デフレは92年から30年続いた( https://honkawa2.sakura.ne.jp/4722.html )。デフレというより物価安定が続いた。これは既存市場での競争過多やユニクロのようなSPA(生産販売一体化)台頭によるコモディティ化もある。流動性の罠( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%81%E5%8B%95%E6%80%A7%E3%81%AE%E7%BD%A0 )により、銀行預金よりタンス預金という「余り金」を生んだのみだった。90年代からの低金利は30年続いたが、生保の「逆ざや」や銀行の「低金利」を生み、家計への悪影響が続いた。
GDPはその間、実質ベースで445兆円から550兆円と年0.7%の成長があった。つまり収入は30年で2割位増加したことになる。( https://ecodb.net/country/JP/imf_gdp.html )しかし、ドルベースでみると近年の円安もあり伸びていない( https://www.city.osaka.lg.jp/fukushutosuishin/cmsfiles/contents/0000558/558837/04_sankoushiryou.pdf )これは、我が国の嫌いなのが「円高」(ドイツはインフレ、アメリカは恐慌とデフレ)となっており、政策的に低金利による円安誘導を図ったためだ。92年頃の130円/$が実感的なレート65円/$( https://news.yahoo.co.jp/articles/64f0a26f4935356dc7e3b1d3ea77a2f6f2fc08fe )になれば倍増する。
円レートが安いから輸出に良いというのは、安くないと売れないというのと同じである。成長期の国家が輸出依存に頼るなら分かるが成熟化した社会が狙う戦略ではない。なおかつ、94年からNx(純輸出)はマイナスが多い(実質暦年 https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2022/qe221_2/gdemenuja.html )輸出・入にしてもGDPの10%もないのは「内需主導(蛸壺)経済」としか言えない。海外生産を含むGNP(現在はGNIに変更)のNxはさらに大きくなるはずだが統計が見当たらない。なお、日本のGDP統計の区分は不可思議であり、Y=C+S+I+Nxではなく、自家保有の帰属家賃のごとき区分があるがSや明確なIはない。
さて、デフレはGDPが伸びない原因としてさんざん叩かれたが、その間は収入も多少なりとも上がっていた。実は、内向きのリスク回避のなか、新産業育成を放棄し低金利に浸る30年間だった。バブル崩壊以降、企業は「貸しはがし」の銀行頼みに嫌気がさし内部留保を積上げ、家計もリストラに備え貯蓄に励んだ( https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/pdf/2021_gai5.pdf 但し負債もある https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/pdf/2021_gai3.pdf )さらに、正社員と非正規社員の格差が拡大したのが心理的不況をさらにあおった( https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/10-2/dl/03_03.pdf )
さて、今回、コストプッシュ・インフレになり、賃金が上がる前に、生活費高騰となった。円安もあるが資源高(生産と投機による)ものであり仕方がない。インフレ対応の賃上げ・年金上げなどは遅行する。かつ企業はベース・アップよりもボーナス対応を好む(賃金の硬直性)ため先行きは不透明だ。
防衛としては外食の減少、自炊・弁当の用意などだ。つまりは、外食などの市場縮小になると考えられる。
日銀の低金利・金融緩和も出口戦略のため、利上げと金融縮小に向かわざるを得ない。銀行預金の利率とローンの利率は両方あがる。株は裁定のためまずは下る。高騰の時計や旧名車や高額マンションも同様だ。日銀は景気悪化を懸念しているが「流動性の罠」のためGDPへの影響は軽微だ(今まで、利下げと緩和でも景気が良くならなかった)
民間投資として開発もオフィスとホテル、住宅は充分なため行き詰まり、ゼネコン不況となろう。つまりは企業業績の好調が見込めず賃上げの可能性は低い。老朽化が指摘されるインフラの公的整備を財政投資としてできれば良いが、財政赤字が足かせとなろう。高所得者への課税しか手はないが岸田政権は考え直すだろうか。
しかし、Job制や機構改革、DXの拡大に伴い、ICTの人材は高給・売り手市場となろう。その反面、ワードだけではなく、パワーポイントでプレゼンやエクセルで金融計算ができない人材は売り込みに苦労すると思われる。「人材の能力と専門性の格差」拡大が起こる。
となると、自分を守るのは「手に職」の資格や専門性(経営学なども)、経歴となるだろう。政府に期待しても無駄だ。自分の身は自分で守る。一家だった企業も黒字リストラを淡々と行っている。会社より個人の時代だ、いかに若いうちに資格や留学などの学歴・経験を積むかが重要だ
政府は借金の利払いに苦しみ、財政政策もできない。財源として所得税の累進を旧来に復活や利子課税という手法もあるが岸田政権はさっさと引っ込めた。かといってこのままのじゃぶじゃぶ金融政策を続けられない。アベノミクスのまやかしも終わった