虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

少し難しくなるとやりたがらない子、難しそうだと思うと最初からしない子 にどう接したら? 3

2015-08-11 06:46:59 | 子どもの個性と学習タイプ

Aちゃんのお母さんは、Aちゃんが洞察力が優れた知的好奇心の強い子であるのを

理解しつつも、じっくり考えていく持久力が足りないのではないか、と気にかけている

ようでした。

こんな場合、成長を見守るべきか、適度にプッシュすべきか迷うところですよね。

 

Aちゃんのお母さんは取りあえず参考に……とわたしの考えをたずねはするものの、

子どもとどう関わるか、自分自身でちょうどいい加減をわかっている方のようでした。

ですから、この質問をわざわざブログで取り上げなくてもよかったのですが……。

でも、Aちゃんという個別のケースについて、

どんな点に注意を向けて、どう判断したのか書くことは、

「こういう子にはこのように対応します」とひとつの一般的な正解を示すより、

別のさまざまなケースについて思いを巡らすのに役立つんじゃないかな、と

考えています。

 

この日、いっしょにレッスンしていたCちゃんは、

難しい問題になってもどんどんチャレンジする意欲的な子でした。

ただ取り組む前に推理したり分析したりすることはないようで、

とにかくやってみて失敗してから、どこがまずかったのか気づいて、

それから正しい方法で解いていました。

失敗にはとても強くて、間違えると、何とか克服しようとやる気が増すようでしたし、

失敗した後に集中して考える姿がありました。

 

それに対して先に記事にしていたAちゃんは、取り組む前に慎重によく考えていて、

何もしていない時も気になることをあれこれ考えているようでした。

そのせいで「難しそうだからやめておく」ということになるのですが、

だからといって、AちゃんとCちゃんのどちらのやり方がいいというわけではなく、

それぞれに一長一短がある個性の問題と捉えるべきなのでしょう。

 

Aちゃんの場合、「やめておく」と言っていったん問題から離れても、

時間が経つと、自分から「あの問題をやってみたい」と言うタイプでした。

そうして自分のペースで難しいものにチャレンジしていく気持ちを

後押しするのは、信頼されることと、新しい知的好奇心を刺激するひらめきを得ること

だと思います。

 

「難しそうだからやめておく」という子はAちゃんのように

考えることを苦としない子もいますが、

考えることをめんどくさがったり考えるのが苦手だったりする子もいますよね。

そうした子には、ただ成長を待って見守るだけでは

ダメかな、と思っています。Aちゃんにしたように、「やめておく」という言葉を

言葉通りに受け止めるのも、ちょっとまずいかもしれません。

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 「わが子だけど、好みや資質がわかりません、どのように伸ばせばいいのでしょう?」 3

2015-03-20 20:36:59 | 子どもの個性と学習タイプ

数日前、息子が、

「イラストはどうみても小学生向けなのに、解説の一部が本格的過ぎる……」

と笑いながら、キッズサイエンティストというホームページを紹介してくれました。

「でもカソクキッズっていうマンガは、小学生にあわせて作ってたよ。

そういうの見て、知識の世界のロマンみたいなものにワクワクする気持ちを味わうと、

勉強する意味が実感できるかも。最近の小学生は、『そーなんだ』とか読まないの?」

 

息子の「知識の世界のロマンみたいなもの」という言葉を耳にして、

「そういえば、こうした知識の世界に対する夢や憧れを抱いたり、

冒険的要素にワクワクしたりする気持ちを持っている子かどうかという部分も、

できるできないと違って、周囲には見えにくい子どもの資質だな」と感じました。

またそれまでは「やってみたい」「できるようになりたい」が動機になっていた子が、

未知の世界への憧れが動機になる時期も、

親が「何だか、わが子の興味がわかりにくくなったな」と感じる原因の

ひとつとなることがあります。

 

もうすぐ年長になるDくん。お母さんの話では、「何となく中途半端な時期のようで、

これまでより何に興味があるのかわかりにくくなった」とのこと。

少し前までのDくんは、しかけのある工作を習いたがったり、

頭脳パズルのようなものを面白がったりと

外から見てわかりやすいものに関心を寄せる子でした。

でも最近は、遊びを決めかねてうろうろする姿が増えていました。

Dくんのように、それまでさまざまなことに熱中していた子が

年長くらいになって、急に落ち着きがなくなって、

親にとって、「子どもの好みや資質がわかりにくくなった」と感じることは

よくあるようです。

 

それまでのように身体を使って遊びこむだけでは、満足が得られなくなり、

知恵を絞って問題を乗り越えたることに達成感を味わったり、

先に書いた『知識の世界のロマン』のようなものに

ワクワクを感じたりし始める時期でもあるからかもしれません。

 

ブロックの板ごとに、ジャングル、マグマの火が噴きでているところ、海や川などを

作っていたDくん。

そこまで作って、何を作ろうかとぼんやり考え込んでいました。

「すごく素敵にできているね。洞窟を作るのも面白いかもしれないよ。

洞窟の中に飾る珍しい石を出してあげようか?洞窟に行った子のおみやげの

本物の鉱物もあるよ」と言うと、Dくんの顔がパァーッと輝きました。

 

それからこれまでにないほど熱心に洞窟作りを始めました。

 

 

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少し前に教室の子らと大阪駅に化石を探しに行ったEちゃん。

この日は弟の3歳のFくんの初めてのレッスンだったのですが、

教室に着くなり、

「図書館で借りてきた!」とニコニコ笑顔で本を何冊か見せてくれました。

 

 

大人向けの本なのですが、Fくんは知っている化石の写真が見せたくて

たまらない様子で、お目当てのページを開いて、一生懸命説明してくれました。

Eちゃんも、この化石探しの本や教室で見たのと同じ『お城めぐりの本』を

図書館で見つけたのがうれしくてたまらない様子で、小躍りしながら解説してくれました。

 


 「わが子だけど、好みや資質がわかりません、どのように伸ばせばいいのでしょう?」 2

2015-03-19 22:44:44 | 子どもの個性と学習タイプ

 

Aくん同様、戦隊物好きのBくん。

「よその子の好みや性質はわかるけれど、わが子だとよくわかりません。

わたし(母)が誘うと嫌がるので、どう伸ばしてあげたらいいか難しい」とのこと。

Bくんと会うのはこれで2度目。

前回、会ったのは『ピッケのつくるえほんのワークショップ』でした。

 

Bくんはエネルギッシュで頭の回転の速い目ざといタイプ。

お母さんが、「よその子ならわかるけどわが子だとわからない」とおっしゃったのは、

Bくんが『アイデア重視』の子で、誰よりも先に自分のアンテナに引っかかった

面白さを実行することを大事にしているからかな、と思いました。

 

というのも、手で何か生み出すことや課題を達成することなど

大人の目にわかりやすいものと子どもが重視するものが重なると

とてもわかりやすいけれど、

『アイデア』というその独創的な価値に気づく人がいないとわからないものに

価値を置く子の好みや資質はわかりにくいからです。

Bくんの場合、自分の中からアイデアを出すというより、

外にあるアイデアの「面白さに気づく力」そのものが独創的で、

そこに目標の焦点を当てるのが好きなようです。

 

ピッケのえほんのワークショップで、初めて絵本を作っていた時のこと。

まだ一冊目の絵本の数ページに絵をつけたところで

保存した絵本が最初の画面の本だなに並ぶことに気づいたBくん。

「先生、見に来て!ぼくのを見に来て!」と呼ぶBくんに近づくと、

本だなの画面をさして、「本を作ったら、こういうふうになるんでしょ。

もっと作って、3並べたい」と言いました。

そして、タイトルや表紙の絵のところをさして、

「こういう風に、本の名前書いて、絵も書いて、3こおきたい」と続けました。

 

Bくんは本の内容そのものには無頓着なようで、

1ページ目の絵を作るとすぐに表紙作りに取り組み、

目標に掲げた通りに3冊の絵本が本だなに並ぶまで一気に仕事を仕上げました。

 

今回、教室に来たBくんは、ピッケのワークショップの時と同じように

落ち着きなく次々と新しいことに興味を移す一面があったものの、

自分で作ったお化けのライトを天井に映すために

部屋を暗く演出するアイデアが心に響くと、

「もう1つ作りたい。もう1つ作ってもいい?」と積極的に工作に取り組んでいました。

 

 

 

 


 「わが子だけど、好みや資質がわかりません、どのように伸ばせばいいのでしょう?」 1

2015-03-19 08:18:57 | 子どもの個性と学習タイプ

昨日から春休みのレッスンです。

初めて教室に来る子ばかり、午前と午後に4名ずつ来ました。

午後の部の終了時に、それぞれの子の資質や好みに応じた伸ばし方について

レッスン中、気づいたことをお伝えしていたら、

お母さん方が口ぐちに、「わが子だけど、どんな資質を持っているのか、

どのように伸ばせばいいのかわかりません」という声が上がりました。

 

「うちの子の好きなものといったら、戦隊物くらいしか……思いつきません」

4歳のAくんのお母さんがそうおっしゃるのを聞いて、

わたしがAくんといっしょに過ごしながら感じた『Aくんがどのようなものを好むか』と

お母さんが捉えている「Aくんの好み」との間にはいくらか開きがあるのを感じました。

 

 

初めて教室に入ったAくんが最初に興味を示したのは写真のような

ミニカーを出動させるボタンがついた消防用の車です。

この車、確かに戦隊物好きの男の子の心をそそる作りです。

でも、ひとくくりに「戦隊物好きの男の子」といっても、

戦隊物のどういう部分に惹かれているのかは、子どもによってそれぞれで、

こうしたおもちゃで遊ぶ姿を見ていても、それぞれの子の「ココ一番!」は

ずいぶん違うものです。

例えば、戦隊物の戦闘や爆破シーンなど、

刺激的でパワフルな動きに惹かれる子は、車を入れた箱が飛び出すボタンの操作を

好むし、車を入れてみて、いかに速く、遠くまで車を飛び出させることができるかに

夢中になります。

自分自身も、戦隊になりきって、ポーズを取りたがります。

 

同じようにこの飛び出すボタンに惹かれる子でも、

「どうやって飛び出すのか」というからくりに興味を持つ子らは、

激しくボタンを扱うのではなく、何度も押したり戻したり、細部を観察したりして、

どうなっているのか調べようとします。

また、「そんなふうに車が飛び出す仕掛け作ってみる?」と尋ねると、

即座に飛びついてきます。

そうした子は、戦隊物にでてくるメカの構造やデザインに一番興味があるようです。

 

Aくんの場合、戦隊物自体にそれほど興味はないようで、

車の運転スペースを開けて、それが小さかったのが気になるのでしょうが、

「どの人形なら座れそうか(入りそうか)」ということを気にしていました。

 

また、車が飛び出すボックス部分よりも、飛び出した後にできる空洞の部分に

「車が通ることができるのか」に興味を持ち、

下の写真のように、空洞部分に列車を通らせることができた時、何よりも喜びました。

 

 

 

次にAくんが興味を持ったのは、中に入れた物が消える手品の箱です。

この手品は、二重構造になっていて、爪で箱の一部を引っかけて

ていねいに引き上げなくてはできません。

けっこう扱いが難しいので、コマ回しや剣玉のたぐいと同様、何度も練習して

ようやくできるようになるものです。

Aくんはそれまで次々目移りして、ちょっと触っては新しいおもちゃに

手を出していたのですが、この手品の「うまくいかないけど、がんばって練習したら

できそう」にぶつかったとたん、根気よく繰り返しチャレンジし続けて、

上手に手品を演じることができるようになっていました。

 

この手品も、消防車両同様、空洞部分が突然現れることが

Aくんの興味を強く引きつけるようでした。

 

「Aくんの好み」について思いをめぐらす時、「戦隊物が好き」のように

あまりにもざっくりと捉えるのではなく、「戦隊物好きは戦隊物好きでも、

そのどのようなところにこの子は惹かれているのだろう」という目で眺めると、

いろいろな気づきを得られます。

Aくんのお母さんは、「次から次へとすぐに飽きて新しいものに手をだします」と

心配していらっしゃいましたが、そうしたAくんの性質のもうひとつの一面、

「これができるようになりたい、という目標が定まったら、

少し難易度が高いものでも、できるまでチャレンジし続ける」という資質を

見逃しているのを残念に感じました。

 

春休みレッスンの午後の部に集まった4歳の男の子たちは、

どの子も手品や科学実験の「あれっ?不思議!」と好奇心がそそられ、

他の人たちをびっくりさせるものが面白くてたまらないようだったので、

工作では、声の振動で玉が踊りだしたり、水で絵が変化したり、

お化けを壁に映しだしたり、紙飛行機を高速で飛ばしたりする道具を作りました。

算数は、大きい数になるにつれて、どの子も熱があがってきて、

4000といった大きな数を見る時の盛り上がり様から、

「サプライズ好きさんたち」

「大きくて強くてエネルギッシュなものに惹かれる子たち」の個性を感じました。

 

 


考える方法 と 行き詰った時の解決法 6

2015-03-17 15:45:34 | 子どもの個性と学習タイプ

工作大好きの3人組、

もうすぐ小1になるAくん、もうすぐ年長になるBくん、Cくんのレッスンから。

 

剣の柄(にぎるところ)を作っていたBくん。うっかり指で穴を開けてしまった様子。

すかさず明るい声で、「先生ー、この穴の後ろから金色の紙を貼ったら、

丸い穴から金色の丸が見えるようになるよね」と言いました。

 

Bくんはこうした「ちょっとしたワザ」や「素材の性質」にとても敏感な子です。

わたしがそうしたことを教える時に言った言葉もよく覚えていて、

機会がある毎に、ウンチクも披露してくれます。

 

Bくんの考える方法は、新しい知識を取り入れる時に、

「なぜそうなるのか」という理由に強い関心を寄せて、次に同じことをする時も、

そうなる理由を言葉にして目で確認しながら行うことです。

素材を扱う時も、「どうしてその材料を使うといいのか」「どんな性質があるから

それを使うのか」を言葉にしながら利用します。

 

上の写真の右下に写っているのは、おもちゃの弓の端っこです。

これに色付きのテープを巻いて武士の弓矢にすることになっていました。

が、端っこの部分にはゴムがついているので、うまくテープが貼れません。

Bくんが困っていたので、テープがひもにぶつかる部分に切り込みを入れてみせ、

「ほら、ずぼんみたいに、ひもにぶつかるところから、右、左って分かれるように

切ったら、ひもがあってもきれいに貼れるでしょう?」と言いました。

 

すると、Bくんの目が見る間にまん丸になって、

「そうか!すごい!」と言ったかと思うと、紙の棒をずぼんで挟んで、

「こんなふうに、邪魔なものがあっても、ずぼんみたいにあっちとこっちにいくように

なってたら、かぶさらないってことだよね」と言いました。

 

 

草食恐竜を作っていたBくん。

首が左右に動くように「ねじを使いたい」と言いました。

以前、ねじを使って可動部分を作ったことを覚えていたのです。

ねじの入った箱からちょうどいいサイズのものを選んでから、

首と顔の部分を作りなおしていました。

 

Bくんが描いた「どんぐりむら」。

 

 

算数の学習の際も、Bくんは、

「こういう場合、まずわかるものから解いていけばいい」とか、

「4つあわせて10になる数だけど、1と3しかないから、

1と3しかないってことは……」など、解く時に技や条件をどう扱うかに強い関心を

寄せていました。

家に帰ってもやってみたかったようで、教具として使っていた手書きのサイコロの面の

カードをもらって帰りました。

 

一方、Aくんは自分の内面を探るようにグーッと考えていて、不意に、お腹の底から、

「わかった!」とつぶやく子。

物作りをしている時は、まるで小さな職人のようなAくん。

それまで何度も何度もトライする中で培った体感を頼りに、どんなに時間がかかっても

ひたむきに作業を続けます。

 

戦国武将が大好きなAくん。左は伊達政宗の家紋。右は伊達政宗と他の武士たち。

 

伊達家の家紋をボンドでなぞって、金色の砂を振りかけました。

 

伊達家の旗が完成。

 

 

 

何を作っているのかと思いきや、時代劇で見た切腹する時の刀なのだそう。

刀が鞘にきれいに収まったのには驚きました。

これまでAくんは興味を持ったものを何度も何度も改良を加えながら作り続けてきました。

「だんじり」「刀」「恐竜」「図鑑」など作ったものは数えきれません。

あっという間に鞘に収まる刀を作ってしまう姿には脱帽しました。

 

Aくんの考える方法は、真剣に観察して、作ってみて、作ったものともとになったものを

比べて改善点を見つけ出して、また作る……というエンドレスな繰り返しの中で、

身体を通して気づいた「わかった」を使うことです。

 

算数の学習でも、ゆっくり、ねばり強く、「わかった」を溜めていきます。

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Cくんの作った恐竜とジャンプ台。

 

Cくんが描いたルパンと忍者。

剣が大好きなCくん。外国の刀や日本刀を毎日のように作って、

この頃の自慢は、

「108本の剣を作ったんだよ」とお家の衣装箱に溜めているという剣の数。

Cくんは速度や長さなど測定できるものについて話すのが好きです。

物を作る時は、使う材料は段ボールと割り箸、牛乳パックといった

同じものを使いたがるのですが、サイズや形について詳細を言葉にしながら

作っています。作った本数が増えていくのがうれしかったのか、

ひたすら剣ばかり作り続ける時期を経て、電化製品やその都度、

興味を引いたものなど、さまざまな物を作り始めました。

 

Cくんの考える方法は、サイズや形を正確に捉えて、どのような手順で実行するのか

事前に言葉でシュミレーションしてみることです。

算数の学習では、何を手掛かりにすればいいのか、

先に把握することがとても大切なようです。

 

 


「興味を広げる環境を整えてきたのに知的好奇心が薄い気がします」 4

2015-02-27 11:37:38 | 子どもの個性と学習タイプ

「興味を広げる環境を整えてきたのに知的好奇心が薄い気がします」 1

「興味を広げる環境を整えてきたのに知的好奇心が薄い気がします」 2

「興味を広げる環境を整えてきたのに知的好奇心が薄い気がします」 3 の続きです。

 

子どもが夢中になっていることについて、

知的好奇心をくすぐるような話題や疑問を投げかけても、

「もう、いいの」と会話を終わらせたり、

楽しそうにやっていたことをやめてしまう子がいます。

Bちゃんも、自分のしていることを言葉で捉えなおすのを

極力避けたがる癖があります。

Bちゃんは自己肯定感が高くて知力がしっかりしている子ですから、

そういう個性として受けとめて、成長を待つのもいいのでしょう。

 

でも、これまで以上にBちゃんといっしょにじっくりと考える面白さを味わい、

会話を深めたいとすれば、これまでやってきたことの内容はそのままで、

それぞれのバランスを少し変えるといいのではないでしょうか。

 

Bちゃんのお母さんは、先のことを慎重にていねいに検討し、

最終的に無理のない適切な判断をくだす方です。

それ自体はすばらしいことで、これまでもよい選択をしてきたからこそ

Bちゃんがのびのびと子どもらしく成長しているわけです。

でも、今までBちゃんのことで、100パーセントそうして決めてきたところを

90パーセントか85パーセントくらいに控えて、

無計画でいい加減な部分を少しだけ残しておくと、

Bちゃんが思わぬ困りごとにぶつかったりジレンマに陥ったりする機会が

ほどほどにあっていいのかもしれません。

悩んでいる子を見守るのはつらいですが、いっしょに問題を乗り越えることで、

問題解決能力が鍛えられるし、メタ認知力も育ってくるはずです。

自分の経験していることに対するアンテナの張り方や責任感が違ってきます。

 

また、お母さんが、「Bちゃんにどんなことをしてあげようかな」

「何を教えようかな」「何を与えようかな」と考える比率と、

「Bちゃんは何を言おうとしていたのかな」

「夢中になっていたのは、何が心に響いているからかな」

「Bちゃんが自分から会話を深めていこうとする内容はどんなものかな」

ということに思いを巡らせる比率を、これまで9対1くらいだったのを、

5対5とか4対6くらいに変えてみるのもいいのではないでしょうか。

 

Bちゃんの生活の中で、Bちゃんが選べんだり決めたり、

それによって失敗したりする比率を増やしたり、

Bちゃんの考えに耳を傾けたり、Bちゃんに相談を持ちかけたり、

Bちゃんの表現活動に本作りやお話のひとこと感想や新聞作りのように

言葉を使うもの(無理に文字を書かさなくても、子どもの言葉を聞いて

大人が書いてあげるのもいいと思います)を加えていくのも大事なのかも、

と感じました。

虹色教室でも、そうした活動の幅を広げていってあげたいと考えています。 


やる気と本気のスイッチが入るもと それぞれ  1

2015-02-23 14:09:59 | 子どもの個性と学習タイプ

自分の書いた本が虹色教室内でベストセラーになっていると聞いて、

物書き魂に火がついた小3のAちゃん。

前回のレッスンでは、ベストセラー書の続編を書くために、

帰り支度をする数分の間も惜しんで書いていました。

1冊目よりも長い話にしたかったらしく、家に持ち帰って続きを書くことにし、

今回、仕上げて持ってきてくれました。

と、さっそく同じグループの子らの間で回し読みが始まりました。

それを見て、俄然やる気が出たAちゃん。3冊目を書く決意を固めて、

本にする紙の束を持って帰りました。

 

教室では本の他にマンガ雑誌も作っています。

なめこ図鑑 と 虹色教室の月刊マンガ雑誌

マンガ雑誌の編集会議に寄せられたマンガ原稿

 

カセット付き絵本と音読教材も作っていますよ。

旅のスクラップブックと音読教材 1

旅のスクラップブックと音読教材 2

 

やる気と本気のスイッチが入るもとは、人それぞれですよね。

子どもも同じです。

何がモチベーションになるか、ひとりひとりの子の違いは見ていて面白いです。

将来もきっと、そうしたやる気と意欲のもとが、

仕事や日々の暮らしをいきいきさせてくれるのでしょうね。

 

わたしにしても、今、心から楽しいと思えるものはどれも、

子どもの頃にワクワクした体験と根っこのモチベーションはいっしょですし、

うちの子らにしても、赤ちゃん時代も二十歳を過ぎた今も

やる気を本気スイッチが入るもとは、変わってないな~と感じます。

 

百人一首をした時のこと。

勝ち負けのあるゲームに参加をするのをしぶるAちゃんは、札を読む役を買ってでました。

98枚の札(2枚なくなっています)を全て読み切ったAちゃん。

「負けるんじゃないか」「上手くできないんじゃないか」と思うと

すること自体にしりごみしがちなAちゃんですが、実際、実力があるし、

やり始めたことを根気よく続けていくエネルギーは誰にも負けないのです。

長距離走を完走しきったような興奮の後で、

算数の学習では、他の子らが手を着けなかった問題を力技で解き切りました。

 

 


子どもの個性は本当に面白い♪

2015-02-15 18:20:43 | 子どもの個性と学習タイプ

小2のAちゃんがおひな様を作ってきてくれました。教室に通い出した未就園児の頃から

エネルギッシュに物作りを続けているので、どんな大掛かりなものも全て自分の力で作ってしまう

実力派です。

ひとりひとりのおひな様の表情が味がすてきです。ぼんぼりがすごくきれいだったのに

写真に撮るのをうっかりして残念です。

↑ これはお姉ちゃんにならって、何でもひとりで作ってしまう妹のBちゃんの

おひな様。これもいい顔していますね。

Aちゃんが年長の時に作ってきてくれたおひな様の画像があったので

ついでに載せておくことにします。

なつかしいおひなまつりのごちそう作り 「何通りある?」の問題

の記事にありました。

こんな風にひとりの子が異なる年代で作った作品を並べると、時を経ても

変わっていないその子の個性が垣間見えて面白いです。

今回のレッスン中、Aちゃんがこんな小さなティーポットを作っていました。

そういえば、2年前のAちゃんはティーポットを作っていました。

全て紙で作られたティーポット。

今回、Aちゃんが教室で作っていた家具。

Aちゃんが使う素材は、紙が主で、

どんな形も折ったり貼り合わせたりすることで作ってしまいます。

あまり試行錯誤することなく的確な形を作りだすので、

紙を切る段階で、どのような立体ができあがるのか仕上がりをイメージできている

ようです。

こうした扱う素材や物の作り方は子どもによって

ずいぶん異なります。

同じ親に育てられている姉妹でも、Aちゃんの妹のBちゃんの場合、

主に使いたがるのは、プラスチックや布などで、

動きのあるからくりについてのイメージは仕上げのイメージを

しっかり持って作っているけれど、形は布を巻きつけるといった

大胆で実験的な作り方をします。お姉ちゃんの作品を模倣することも

多いのに、いざ、自分の作品を作るとなると、

Bちゃん独特の世界が表現されるところが面白いです。

これは、Aちゃんと同じグループの小2のCちゃんが作ったテーブル。

ヨーロッパ風のドールハウスの写真に載っていたテーブルが作りたくて

細部にまでこだわって作った作品です。

Cちゃんの物作りは、まるで職人さんのようです。

「こんなものが作りたい」という思いがすごく強くて、

どんなに時間がかかっても、何回作り直すことになっても、

イメージ通りのものを作ろうと奮闘します。

 

Cちゃんが数ヶ月前に凝っていた靴作りとからくりハウス作りの様子は、

うまくいかない時も、投げ出さずに何度も何度も再挑戦する力

の記事で紹介しています。

(この記事のBちゃんとは、今回の記事のAちゃんのことです)

 

写真は同じグループのDちゃんのビー玉迷路。

Dちゃんは語彙が豊富な国語が得意な子です。以前は他の子らが工作を

する時に別の活動をしたがることが多かったのですが、最近、物作りに目覚めて

もりもり作っています。うまくいかない時、思わぬ素材を使って解決するところが

すごいです。

やわらかく変形できるアルミ箔を使ったり、ビー玉を滑らせる通路を細いストローをいかだ状に貼り合わせて

作ったりしていました。

この頃、算数の力も伸びています。

いつも、「こんなものが作りたい」という壮大なイメージを抱いているEちゃん。

工作の好きさと熱心にやり遂げる根気と意欲、考える能力の高さでは、

教室の中でも一、二を争う小2の女の子です。

「ボタンを押すと音が出るようにしたい」と奮闘していました。

Eちゃんの「こうしたい」を実現するのに、今回はいらなくなった音の出るグッズから

一部を取りだして利用することになりましたが、ボタンを押そうとすると、

貼っていたテープがはがれていくので土台を作って補強したり、

穴を開ける位置を調べるのに、わざと落ちやすいインクを穴と合致させたい部分につけて

箱に押しつけて調べたり、接続させるパーツを手作りしたりと、かなり苦労しました。

写真は、算数学習の一コマ。

『旅人算』を学習中です。

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ちえ子さんは 1びょう間に 2m、ひろ子さんは 1びょう間に

3m 歩きます。

①2人は 10m はなれた ところに 立っています。

これから 2人は 同時に はんたいの むきに すすみます。

8びょう後に 2人は 何m はなれていますか。

②ひろこさんは ちえ子さんより 10m 前に 立っています。

2人は 同時に 同じ むきに 歩きます。

6びょう後に 2人は 何m はなれていますか。

(最レベ2年生 130ページ)

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4人とも物作りになれているので、算数で線分図を描いて

考えるのも得意です。全員、きちんと解いていました。

AちゃんとEちゃんが、2mずつ、3mずつの矢印を一部だjけ書いて、

規則を見つけ出して、途中からは計算式で解いていました。

自分たちで、工夫する方法を考えたそうです。

 

そこで、みんなに、「今はすべてていねいに書いていくのもいいけれど、

AちゃんとEちゃんみたいに、こういうルールで増えているな減っているな、と気づいたら、

全部全部書かずに、そこからは計算して解くのは大事よ」と褒めて、

ふたりに、どうやって工夫したのかみんなに説明してもらいました。

それから、「でもね、よく見て考えてルールに気づいてから、全部書かずに省略するのは

いいけれど、前にこんなこと習ったなと思って、よく考えないで省略するのはダメよ。

前に、そうやって省略して大失敗をしてしまった子がいるのよ」と

注意をうながすと、全員、「どんな失敗?どんなの?」と興味しんしんでした。

 

そこで、こんな勝手省略、大失敗の例を見せました。

「あっ!ゼロが並んでる。知ってる、知ってる、こういう時は、9、10って

書くんだった……と左のような計算をしてしまったの。」

「えー!!どうして?」「なんで、こんな途中のところに10を書いちゃったの?」と

子どもたちはびっくり。

「それはね、1000-260みたいに

1の位がゼロのの数を引く計算を教わった時に、隣の大きな位から10を借りてきて、もう一方の隣の小さい位に1を貸すから

9になるんだなって、ちゃんと意味をわかった上で9や10を書き込むんじゃなくて、

ゼロがたくさんある数から引き算する時は、9書いて、10書いたらいいんだななんて

丸暗記をしてしまったんじゃないかしら?」

そう説明すると、「わかったわかった。1の位がゼロじゃない時も

1の位がゼロの時と同じやり方で考えないでしちゃったのね」とAちゃんが

うなずきながら言いました。

他の子らも口ぐちに、「省略する時は、ちゃんと意味がわかってる時じゃないと

ダメなんだね」と言いあっていました。

 


子どもとの間で生じる『力のゲーム』から抜けるには? 5

2015-02-03 14:59:36 | 子どもの個性と学習タイプ

これまであれこれ書いてきて、結局のところ、今度Aくんが、

「本を読んで欲しくない」だの「やっぱり読んで欲しい」だの

「やっぱり読まないで」だの「読まないのは嫌」だの、

どっちつかずの態度でぐずる時にどうすればいいのかと問われたら、

わたしの答えは、「今まで通りでいいんじゃないかな」という中途半端なものです。

 

毎日、密に付き合っていく子どもとの関係で、一部分だけ自分のやり方を矯正しても、

正しい対応をしようと考え過ぎても、あまりいいことはないでしょうから。

それなら、Aくんとお母さんの関係についてあれやこれやと思いを巡らしてきたのは

何だったのかというと、そうして十二分にわかった上で、

「こんな時はどうするか」なんて構えないで、自然に自分らしく振舞うと

いいのではないでしょうか。

 

それまでのように、それがお互いの意地の張り合いに発展したとしても、

きっとそれは、Aくんのお母さんが「わたしは、いつものパターンが崩れると、

AかBかの二者選択の急いで答えを出さなければと焦ってしまうところがある。

想像力を使って解決しなくてはならないことが苦手だからな」と意識した上で、

「今日は本を読まなくてもいいの?それなら、お皿を洗ってくるわね」と告げた後の

揉め方とは質が違ってくるはずです。

 

また、Aくんの「Aは嫌。Bも嫌」といった態度に遭遇した場合も、

「この子はどちらの選択肢も否定する時があるけれど、

自分自身の中からAでもBでもない新しい選択肢を作り出すことも多い」と

わかった上でぶつかりあうのは、それまでのエスカレートの仕方とは

異なるにちがいありません。

 

鷲田清一先生が、「賢くある」ということという文章の中で、

<「賢い」というのはつまり「簡単な思考法に逃げない」ということだ。>

と書いておられました。

めまぐるしく変化する現代社会で、多角的にさまざまな立場で長期のスパンを

見据えて、考えなくてはならないような事柄については、

ひとつの正解を求めるなど逃げに過ぎないのです。

子育てにしても、鷲田先生の言葉を借りると、

「あいまいなものにあいまいなまま正確に対応する」べきもの

「正解などそもそも存在しないところで最善の方法で対処する、

という思考法や洞察力」が求められるものなのでしょう。

 

子育ての答えは、子育て本やネットのQ&Aのコーナーにあるのではなく、

親が正解がないことから逃げないで、その時、その時の最善を

探りながら、子どもと歩み続けること、添い続けること、向き合い続けることの中に

あるのだと思います。

 

最初の問いの、

子どもとの間で生じる『力のゲーム』から抜ける方法は、

かつて自分と父親との間で繰り返されてきた、相手をコントロールしようとする

争いを、親としての視点から受け止めなおしてみたり、

現在の子どもと自分の状況や争いの火種となっている物事について、

子どもの目線に下りて眺め直してみたりすると、

心にしっくりくるようなその時々の最善が見つかるかもしれません。

 

 

 


子どもの本質的な美点に気づいて褒めると、子どもが変わる

2015-02-03 14:02:15 | 子どもの個性と学習タイプ

過去記事です。

 

シアトルの工作のワークショップでの出来事。

 

もうすぐ5歳という★くんは、内向型の控え目で繊細な性質の男の子です。

集団の場でも、最初は何もせずにずっと観察していて、

誰が何をどのようにやっているのかを把握できるまで仲間に入ろうとはしません。

 

外向型でテキパキした性質の親御さんは、

★くんの個性を認めて愛情を込めて育てていました。

でも、「アメリカでは自分から前へ前へ出ていって自己主張しなければ、

成功はありえない。評価もしてもらえない」とおっしゃって、

どうすれば、もっと積極的に振舞えるようになるのかという相談をいただきました。

 

わたしは内向型の子なら、まず内向型の子だからこその長所にたくさん気づく前に

「外向的に振舞うようになるにはどうすればいいのか」と考えることは、

その子の本質的なものを否定することにもつながると感じました。

 

そこで、「内向型の子は物事をていねいに観察していたり、内省したり、

じっくり考えることが得意だったりするので、この子はこういう気質の子として、

具体的な良い面に光を当てていく方がいいのでは?」といった話をしました。

工作のワークショップでの★くんの工作作品は「がちゃぽん」でした。

わたしが見せたお手本から、基本のしかけのアイデアを取り入れながらも

別の素材で別の作り方で工夫して作ってありました。

「がちゃぽん」の投入口が見つからなかったので、

「箱の上の部分にカプセルを入れるための穴をあけたら?」と

★くんにたずねました。

すると★くんは、回転部分を引き出しのように引っ張って、

「こうやって入れるんだよ」と言いました。

おとなしいようでも、他人の言うままにならずに、きちんと主張するところは

しているのです。

その姿から、「この子はおとなしくて控えめだけれど、自分の意志や考えが

はっきりしている子なんだな」と感じていました。

親御さんたちとの談話中、(滞在先の)Aさんのご主人が園庭で子どもたちを

見てくれていました。あとから、Aさんのご主人からこんな話をうかがいました。

 

遊んでいるうちに、数名の男の子たちが叩き合いをはじめたそうです。

けんかを止めに入ると、

「あの子が最初に手をだした」「あの子が最初に叩いた」「あの子が……」

とそれぞれの子がてんでバラバラのことを口々に言ったのだとか。

 

どの子も好き勝手なでたらめを言うので、困ったご主人は、

けんかの一部始終をジャングルジムの上からずっと眺めていた★くんを呼んで、

本当はどんなことがあったのかたずねました。

 

すると★くんは、「最初に○○がこんなことをして、次に○○がこうやりかえして、

その後に○○がこういうことをした」と細かいところまでていねいに説明したそうです。

 

するとそれまで、適当なことばかり言っていた子らが、

「ぜーんぶ、★くんの言うとおりだった!」と意見がビシッと一致したそうなのです。

 

「最初から最後までちゃんと見ているな~」と感心すると、

★くんは急に自信に満ちた態度で、ほかの子らに混じって遊びだしたそうです。

 

★くんは、内向的で慎重で控え目な本来の性質のままで褒められたからこそ、

自信に満ちた態度で遊び始めたのだと思いました。

★くんは来たときよりもいきいきとした明るい表情で帰っていきました。

 

練習してできるようになったこととは別に

「これはわたし」という部分について褒められると本当にうれしいものです。

それは大人だって同じです。

 

わたしもシアトルに来て、思いがけないところで詩を褒めていただくことがあって、

他のどんなことを褒めていただいたときよりうれしい気持ちを味わいました。

 

日々の雑事に追われて自分が詩を書くことがすきだったことすら忘れかけていたのに、

そうして自分の詩について感想をいただくと、

心の底から元気や自信が湧いてくる思いがしたのです。