「遊びでも工作でも何でもいいのですが、考えたり試したりできるような体験を
してほしいです」「自分でやらず、自分で考えず、ママやって、が目立ちます。
考えたり推理したりして頭を使ってもらいたいです」という声をいくつか
いただきました。
そこで、教室のレッスンの中で、子どもが考えたり推理したり試したりする
体験ができるように工夫している点を紹介しますね。
その子が今、興味を持っているものを通して考えるきっかけを作っています。
新年少のAくんと新年中のBくんは、クレーンのおもちゃをいじって遊んでいました。
ただクレーンを上下に動かすだけでは、考える楽しみが味わえないので、
クレーンの先にひっかけるバケツ(紙コップ製)を作って、
Aくんが好きなビー玉転がしのおもちゃと組み合わせて遊ぶことにしました。
転がり落ちてくるビー玉を、
クレーンの先につけたバケツで受け取る遊びにふたりは夢中。
ビー玉転がしとクレーンのようにふたつの遊びを組み合わせることで、
いろいろ工夫するチャンスが生まれます。
Aくんのお母さんが、
紙コップで「中に入ったビー玉がひっくりかえる」仕掛けを作ったので、
先の転がってきたビー玉を紙コップのバケツで受ける遊びと
組み合わせることにしました。
ついでに今、教室で流行っている武士の時代の戦法の『石落とし』(もどき)として
遊ぶことに。
どの位置にひもを貼るかで、ひっくり返ったり、返らなかったり。
ビー玉がたまると、石がごろごろ。
こういった遊びは、十分遊びきった後も、さらに発展した遊びにつながりやすいです。
同じようなシステムでエレベーターを各階で止まらせたり、
コインを入れると出てくる自動販売機なども作れます。
車にひもをつけて坂道を上らせることもできます。
また、紙コップのバケツでビー玉を受け止めるのではなく、
落ちた先でできることをいろいろ考えてみるのも面白いです。
普段はなかなか遊びが長続きしないBくん。教室で見つけた
ガムマシーンの部品が気に入って、「誰にも貸したくない」と一悶着起こした後で、
キャンディー屋さんをして遊んでいました。
紙コップに穴を開けて、キャンディーの機械のコインの投入口を作ったのが
うれしくてたまらないらしく、「ぼくがj考えたんだよ」と繰り返していました。
そこで、いっしょにキャンディーマシーンを作ることにしました。
「コップに切り込みを入れる」というBくんの思いついた工作方法で
ほとんどできる作りです。
上から見ると、どうすればビー玉が下に落ちるのかわかります。
「ここをもっと切ればいいんだよ」と、切り込みを広げることを
思いついたBくんは、とても誇らしそうでした。
毎回のように書いていますが、
子どもの好み、個性、熱中する事柄を把握するのも大切です。
新年中のCくん。一番大きい数、最強の生き物、でっかい乗り物など、
比べられる量やサイズに注目する子です。
算数タイムに、「3人の子の手の中に隠した3体ずつの人形の数がいくつか」
といった問題にいきいきと取り組む姿があります。
頭の中で扱っている数をカウントしていくのが得意なようです。
男らしい強さへの憧れから、危なっかしくて乱暴な遊びやルールや物を
破壊するような遊びをしたがることもありますが、何かに熱中し始めると、
ねばり強く取り組みます。
Cくんがデュプロの線路をつないで遊んでいたので、
「線路をだんだんだんだん高くなるようにしていって、
車がシューッとジェットコースターみたいに滑りおりてくるようにしてみる?」
とたずねると、うなずきました。
Cくんのように数の増減が気になる子は、こんなふうに「だんだん高くなっていく」
といった物作りをとても好みます。他に「高い高いビルとエレベーターを作る」とか、
「大量に何かを取りつけて最強の武器を作る」といったシチュエーションも。
下の写真は、Cくん同様、数や秩序を好む子たちが熱中する作品作りです。
Cくんの場合、サイズや数の好みが強さへの憧れと結びついているので、
下のような作品作りを巨大化させたり、
強く見えるよう飾り付けていく方が好むかもしれません。
何かを破壊してしまうほどの強さを好む子には、
最後に「滑り降りてくる」とか「すばやく走る」とか「高速回転する」といった
オチも必要なようです。
今回作った「だんだん高くなっていく線路」の話題に戻りますね。
「速くダイナミックに滑りおりてほしい」という思いがあれば、
「もっと速く滑りおりるにはどうすればいいだろう?」と
大人といっしょにいろいろなことを試してみることができます。
☆ 坂を急にする。
☆ 乗り物に重りを乗せて重くする。
など、いろいろな方法が試せるかもしれません。
「速くなるのはどうしてか」「遅くなるのはどうしてか」と
理由を話しあうこともできます。
今回は、たまたま教室にあったデュプロの線路で、
「どうしたら速くすべりおりるか」を試していますが、
ビー玉転がしのおもちゃを使ってもいいし、上の写真のような
ビー玉が滑って行く仕組みを、紙を折ってブロックに乗せることでも
再現できます。
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<おまけ> ブロックでクレーンを作る方法。
『魚を与えるのではなく釣り方を教えよ」ではダメ?
で紹介した『web屋の日常』のtoksatoさんの
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食も情報も生き方も飽和状態の今の日本では、
子どもに釣り方(テクニックや公式など)を教えるだけでは、とてつもなく危険で、
魚を釣ることの楽しさや意義を教える必要がある。
「なぜ釣りをするのか」を自分で噛み砕いて把握しなければ、その熱意と哲学がなければ、
扱えないし、磨きあげることができない。
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という考え方に深く共感しています。
ですから、子どもが、「考えたり推理したり試したり」するようになるには、
テクニック的なことを教えるのではなく、考えたり推理したり試したりする
楽しさを思いっきり味わう必要があると思っています。
そのためは、自分が学んでいるひとつひとつの内容に愛着を抱き、
考えたくてたまらなくなるほど好きになるのが一番です。
「好き」な気持ちは伝染します。
だからこそ、ちまたではいろいろなものが流行するのですよね。
知識や考えることに対する「好き」も例外じゃありません。
つい最近も、小学生の子らに「大阪城めぐり」の企画と準備をさせることにしたとたん、
教室中が歴史ブームに湧いているのです。
最初に「好き」という気持ちがベースにあると、
「どうやって畳36枚分もあるような巨大な石を運んだんだろう?どうやって、
船に乗せたんだろう?」という疑問に必死で頭をひねるし、
昔の人の知恵に心底、感服します。
「考えるってすごいなぁ」「こんな途方もないことを実現しちゃうんだなぁ」
「いろいろ知るのって楽しいなぁ」「やってみて試してみるのはワクワクするなぁ」
と身体で感じ取るはずです。
新一年生のAちゃんが忍者めしというグミを教室に持ってきていました。
そこで、同じく新1年生のBちゃんといっしょに『忍者の大常識』という本にあった
非常用の携帯食を作ることにしました。
作るといっても、ごっこ遊びの延長で、ひと通り材料は用意するものの、
全部偽ものなんですが……。
そば粉の代わりに塩土を削ったもので。
小麦粉ねんどの人参。
あれこれ混ぜ合わせて、3年酒にひたす振りをして、できあがり。
(本当は、水渇丸も飢渇丸ももっと小さな粒だったはず……。)
「ごっこ」とはいえ、こんな風に本格的にごっこ遊びに興じると、
いろいろな知識をもっともっと得たいと感じるようになるし、
昔の暮らしについてさまざまな疑問が湧いてきます。
AちゃんとBちゃんは、竹筒の中に目つぶしのとうがらしを仕込んだものと、
くさりのついた武器を仕込んだものを作りたがりました。
ついでに自分の足の型を取ってぞうりを作り、
黒い覆面をかぶって、忍者になりきって遊んでいました。
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他の子らが作った石落としの仕掛けに、
石垣をつけくわえることにした新一年生のCくん。
石落としの仕掛けを見た新一年生のDくんは、
コップの中にビー玉が入ると、ビー玉の重さでひもが引っ張られる仕組みを
使ってエレベーターを上げることにしました。
でも、ひもが絡まってうまく作動しませんでした。
このように「うまくいかない時」は、「考える時」です。
ひもが絡まらないようにひと工夫。
と、次は、ビー玉がコップいっぱいに入っても
エレベーターが上がらないことがわかりました。
そこで、コップの下にもうひとつコップをつけ足して、
最初からビー玉をある程度入れておくことにしました。
すると、ビー玉コースターを通って、一定量のビー玉がコップに溜まると、
ゆっくりとエレベーターが上がりだしました。Dくん大感激。
エレベーターも石落としの仕掛けも、前回の記事で紹介した、
「スロープを滑って行くビー玉をコップで受ける」という遊びの形を変えたものです。
面白くて夢中になれることなら何でも、ちょっと形を変えて、
発展させると、考えたり推理したり試したりするきっかけになります。