昨年は、310冊で少な目。あたりの本が少なく、途中でやめた本も多かった。出版の質の低下を感じる。そのなかで大御所は安定している。但し、東野圭吾は矢継ぎ早の出版だがいまひとつばかりだ。一部のマニア向けのメタ・ミス、時間や主体の変化を試行している作品は「箸にも棒にもかからず」で苦痛だった。
素直な調理でまっとうな料理が好きだ、本も同じだ。
マクロ経済では:
・イノベーション戦略の論理 原田勉 MOTの泰斗、分かり易く凝縮している。使える技術革新と企業運営方策
・青木昌彦の経済学入門 青木昌彦 名作で制度学の泰斗、知的興奮がある
・年収は「住むところ」で決まる エンリコ・モレッティ 地価が高くても、クラスターは人的資産で波及効果の大きい知的産業が集積、住みやすさでも大学でもない
海外ミステリでは、笑えるのと、シリアスと、シリーズものでエスピオナージも復活したのが特徴
・秘密資産 マイクル・シアーズ 元証券会社で罪を犯した主人公が、自閉症の息子と前妻、彼女との葛藤のなか、ポンジー金融の隠れ資産をマフィア、FBIと探す
・凍氷 ジェイムズ・トンプソン ベティ・ペイジ似の妻がそっくりの愛人と夫に殺される、警部の祖父の罪、妊娠した妻への思いとアメリカからの義弟・義妹、メンサのバディ、ストレスの極致
・もう年はとれない ダニエル・フリーマン 大笑いの年寄元刑事がイケイケで孫と捜査、おかしみのある妻、怪しいユダヤ・コミュニティ、次作が待たれる
・瘢痕 トマス・エンゲル 顔に火傷をおい、息子を亡くした記者が猟奇殺人事件を謎の協力者とともに解決、次々重なる怨恨や動機
・ピルグリム1 名前のない男たち テリー・ヘイズ エスピオナージは久々、楽しめるが、省略が多い。続編が楽しみだ。
独自のSF、ハードボイルド警察ものは相変わらず面白い
・機龍警察 未亡旅団 月村了衛 哀しいチェチェンの少女テロ、、ロボット機龍警察の哀しみ、許すか罰するか、恋と警察、警察内部と政治の裏切り、最後に親子と信頼がつながる
日本ミステリはほのぼのものが多い、また大作家のお笑いものとして藤田と高村は必読
・忘れ物が届きます 大崎梢 昔の謎が解き明かされ、その頃の人間関係、事情があった、とくに沙羅の実は成り代わりがあり傑作
・女系の総督 藤田宜永 女系の中で一人男、母、娘、妻と浮気、後妻、ボートの娘との幼い頃の思い出が立ち直らせる
・四人組がいた。 高村薫 高村が限界集落を舞台に妄想の限り、これは新境地だ、どんどんやってほしい
・マル合の下僕 高殿円 講師の苦悩、ネグレクトされた甥、研究と企業、コネ、なんとも生々しい大学の中
警察もので出色
・テミスの剣 中山七里 冤罪と警察の偽証、自白誘導、真犯人の発見と警察・検察・裁判官の影響、真犯人の殺人と犯人と誘導者が意外
趣味の色街と音楽では次のもの
・パリ、娼婦の街 シャン=ゼリゼ 鹿島茂 碩学の商業の発展と私娼の増加、多岐の業態、高級娼婦への道、リクルートと日本文献が笑える
・すごいジャズには理由がある 岡田暁生、フィリップ・ストレンジ クラシックとジャズの関係、ビバップ、モダン、フリーと変化、即興の変奏曲、黒人問題、麻薬、観客と楽しみかた、70年代以降は人気がない
今年はもっと楽しい本を選んでみたい。読んでいて、あわないと感じたら止めるのも判断だ