虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

発達に気がかりなところがある子 と カードゲーム

2011-08-22 13:37:10 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子


学習面でのつまずきがある子と
ドイツ製のカードゲームやトランプやウノなどで遊ぶと
頭の回転が速くなり、手で物を操作する力がついてきて、
学力がアップしていくことが多々あります。

10の合成をマスターするのに1年以上かかっていた
知的なゆっくりさんの女の子も「ウノ」をマスターすることによって
計算する力が確実についてきたこともあります。



写真は『Pippo』です。
赤、青、黄色、紫、緑の
ブタ、馬、猫、犬、牛のカードで遊びます。

「赤、青、緑、紫ではない色のブタ、猫、犬、牛ではない
動物はどれか?」を当てるゲームです。

カードゲームの後で、子どもが勝ったときに、
写真のように表にして比べると喜びます。
(子どもが負けたときに表にすると、表を嫌がるようになるかもしれません)




割り算レベルアップ

2011-08-22 13:09:28 | 算数


割り算の筆算はできるようになったものの
「だいたい何で割ればいいのか」と見当をつけるときに
×1から×2、×3……と
毎回最初から順番にかけ算して答えるのでとても時間がかかっていた◆ちゃん。

そこでカードを使って、だいたい何で割ればいいのか」と見当をつける部分だけ
取り出して遊ぶことにしました。

紙の上では、一度ついた癖がなかなかなおらない◆ちゃんも、
カードなら、およその数を言えるようになってきました。

写真は42÷5にチャレンジしているところです。

「5×9=45?」と言うと、手を大きく交差して
「ブッブー。オーバーしている」と告げると、
「わかった5×8=40だから40」と言いなおしていました。

「手を使いながら同時に考える」という勉強ばかりだと
いっこうに上達しない子も
このように一部分を取り出して練習してから
書く学習に戻るとスムーズに能力がアップすることがよくあります。

動く自転車が作りたい!

2011-08-22 09:22:57 | 工作 ワークショップ


小1の●ちゃん。
教室の蓄音機を見て
「回転する本当に音が出るレコードが作りたい!」と繰り返していましたが、
いろいろ試したあげく、回転をさせる仕組みは作れても
レコードのような音を出すのは難しそう……と感じたらしく、
途中で「車輪が回転して自分が乗れる自転車が作りたい」に目標を変更しました。



作品が何度もつぶれてしまう憂き目にあいながら
とうとう完成!
またがって乗る真似をしながら喜んでいました。
(「乗れるものを!」と言っていたものの、できあがり作品を見るとつぶれるのが怖くなった模様)
車輪が動いて大満足しています。
「ペダルをこぐと動くようにする」と言っていましたが、
ストローの接続に難儀して、それはあきらめることに……。


「レコードが作りたい!」と言っていた時、必死で研究していた
音が出る仕組みは、自転車のベルの部分で生かされていました。
ストローの蛇腹を貼りつけ、それを指でこすると
音がするのです。
いい考えですね。


グループレッスン2年目 成長した2歳半~3歳グループの子たち

2011-08-21 16:40:16 | 通常レッスン
2歳半の頃から子どもたちだけのグループレッスンをはじめて月1回のレッスンに通ってくれている子たち。
今はみな年中さんになりました。

なつかしい最初のレッスンはこちら→
なのたん今日からグループレッスンです (2,3歳児4人レッスン 1)




ごっこ遊びと工作が大好きです。どの子も算数がとても得意な子に成長しています。



「8個のお菓子を3人でのこらず分けます。黒ねこちゃんとフラミンゴちゃんは同じ数になるようにします。
黒ねこちゃんが2個の時、どのような分け方になるでしょう?」

「8個のお菓子を3人でのこらず分けます。フラミンゴちゃんは黒ねこちゃんより1個多くなるように分けます。
黒ねこちゃんが2個の時、どのような分け方になるでしょう?」といった問題にチャレンジしました。
どの子もすぐに解けました。

ちょっと驚いたのは、「★ちゃんの年齢は5歳、弟の年齢は2歳です。1年後、それぞれは何歳になるでしょう?
一年後、ふたりの年齢を足すといくつになるでしょう?」と聞くと、ちゃんと「6歳と3歳で、答えは9歳」と答えることが
できたことです。
でも、その後、その数を暗記してしまったため、「★ちゃんの年齢は5歳、弟の年齢は2歳です。あわせて何歳になるでしょう?」という問いかけにもあわてて「9歳」と答える子がいたため、とてもよく理解しているように見えても
まだあいまいに捉えていることも多い年齢ですから、
こうした問題はできるだけ控えて手や目で操作する体験をたっぷりさせることが大事だな~と実感しました。



「いぬが1うごくあいだにねこは2つ、ねずみは3つうごきます。どうぶつたちはどこでだれとあえますか。」という問題。
座標上に矢印を描いて考えます。
初めて見るややこしそうな座標を、どの子もすぐに理解して解きはじめることができました。

↑集中しています。


<100円グッズで 色の変化を見る道具を作りました>


100円の回転台を型にして2枚の色違いの色画用紙に円を描きます。
2回折って中心点を見つけ、半径にあたる線を切ります。

色画用紙を噛み合わせて、好きな色の配分にして
軽くセロテープで回転台に貼り付けるとできあがり。

回転台の活用法を考えていて思いついたものですが、コマとはまた異なる雰囲気があって
子どもたちになかなか好評です。「怪物君に出てくるやつみたい!」と。




回転すると、色合いがとてもきれいです。
コマを回すのが難しい幼い子も回すことを楽しめますよ。

女の子たちの言い争い

2011-08-21 15:28:55 | 通常レッスン

年中さんと年長さんの女の子たちのグループレッスンでの出来事。
この回はお引っ越ししたメンバーも立ち寄ってくれたため
いつもよりひとり多い5人のレッスンでした。

いたずらな女の子3人が私の背後に回って
首筋をくすぐりだしました。
「やめて、やめて!」と言っていると、
他のふたりが口ぐちに、
「先生が嫌がっているのに、くすぐったりして……そんなのちっとも
面白くないし、よくないことよ」
「うん、それは悪いことだし、やめた方がいい」
と言いました。
いたずらしていた子たちがバツが悪そうに顔を見合わせてにやにやしていると、
ふたりはさらに追い打ちをかけるように、
「そんなの笑うことじゃないもん。他人が嫌がるようなことをしても
ちっともうれしくも面白くもないし、
そんなことばかりいっぱいしたら意地悪になっちゃうよ」
「うん、そうそう」と続けました。
それには、いたずらをしかけた3人も黙っていません。
「悪い悪い言っている人が悪いんだよ。このふたりの方が悪い」と言い返しました。
すると言われた側は、
「そんなことないよ。悪いことをした人が悪くて、それを悪いって言った時は悪くない」と言い返します。
「でも、ふたりが悪いよねー」「ねー」「ねー」と多数決で勝とうとする
いたずらさんたち……。

そんな言い争いがレッスン中、3回もありました。他の2回はゲームでのルール違反についてと、
マジックボールの実験で「ひとり1個まで」という決まりを守るか守らないかについて。

善悪の基準についていろいろ思うところのある年齢のようです。

自分の世界に没頭している自閉症スペクトラムの子とのコミュニケーション 1

2011-08-20 19:50:06 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

自分の世界に没頭している自閉症スペクトラムの子と DIR治療プログラム 1

自分の世界に没頭している自閉症スペクトラムの子と DIR治療プログラム 2


の記事に登場した◎くんの話の続きです。

先日、『自閉症と行動障害  関係障害臨床からの接近』(小林 隆児著  岩崎学術出版社)という
著書を読んでいたところ、
不意に◎くんとユースホステルで過ごした日のことが思い出されて、

「もしかして、◎くんのお母さんにこれを伝えて、◎くんとお母さんの関係が今より良いものに
変化したら、◎くんの発達がもっと促されるかもしれない……」と感じて、さっそく記事にすることにしました。

この著書では、
自閉症の子がピョンピョン跳ぶとか、独り言を言ってうろうろするといった
常同反復的な単純な行動をしているときも、
その段階で行動の意図(意味)を感じとることの大切さを何度も説いてあります。

「このようなコミュニケーションの段階は、象徴機能をもった本来の身振りによる
非言語的なコミュニケーションに進展していくための過度的段階として
体験する必要がある」ものなのだそうです。

著者によると、「この一見常同的な行動の背後にある意図をわれわれが感じとって
対応するか、それとも一面的な対応をするかによって、
その後にコミュニケーションの有り様を左右する決定的な意味を
もっていると考えられるのである」ということなのです。

この著書を読んで、私がこれまで自閉症スペクトラムの子といっしょに過ごしていたときに、
何度も体験したことがある子どもと私との関係が急接近することとなった……といっても、
外から見ると取るに足らないような転機について思い返しました。

◎くんと私は夕食と翌日の朝食の席で親しさが増したのでした。

夕食の時、私は◎くんの左の席に座りました。
食事のメニューが好物だったらしいく◎くんは終始ごきげんでしたが
私には関心がある風でもありませんでした。
ただ隣に座っていることが気に入ってはいるようでした。
昼のレッスンの際には、買い物に行く◎くんのお母さんの荷物を預かってあげようとすると、
それを激しい勢いで邪魔して、私がそれに触れることを断固として拒否し、
「家に帰る!」と悲痛な声で繰り返していましたから、
それからするとかなりの前進でした。
私は◎くんの様子から、私が「左」にいることが気に入っているように感じました。
◎くんは人が自分に対して立つ位置などから、不安を覚えたり、気に入ったりするのを
何となく感じていました。
◎くんのお母さんが、右手で触れる位置にいてくれるので、その状態を確保できるため
安心できるのかもしれないし、他の理由かもしれないけれど、
◎くんは私がそこに座っていることを喜んでいるようでした。

翌朝、私がもう一度◎くんの左側に座ると、◎くんは前日の夕食の時よりも
私に好奇心を示している様子でした。
◎くんのお母さんがお箸で食べるように勧めていたものの
途中で手を使いだし、終いにはゆで卵を握ってつぶして
その小さなつぶを床に向かって投げてキャッキャッと笑いだしました。
その様子が明らかに私を意識してしているのです。
悪い癖がつくといけないので、
無視する必要はあるとは思いつつ、◎くんが私の興味を引こうとしているように見える行動を
バッサリ遮断してしまいたくもなかったので、
「だめ、卵をつぶしちゃだめよ」と静かに言いつつ、投げた卵を紙ナプキンで拾っては、
時折、拾うついでに「だめだめ、投げちゃだめ」と◎くんの足くびを優しくトントンとしました。
すると、◎くんは、卵を拾う私の行動も、足をとんとんする私の行動も
こんな面白いものはないといういきいきした表情で見ていました。

こんなことをしたら、卵を投げるという悪い行動を容認することになり、
悪い癖がつくと思うかもしれませんよね。

私も確かにそれが心配で、かなり慎重にそこに気を配ってはいたのです。

でもその時は、善悪を伝えるには、まず私に親しみを抱いてもらって
コミュニケーションが成立することが大切で、今、◎くんが私に接近してきているチャンスだから
それを逃してはいけないと感じたのです。

なぜなら◎くんの卵の投げ方は、「つぶしたゆで卵を小さく小さくちぎって、
私が床を拭いている方向に向かって投げる」という明らかに
こちらに向かっておふざけ遊びを仕掛けているものでしたから。
床を拭くときに、「卵拭くよ、卵拭くよ」と絵本の中の
言葉のように繰り返すと、◎くんはとてもうれしそうにキャッキャッと笑いました。

◎くんが卵を投げて、私が卵を拭いた後から、私は◎くんの身体の動きから
気持ちを察しやすくなっていました。
◎くんの方でも、私を面白い遊び相手だと
認識した様子でした。

朝食後のレッスンは工作でしたが、
◎くんは私のすぐそばにきて、私の服を引っぱってはちょっかいを出して
いました。
そこで、紙コップふたつをテープでつないで、
黄色い色画用紙をちぎったものを入れて
卵を作りました。
熱心に遊ぶとまではいきませんでしたが、
お母さんに相手をしてもらってそれで少し遊んでいました。
その後、ティッシュ箱を使って、紙コップに
ちぎった卵が落ちて入る仕掛けになっている
ドリンクマシーンのようなものを作ってあげるとそれも
少し遊べました。
熱心に遊ぶとか、工作をしはじめるとまではいかなくても、
「体験したことを工作で再現して遊ぶ」体験のスタートとしては
まずまずだと感じました。
こうした工作遊びに拒絶心がないと、
過去の記憶を再現して学習したり、ソーシャルスキルを教えたり、
語彙を増やしたり、教科学習のつまずきを補うときに
とても教えやすくなるからです。

このようにして、私と◎くんは
初めて顔を合わした時に比べて
ぐっと距離が縮まりました。

こうした接近は、一見、何でもないことのように感じるかもしれません。
「たまたま機嫌がよかったんじゃないの?」というように。

でも、「心と心がちゃんとつながった」ということは
双方向のコミュニケーションがほとんどできない子とのあいだでも
ちゃんとわかるし、
それを契機に次のステップへ子どもを導いていくことが可能になることは、
これまでこうした周囲とのコミュニケーションの困難な子と接するなかで強く実感していることなのです。

◎くんの親御さんは、◎くんをそれはかわいがっていて、
優しく愛情深く接しています。
けれども、◎くんが常同的な行動を始めると、
とても不安になるらしく
それが機嫌がよくて跳ねているような場合にも
やめさせて何か意味ある活動をする場に連れて行こうとしていました。
すると、◎くんはますます自分の世界に閉じこもって
お母さんの姿など見えないかのような行動をとりだすことになっていました。

◎くんの好きな歌の絵本などを手渡すだけではなくて、
◎くんの「楽しい」の世界にお母さん自らが近づいていってあげてはどうかな?
と感じました。
◎くんはおちゃめないたずらっこで、いきいきした世界をもっているのです。
それをいっしょに十分楽しんで、◎くんに、もっと別の形でも
コミュニケーションをとりたいという意欲を育てていくことが
大事なのじゃないかなと思いました。

それは私が勝手に勘で思っていたことですが、
今回読んだ『自閉症と行動障害 関係障害臨床からの接近』岩崎学術出版社
には、
一見無意味に見える行動の背景に潜んでいる愛着要求を感じとることや、
意味がないような行動の裏にある意図を受け取るように努めることの
大切さが、さまざまな実例のなかで説明されていたのでうれしくなりました。

自閉症スペクトラムの子も愛情を求める
ごく普通の子でもあります。
もちろん、接する際には、自閉症スペクトラムの子の特性を理解して
間違った働きかけをしないような配慮は必要です。
でも、腫れものに触るようにして、マニュアル通りに接するのも
どうかと思うのです。
知識に十分目を通した上で、自閉症スペクトラムの子たちと、
心と心で向きあい、好奇心や親しみや愛情を感じあいたいと
思っています。









2、3歳児の「へりくつ」や「意味のわからない要求」にどのように関わればいいのでしょう? 2

2011-08-20 07:53:10 | 教育論 読者の方からのQ&A

昆虫や鳥の世界も4つ足で歩く動物の世界も、
子どもが親をわずらわすことってそれほどありませんよね。
もちろん、ライオンの子育ての様子なんかを映像で見ていると、
子ライオンがしつこくいたずらをして、親ライオンがガブッと軽く噛みついて
どこからどこまでが許されるのかしつける姿があるのです。
でも、そうした子育てはいたってシンプルで、
人間の子ほど次から次へと親に新たなわずらわしい課題を与えることはないでしょう。

どうしてこんなに人間の子がめんどくさいか……といえば、
勝手に自分で育ってしまわずに、大人の手をわずらわして成長する必要がるからなのでしょう。
それほど高度な生き物なのです。

ややこしいから大人が関わって、そうして関わり合うから一人で育つ場合にはとうてい不可能なほど大きく成長する
のですから。

子どもを効率的に最善の形で発達させるために、
進化の過程で得た能力のひとつが、
成長過程で親をわずらわすということなのでしょうね。

『関係からみた発達障碍』(小林隆児  金剛出版)の
なかで、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「親(育てる者)-子(育てられる者)」という非対称的関係における
コミュニケーションの過度的段階でのある特徴を見て取ることができるように思う。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
という一文に出会い、大人の手をわずらわせながら成長する子どもが特にややこしくてめんどくさい時期について
大切な視点を与えてくれる内容だなと感じました。

「コミュニケーションの過度的段階のある特徴」って
どんなものでしょう。

この著書によると、この過度的段階のコミュニケーションとは
次のような意味をになっています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ことばの獲得過程のいまだ途上にある子どもにとっては、
ことばは自ら自由に操ることができるような道具ではない。
しかし、ことばを獲得して
大人文化の仲間入りをしたいという欲求(自立したい欲求)を持つがゆえに、
子どもは母親を自らの方に引き寄せて、母親に自分の内的表象をことばで語ってもらうことが、
大きな喜びとなっている。
母親に依存しながらも、ことば文化を取り入れたいという欲求をも
同時に表現している。
依存(繋合希求性)と自立(自己実現欲求)が深く錯綜しながら
展開している母子コミュニケーションの一断面をみる思いがする。

         『関係からみた発達障碍』(小林隆児  金剛出版)p129

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「過度的段階のコミュニケーションが大事なのはわかったけど、
それって具体的にいうとどんなもの?」と思いますよね。

「大人文化の仲間入りをしたいという欲求(自立したい欲求)を持つがゆえに、
子どもは母親を自らの方に引き寄せて、母親に自分の内的表象をことばで語ってもらうことが、
大きな喜びとなっている。」ときの子どもの姿は、
↑の著書に次のようなエピソードが紹介されていました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<エピソード1>
絵を描いて、自分が何を描いたか、私に言わせようとする。絵を指して、私の方を向いて<言って>というふうに
少し催促する声を出す。
目を見ても<これはなんだ?>と<言ってみて!>という気持ちがよくわかる。
すぐにパッと答えてあげれれば大満足で安心する。

でも、ときどき忘れてことばにつまることがある。
そんなときは、小さな声でそっと頭文字のことばを教えてくれる。
「パーキング」なら「パ」、
「プリンスホテル」なら「プ」、頭文字がはっきり聞こえず、こちらがわからないと、
すごく怒る。
一日に数回は怒らせてしまう。たまに、途中で私がわかって正解を言うと、
パッと目に涙をためながらも笑ってくれて落ち着く。
切り替えは早い。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<エピソード2>

数日間から朝起きるとすぐに「(何かを)トッテ」
と要求することが多くなってきた。
母親にしてみると何をとってもらいたいのか、
本人の好みがいくつかあるので想像はできるのであるが、
何かはっきりとはわからない。
そのため時折違った物を持ってくるとひどく不機嫌になってしまう。
自分の希望の物を持ってきてもらうととてもうれしそうに反応している。
ではどうして何をもってきてほしいと明確に言わないのか、言えないのだろうか。
日ごろはほしい物に関して何らかの表現方法は身につけているのであるから
言ってもよさそうなのだが、それを母親に直接的に言わない。
なぜなのか母親は首を傾げている。

  (エピソードはふたつとも 『関係からみた発達障碍』(小林隆児  金剛出版)より引用
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

子育て中の方は日々体験しているでしょうが、
子どもって自分で言わずにわざわざ大人に言わそうとして、
ややこしい行動をとるものですよね。
ユースホステルでのレッスンで、教室での定期レッスンにも通ってくれている
2歳のおしゃべりの男の子のお母さんから、
「うちの子良い子すぎて心配なのですが……」という相談をいただき、
「えっ?★くんが?いえ、★くんは、いつもけっこう好き放題言ってて、
良い子すぎじゃないから大丈夫ですよ~」と思わず笑いながら応えてしまい、
後から、「奈緒美先生、ひどいですよ~あれは結構傷つきました」とこれも笑いながら告げられた
出来事がありました。

というのも、★くんはそうとうなぐずぐずさんで、激しいかんしゃくこそ起こさないものの、
何かするたびに、ぐずぐずぶつぶつぐだぐだ~とややこしいこと極まりないのです。
★くんのお母さんは大らかな性質の方でとにかく★くんがかわいくてたまりませんから、
いちいち「これはどう?」「ならこれでは?」と延々と相手をしてます。
そうしてたくさん相手をしてもらっているので、しょっちゅうぐずぐず言っていても、
それが★くんのお母さんにとってわずらわしいことのようには感じられず、
楽しい親子の交流の時間になっているのです。
そうして相手をしても少しも苦とは感じないお母さんももとで、
★くんは2歳とは思えないほど表現豊かに会話したり、考えたことを言葉にするのが上手になっていました。

次回に続きます。



人と関わりながら成長する心 2

2011-08-19 17:48:04 | 日々思うこと 雑感


「おにごっこ」がしたかったのだけど、走り回って人にぶつかるといけないので、
「馬跳び」や「あぶくたった」などを年上の子の主導のもとで楽しんでいました。
こうした場面で小学5年生の○ちゃんは、とてもすばらしいリーダーシップを発揮してくれました。
他の子らを惹きつけて、まとめる力のある子が
日常でなかなかその力を発揮する場面が少ないのが残念です。

工作も、みんなでするとそれは楽しくて、
熱中して作っていました。


↑小学2年生の◎ちゃんの「はやぶさ」です。



ユースホステルでのレッスンに子どもだけで参加していた小学4年生の○ちゃんと妹の1年生の◆ちゃんは、
教室に帰宅後、お母さんのお迎えを待つ間も工作に熱中。

↑小4の○ちゃんの作品。お散歩うさぎです。
ユースホステルでは5年生の女の子とビー玉の動きを創り出すために
共同制作していたのですが、それがよほど楽しかったらしく、
帰ってきて作った作品に、動く工夫が取り入れられていました。


底を2段にしてビー玉が入る穴を作り、ビー玉を入れて転がるようにしています。
とてもよいアイデアですね♪

妹の◆ちゃんも負けていません。

「バレエ」うさぎだそうです。逆さまにするとかわいいかごにもなるそうです。
1日、他の子たちと過ごして、他の子の作る作品を観察するうちに、
工夫やていねいさがそれまでの工作とずいぶんちがってきたように感じました。

○ちゃんにはもうひとつ変化がありました。

お友だちといっしょにわいわい算数の問題にチャレンジするうちに、
線分図と面積図を使って解く解き方がとても気に入って、
それまでは学校で習っていない問題を解くときは強い構えがあって
頭が働かなくなっていたのに、
「算数が得意」「もっと解きたい」「面白い」「私にはできる!」という気持ちに
なってきたようなのです。


晩に美術工房でスライム作りや片栗粉の実験などを楽しんでいたとき、
片栗粉の袋に100グラム入り、330キロカロリーとあったので、
それから次のような問題を出しました。

100グラム 330キロカロリーのとき、
250グラムでが何キロカロリーでしょうか?

5年生の★ちゃんと4年生の○ちゃんがふたりで相談しながら挑戦していました。
★ちゃんは、10グラムが何キロカロリーか計算してから、答えをだしていました。

○ちゃんは100グラムふたつ分と半分のカロリーを出す形で考えていました。

私はふたりを正解とした後で、
2年生の子らにもわかりやすいように、
「1グラムのときには、何キロカロリーか?」と考えてみる提案をしました。

その後、線分図を描きながら、年齢を問う複雑な文章題なども解いたのですが、
それがすっかり○ちゃんにヒットしたようでした。

○ちゃんはとても礼儀正しくて、私に対しては今年になってから敬語を使うようになり、
あいさつやお礼をていねいに言う子です。
帰り際に、「先生、今日はどうもありがとうございました。先生の教え方はとてもわかりやすかったです。
よくわかるようになりました」とていねいに褒めてもらって、

「ありがとう、○ちゃん」と言うと、○ちゃんはずっと考えていたような様子で
ちょっとすまなそうに言いわけするように次のように言いました。

「あの、昨日の片栗粉の問題なんですけど、
★ちゃんが10グラムで計算していたときに、
先生は1グラムで考える方法を説明していたんですが、★ちゃん、
きちんと1グラムでする方法も考えていたんです。
最初に。
でも、それがわかっていても、330キロカロリーの場合ゼロをひとつ取るだけですむ
10グラムで計算した方がいい方法だと思ったので、10グラムで考えてみてたんです」

「ごめんね~。1グラムで説明したのは、あれが正しい解き方というわけではなくて、
小さい子たちにも意味がわかるように言っただけなのよ。
★ちゃんはちゃんとわかっていたんなら、それは失礼だったね。○ちゃんもよくわかっているね」

「ええ、今回、参加して算数がよくわかるようになりました」と4年生の子によいしょしてもらって、
思わず照れてしまいました。


↑2年生の子らも喜んで作って遊んでいた
面積図クイズ。他に分数クイズも楽しみました。

2円のDSと5円のWiiをあわせて5つ買いました。
19円でした。
それぞれいくつずつ買ったでしょう?

DSとWiiの破格値ぶりに子どもたちは大はしゃぎ。
2年生の子たちもしっかり面積図の意味を理解するようになっていました。

人と関わりながら成長する心 1

2011-08-19 16:19:12 | 日々思うこと 雑感


ユースホステルでのレッスンから帰ってきました。
定期の算数クラブの小学2年生の女の子たちを中心に別グループの4年生と5年生の女の子たちと親御さんとその弟くんたちで
ワイワイガヤガヤ楽しい時間を過ごしてきました。

たった一泊のレッスンなのですが、知的な面でも精神的な面でも、
その成長ぶりにびっくり!




初日の和室でのレッスンでは、工作したり、ピタゴラスイッチの仕掛けを作ったり、ボランティアのお兄さんと
電子工作をしたりして遊びました。

学習タイムでは、工作に使っている材料をテーマに
回転図形の問題を解いたり、
算数の時間に関わる文章題を解いたりしました。


紙コップの形(底をつけた場合)は円すいから上部の円すいを取り除いた形ですよね。
そうした形についてのクイズを楽しんだ後で、
「回転させて紙コップと同じ形を作ろうと思います。どんな形を回転させるといいでしょう?」
という問題にチャレンジ。
簡単な模型も作って考えました。



みんなで文章題にチャレンジ。ああでもない、こうでもない~と大揉め!
ひとりが書きこんだミスが原因で答えのつじつまが合わなくなっていたことが判明。
大笑いしながら問題を解いていました。

ボランティアで参加してくれていた高校生のお兄さんがモテモテでした。
晩の美術工房でのレッスンにも参加してくれていたので、
お兄さんの家族の方が車で迎えに来てくれていたのですが、車に乗り込むお兄さんに対し、
「明日もきてね~!またきてね~!」「お兄ちゃーん!」「ばいばーい!」「またきてねー!!」と
スターのお見送りのような騒ぎでした。


2、3歳児の「へりくつ」や「意味のわからない要求」にどのように関わればいいのでしょう? 1

2011-08-18 08:37:06 | 教育論 読者の方からのQ&A

2、3歳の子というのは、「へりくつ魔王」のような存在で、
どこからそんな理由が飛んでくるのかという理由を持ち出して、
自分に起こったできごとを説明することが多々あります。

うちの子の育児記録に次のような話が残っています。
娘がもうすぐ2歳という時期のこと。実家に寄っていた妹に、その時まだ赤ちゃんの息子(まこちゃん)といっしょに
スーパーに買い物に連れて行ってもらいました。
帰宅した妹は、「おねぇちゃん、またよ~もう★(娘)は……」とやれやれとため息まじりに
スーパーのお菓子売り場の前でひっくり返って駄々をこねていた娘の様子を説明しました。

私が娘にそのことを問うと、こんな返事が返ってきました。

「ちあうの。まこちゃんね、おかちほしいな~ほしいな~言ったのよ。ちょうだいして、
ほしいなほしいなして悪い子だったのよ。」と。

「★はどうしてたの?」とさらにたずねると、
「あのね、んなちゃん(自分のこと)、まこちゃんめんめんよって言ったの。」とのこと……。

付け加えておきますが、当時、まこちゃんは「んまんま……」くらいしかしゃべれませんでした。

こんな風に、幼い子に何かたずねると、
「トンデモ発言」や「ありえないへりくつ」が飛び出してきて、
親が数十年間築いてきた常識的な世界観がグラグラとゆすぶられることが
しょっちゅう起こります。

保育現場で働いている方々は、こうした意味不明のへりくつに日々向き合っているようで、
保育の実践報告を読むと、思わず笑ってしまうシーンが多々あります。

『人とのかかわりで「気になる」子』
という保育者向けの本の中にこんな話が載っていました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
二歳から三歳くらいの子というのはすごくおもしろいへりくつをつきます。
わーわー泣いているときに、どうしたの、と聞くと、
「○○ちゃんのはながたれていたからいやだ」とか、
「くつしたがぐちゃぐちゃになっているから」と言ったりします。
そんな他人のことなんかでどうして、それとあなたが泣いていることとどんな関係があるの、と
思ったりしますが……。
でも、「あー、それがいやだったのかー」なんて受けたりします。
そうするとはながたれてるなんて言われた子は余計腹立てて怒ったりしてね。
そんなことが日々の生活のなかにいっぱいあります。
子どもたちは、そんな「へりくつ」をいっぱい出して、それにすがりながら、
立ち直りをつくっていくのだと思います。
           『人とのかかわりで「気になる」子』(現代と保育編集部  ひとなる書房)P81 より
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「へりくつ」をいっぱい出して、それにすがりながら、
立ち直りをつくっていく二、三歳の子。
でも、もし、大人がそのへりくつの間違いを正して、子どもにわかるように説明して、
妙に大人っぽい物分かりのよい子に育ててしまうとどうなるのでしょう?
2歳や3歳の時期から、言葉で言えばわかる
わがままやだだこねの少ない子にしてしまうとどうなるのでしょう?

最近の子育てでは、できるだけ早く
大人の望むように仕立てあげてしまうことが
他人に迷惑をかけない、しつけの行き届いたいい子を育てているかのように
捉えられているところがあります。
もちろん、0、1歳から愛情を込めた年齢にそったしつけは必要なのです。
好き勝手させて放任していていいわけではありません。
でも、子どもがおりこうさんで大人の言うことを聞いてしまうからという理由で
わがままやだだこねを十分せずにこの時期を過ごしてしまうと、
子どものなかに自己をコントロールする力がきちんと育っていかなくなることが
保育の場で指摘されています。

上の『人とのかかわりで「気になる」子』に次のように書かれています。
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子どものなかに自己をコントロールする力を
育てていくということを考えると、
何かあったとき、おとなが「だめ、だめ」といいながら、つけていくようにするのか、
子ども自身のへりくつの固まりのような良い分を受け止めながら、
そっと方向性だけを示してあげるのか、
その対し方のいかんが保育者としてためされるのではないでしょうか。
(略)
そのへりくつを押さえ込んでいったら、子どもたちは何も言わなくなってしまいます。
ただ泣くだけ、暴れるだけになってしまうのではないでしょうか。


ただそれが、年長さんくらいになってくると、自分が今なんで暴れているのかと
おとなの方で理解しないと満足しなくなります。ただ、だっこしたりおんぶしたりだけでは
ダメだと思います。
悪いことは悪い。
「あなたのしたことは悪いと思うよ。でもそうしたかった気持ちはわかるよ」
という説明があってはじめて、落ち着く。
           (『人とのかかわりで「気になる」子』現代と保育編集部  ひとなる書房 P82)

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家庭での子育ての様子をうかがうと、
上のような保育の姿勢が逆転しているケースが多いようです。

2、3歳児には「最初が肝心だから」と強圧的なほど
言葉と大人側の常識で「わからせて」しまい、
そのせいで、4,5歳に問題行動が出てきます。
すると、4、5歳児には「問題行動に困って読んだ本によると子どもを受容するのが大事とあったから」と言って
悪いことを悪いとはっきり言わずに受容するか、

「しつけをしないと小学校に入ってから困るから」という理由で、
悪いことをわからせて修正させるだけで、
そうせざる得なかった気持ちを無視してしまうのです。

こうした困った親子関係がどうして生じるのかというと、
2、3歳児の「へりくつ」や「意味のわからない要求」が、その後の成長にどのような
良いものをもたらすのか
知らないことによると感じています。

次回は、「意味のわからない要求」についてくわしく書く予定ですが、
今日の午後からユースホステルでのレッスンがあるので、
更新は明日の午後以降になります。

今回のユースホステルでのレッスンに参加するのは算数クラブと定期レッスンの女の子たちです。
さぞかし、テンションが高いこと……騒がしいこと……と覚悟を決めています。
娘いわく、「あぁ、あの子たち?それじゃ、今回のユースホステルはすごく楽しいんじゃない?」とのこと。
みんなではしゃぎすぎて事故……なんてことにならないように気をつけます。