思っている