言葉を引き出すための工夫というのは、
子どもの性質や発達の様子によって
それぞれ異なるものだと思っています。
まず子どもの姿をよく観察することが大事です。
★くんの場合、「言葉の語尾だけ発音する」という単語がいくつかありました。
★くんとお母さんのやりとりを観察していて、
「★くんのお母さんの声の最初の音が聞き取りにくいこと」
「何か始める時や要求をする時にいったん集中する、という経験がないこと」
「会話に発展しそうな非言語の世界のやりとりに言葉を乗せていくのではなく、
言葉をシャワーのようにかけていることが多いこと。
また、英語のビデオのように会話に発展しにくい言葉をたくさん耳にしていること」
の3つを改めると、もう少し言葉が出てくるように感じました。
「★くんのお母さんの声の最初の音が聞き取りにくい」というのは、
次のようなことです。
★くんのお母さんは★くんをそれはかわいがっていて、
★くんが何かするたびにたくさん声をかけています。
★くんはそうしたお母さんの言葉のほとんどを
かけっぱなしのテレビから流れていく音くらいに捉えているようで、
ごくたまに、自分の興味とお母さんの言葉が合致する以外は聞こえていないように見えます。
★くんのお母さんが、ブロックや造形遊びや体操など
さまざまな遊びの体験の機会を作ってあげているからか、
★くんはさまざまな物に触れてみよう、動かしてみよう、という
豊かな好奇心を持っています。
ですから、本来なら、「あれがしたい」「あれがほしい」「あれに触りたい」という意志が見られた時に、
耳で聞くことに集中させて、
「ドールハウスで遊びたいの?」「○○と○○では、どっちがいいの?」「ひとつ?ふたつ?」とたずねて
話し始めの音をきちんと聞き取る練習をするチャンスがたくさんあるのです。
また、「かして!」「ちょうだい!」「取ってください」「使ってもいい?」といった
要求の言葉を相手の目を見て使うチャンスでもあります。
でも★くんは、「あれに触ってみたい」という気持ちが起こると、
衝動が抑えられない様子で、
ほんの一瞬、相手の目を見ることも、相手の言葉に耳を傾けることもできない状態になって
いったんおもちゃを取り上げて、こちらの目や声に注意を向けさせようとすると、
もがくように暴れておもちゃを引っぱるか、傷ついて部屋を出ていこうとします。
次回に続きます。