ステージ4
<問題解決能力を身につける>
問題解決型ごっこ遊びが有効。
「この車、動かないよ! どうしたらいい?」というように目標達成を故意に妨げるような
それでいて、子どもの興味をひくような状況を設定する。
コミュニケーションを続けざる得ない状況を設定し、
大人が助けることで、
子どもとのあいだで多くのコミュニケーションが実現する。
ステージ5
<考える力を育てる>
子どもが要求や関心を表現できるように促す。
ごっこ遊びでも言葉を使ったやりとりでも、
自分の考えを表現させる。
その際、言葉と行動と感情は深く結びついていることを忘れないようにし、
常にそれらを結びつけるようにする。
子どもの考えを絵画、記号、空間デザイン、さらに言葉などのいろいろな表現方法で具現化していく。
ステージ6と7
<倫理的思考を身につける>
ごっこ遊びでも実際の会話でも、さまざまな考えを比較検討し、
違った筋書きを導入する。
ごっこ遊びでも現実の議論でも、過去、現在、未来といった時間概念を意識させる。
カウボーイの真似をしながら、
「カウボーイは明日どこに行くのかな」と言ってみる。
量の概念も大切。簡単に欲しがるものを与えず、「どれくらい欲しいの?」とたずねる。
ままごとで全員にお茶をあげるにはコップがいくつ必要かも
考えさせる。
(『自閉症のDIR治療プログラム フロアタイムによる発達の促し』S.グリーンスパン S.ウィーダー著
広瀬宏之訳 創元社 より(簡単に要約して紹介します)
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上の内容を読んで、虹色教室で普段から何気なく交わしていた
子どもとの会話が、子どもの考える力や論理的思考を伸ばしていたんだな~と実感しました。
たとえば、子どもとの工作の様子を下のような記事にしたことがあるのですが、
今読み返してみると、さりげない会話と活動を通して、子どもが自分の頭でよく考え、論理的思考力を
身に付けていっている様子がわかります。
レッスンで工作をしたり工作の記事を書いたりすると、
何をどんな風に作るかとか、どれくらい上手に作れるようになるかとか、工作のついでにどんな知識を教えるか
といったことだけが注目されて、
子どもがどんなことに興味を持ち、どんな風に人と関わり、どんな言葉を発したかのかといったことは
どうでもよいことのように扱われがちです。
でも、本当は、そうした目立たない部分ほど、子どもを成長させる糧となっているものです。
訓練による目に見える成果ではなく
ゆっくりゆったり味わいながら、人と触れ合う楽しみを満喫しながらする体験の蓄積は、
子どもの本当の賢さや地頭を育みます。
どうか
2度とやりなおすことができない幼児期を
明るく温かで優しいものにしてください。
子どもの目の輝きや幸せそうな笑顔で日々を満たしてください。
工夫する喜びと頭を使うワクワク感でいっぱいにしてください。
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過去記事から <なぜ幼児に工作をさせると考える力がアップするの?>
教室では2歳くらいから、自分のイメージを表現する手段を与えています。
それは、工作だったり、ブロック製作だったり、遊びの世界を展開していくことだったりします。
「知能を育む方法が、どうして工作なの?」
「どうしてブロックなの?」と質問を受けるときがあります。
幼児は目で見て、手を使って考えます。
幼児に頭の中だけで考えさせるのは、不可能とも言える事です。
ただ工作のように具体的に目で見える作業を通してなら、
幼児も自分のしていることの中に
意味や課題を見つけ出し、
秩序に気づき法則を見出したり、
自分のできることの可能性を感じ取って、集中的に作業ができるようになっていくのです。
また客観的に自分のしたことを振り返って
表現していくことも上手になっていきます。
そうした能力アップも魅力ですが、
幼児が自分で工作をするようになったとき、
何より周囲が驚くのは、ぐずりやワガママ、飽きっぽさ、感情の爆発などが
減っていき、
落ち着いてよく考えて行動するようになることです。
創造性が発揮されることが、
心の安定へとつながるのでしょう。
3歳、4歳の女の子3人のレッスンでの話です。
2歳くらいから教室に通ってくれている3歳の★ちゃん、4歳の☆ちゃんは、
とても工作が上手で、自分でさまざまなことを思いつき、
イメージしたものを即座にもりもり作っていく
子どもたちです。
想像力豊かで問題解決能力が高いため、
「欲しいものがあったけど買ってもらえなかった」といった状況でも、
「なら、紙と~で私たちで作っちゃおう!」と即座に切り替えて
毎日笑顔を溢れさせて生活しています。
一方、最近このグループに入ったばかりの●ちゃんは、
他の子が何か作ったり、楽しく遊んでいる間も、
教室のおもちゃを自分の物にしたがって泣いて、次々新しいおもちゃを出しては片付けるのは嫌で泣いて、みんな何かするときは「できない」の一点張りでした。
このように困ったちゃんとはいえ、
●ちゃんからは発達の問題はあまり考えられず、
知能も高い子であることは感じていました。
お母さんが迎えにくるとぐずぐずはさらに激しくなって、
●ちゃんのお母さんは、泣いたりわめいたりしはじめると止まらなくなるこの子にどう対応したらよいのかすっかり困惑しておられました。
★ちゃんのお母さんが●ちゃんのお母さんとお友だちであったため、
●ちゃんの愛着がきちんと育っていないことを気にかけて、
愛着の形成がきちんとできていくように手助けしていきました。
また教室では、工作や物作りを通して、
自分の内面にあるものを創造的に表現していく手立てを与えていました。
すると、少し前まで教室に来ると新しいおもちゃを引っ張り出しては
少しするとかんしゃくを爆発させていた●ちゃんが、
紙コップを指して
「これで、お人形さんの帽子が作れるんじゃない?」
「私ベビーカーが作りたいの。大きくてちゃんと押せるやつ。
丸い車輪もついているやつよ」などと、それまでには考えられなかったような
想像力を使った目的をもった発言が増えてきました。
●ちゃんは工作に興味を持ち、少しずつですが、
自分で作れるようになってきたのです。するとそうした具体物や
具体的な作業を通して
自分の考えを整理し、イメージの世界を言葉で表現できるようになってきたのです。
するともともと持っている利発で頑張り屋の性質が外に現われてきて、
こぐま会のワークからクイズのように問題を出す時間には、
いくつもいくつも問題を解きたがる姿がありました。
その表情の中には自信をみなぎり、
ニコニコと満面の笑みが広がっていました。
3歳の●ちゃん、★ちゃん、4歳の☆ちゃんのレッスンの日。
●ちゃんと★ちゃんは、「ベビーカーを作りたい」と言い、
(☆ちゃんは自分で思いついた別のものを作ってました)
私が箱に
数箇所切り込みを入れてイス型のベビーカーのおおまかな形を作ってあげると、
布を貼ったり、リボンなどを飾りつけたり、折り紙で車輪を作ったりして
自由に仕上げていました。
ふだんよく工作をする★ちゃんは、物を観察する力が優れています。
それで、折り紙に小皿を当てて車輪を作るまでは自分でしたものの
「これはピラピラだから回らないの。ダンボールに貼り付けて」と言ってきました。
車輪って……飾りで貼る程度に考えていた私はちょっとびっくりしてしまいました。
「回るようにしたいの?」
「そう。真ん中に棒が入っててそれからくるくるってなるの。回すときビリッってなったらダメだから、堅い紙に貼るの」と★ちゃん。
そこで、折り紙を切り抜いた車輪をダンボールに貼り、ストローを通すのを★ちゃんといっしょにやってみました。
それから、ベビーカーに穴を空けて、そのストローをさして、くるくるまわして見せました。
これで満足するかと思うと……
「ちがうの、こうして、ベビーカーが動いたら、車輪がくるくるってしないと……
手で回すんじゃダメだもん。ここの車輪の下がもっと外に出てるのよ。これはちがうの」と言います。
車輪について、よく観察していますね……そうですよね。手で車輪を動かすベビーカーは確かにおかしい……。
そこで、穴の位置を下にずらして車輪が地面に触れて回るように改良しました。
すっかり満足した★ちゃん。
それを見ていた●ちゃん。
教室ではベビーカーに折り紙を切り抜いて作ったうさぎのシールを貼ることなどで忙しかったため、車輪は作りませんでした。
後日うかがったところ、
お家に帰ってから「車輪が作りたい!」と言い出したそうです。
そこでお母さんがいっしょに作ってあげたところ、
「ちがうの。ちゃんと回るやつ。こうなっていて~」と★ちゃんの作品の作りを一生懸命伝えようとし、
お母さんは「私にはできないわ~」と困ってしまったそうです。
確かに困ったでしょうね。でも、★ちゃんがそれだけ物事をていねいに捉えて考えるようになっている証拠なので、
出来る限り付き合ってもらったのだったらいいな~と思いました。
子どもに「工作で何が作りたい?」とたずねると、
「ちゃんとピカッて映って絵が動くテレビ作りたい!」「水に沈んで、沈んだままずっと進んでいく潜水艦が作りたい!」
「お友だちと本当におしゃべりできる電話が作りたい」といった返事が返ってくることがあります。
「そんなの無理よ」「作れないわ」「お母さんにはできないわ」
と即答する方がいます。
「そんな無茶ばかり言わないで!」
と、そうした子どもの言葉をクレームのように受け取る方もいます。
そうした親御さんの、考える前から、
「無理」「自分には出来ない」と決め付けてしまう態度は、
たちまち子どもに浸透します。
子どもの中に
工作だけでなく、どの学習科目にしても、少しでも考えなくてはならない場面にぶつかると、
「それは私には無理」「それは私にはできない」と決め付けたり、
めんどくさかったり、邪魔くさかったりすれば、「できない」と言いさえすれば、
それから逃れられると思う態度を育ててしまうかもしれません。
どんなに不可能と思えることも、
子どもが興味を持ったなら、即座に思考のスイッチをオフにしてしまわず、
観察してみる、イメージしてみる、考えてみる、会話を膨らます、推理してみる
くらいはしてもいいかもしれませんね。
とにかく子どもに、何でもかんでも、「できない」で片付ける姿を
見せていくのは、なるべく避けたいですね。
そこまで子どもの相手をしていられない。いちいち子どもの言葉にそこまで付き合っていたらきりがないと感じる方もいるでしょうね。でも、子どもって
自律と自立のための支えが必要な一時だけしか、大人に頼らないものです。
4歳の☆ちゃんなんかは、
素材を準備するところからイメージ通り再現することまで
全て自分でできるようになっているので、
私の手をわずらわすことなく
ひとりでモクモクと作業を続けているのです。
かなり前から、欲求や願望に十分つきあってあげていたので、自分で作業する力がしっかりついているのです。
ペダル式のゴミ箱の仕組みに興味を抱いて以来、
いつもお家で気づいたことを「大発見大発見!!」と意気込んで知らせてくれる
3歳のかいくん。
今回のレッスンで、かいくんが目を丸くして必死で説明してくれた大発見は、
「あのねぇ、ティッシュをねぇ、引っ張るとね~出てくるの。
もっともっとって。ティッシュを引っ張ると、ティッシュがぁ出てくるの」
という話でした。
「本当???それはすごいね~!!ティッシュ引っ張ったら、もっとティッシュが出てくるんだ。へぇ~」といっしょに感動を味わってから、
いっしょにテュッシュが次々出てくるしかけを作ってみました。
ティッシュの量が少なくなっている本物のティッシュ箱を使ってもできますよ。
ティッシュを取り出して、半分に折るとき次のティッシュをかませて折り、それを折るとき折るとき、次のティッシュをかませて折る……
と、交互にティッシュ引っかけた状態で折っていきます。
それを箱に入れたらできあがり。
(下から紙製のバネで押し上げる仕組みを作ると、取り出しやすいです)
これがティッシュが次々出てくる仕組みです。
この説明ではわからない……という方は、ティッシュ箱から
ある程度の束でティッシュを取り出して、どのようにして出てくるのか
観察してみてください。
おもしろかったのが、3歳の子たちがレッスンに来たとき、
「あのねぇ、ティッシュを引っ張るとねどうなるかわかる?」とたずねて
「わからない」と言うので、
「ティッシュを引っ張ると、次のティッシュが出てきて、それをまた引っ張ると次のティッシュが出てくるんだって!かいくんが見つけたんだって!」と
オーバーに言うと、
目をまん丸くして「ほんと?」「ほんと?」とびっくりするのです。
その後、本物のティッシュを引っ張って見せると、
「ふぅわぁぁ~!!」とため息をついて一同びっくりしていました。
(見たことあると思うのだけど、よく観察していなかったんですね。それにしてもこんなに驚くとは……!)
工作というと、
「学校でする図画工作の成績をアップさせるためにするもの」
「工作教室や工作イベントでするもの」と捉えていらっしゃる方も
たくさんいます。
幼稚園選びも工作が十分できるかをチェックする方はそれほどいないようです。
子育て中の方の意識の中で工作の価値はかなり低いのかもしれません。
そんな「ついで」感覚で扱われている工作ですが、
現実に幼児の工作に付き合ってみると、
(工作教室に連れて行くだけではあまり効果はないでしょうね。それならテレビのワクワクさんを見せる方が効果的かもしれません)
工作が
「難しい概念」を、「幼児が簡単に考えられるもの」に変えてしまう
まるで魔法のような力を持っていることに気づくはずです。
子どもというのは、
子ども特有の物の見方をしていて、長い短い、太い細い、深い浅い、厚い薄いなどを正確に捉えているわけではありません。
お人形用のお風呂に自分も入れると思って
足を突っ込もうとする1歳代の子の姿を見てもわかりますよね。
ですから、最初のうちは、子どもが工作をしている間中、
あれれ?と思うようなことがたくさんあるんです。
大きな箱一面に紙を貼りたいと言ってた子が、1センチくらいのちんまりした紙を切って貼ってから「小さい……」と言う……
貼りたい絵柄の面にノリを貼っては、「絵がなくなった」と不思議がるなど。
でもそれを繰り返した幼児は
小学生レベルの立体図形のイメージなんて全て頭に入っているように
きちん空間についての理解が進んでいます。
また、子どもにとっては電化製品も生活用品もおもちゃと同じように捉えていて、その機能についてきちんと把握していないことはよくあります。
たとえば、懐中電灯には「電池」を入れるけれど、「コード」がついていない
といった事実は、子どもがとてもびっくりするネタで、
工作をするとき、一番「力」が入る部分になったりするのです。
子どものこうした姿を見ていると、
工作とは、子どもが世界を知るため、理解するための手段であって、
工作することで、
観察する姿や考える力が変化してくることがわかるはずです。
それでも子どもが「映るテレビが作りたい」と言ってきたらどうしてあげたら
良いかわからないという方もいますよね。
まず、子どもといっしょにテレビを観察します。
電源を入れると明るくなって、消すと消えますね。
「何に似ているかな?」と子どもにたずねると、
「懐中電灯」と答えるかもしれませんね。
それなら、子どもの描いた絵。リモコンの絵。懐中電灯を用意して、
リモコンを押すと同時に子どもの描いた絵の背後から
懐中電灯を照らせば「テレビのスイッチオン!」
懐中電灯を消せば「消えた!」といったものができますよね。
それ以外にも、子どもと観察してみて、絵が動くから長い絵を描いて、輪にして箱の中で動かすというアイデアを思いつくかもしれません。
また鏡にテレビの枠を貼り付け、
マイクを持ってその枠の中に自分が写るようにするのでもいかもしれませんよね。
良いアイデアが浮かばないときは、
「何かいいアイデアないかな?」と家の中を探索するだけでも、
子どもはとても喜びますよ。
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「虹色オンライン教材のもくじのくわしい説明についての記事を探しています」という質問をいただいています。
記事へのリンクを貼っておきますね。
9歳の壁 と 『虹色オンライン教材 学ぶことが好きになる工作遊び 』 抽象的思考の基盤となる体験について