虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

しっかり泣けるように わがままが言えるように  (2歳7カ月の子のレッスン から) 1

2012-03-21 13:29:00 | 0~2歳児のレッスン ベビーの発達

2歳7カ月の★くん。感覚と思考が優れた温和な男の子です。

生まれたばかりの妹ちゃんといっしょにレッスンに来てくれました。

 

工作遊びをするようになってから、「どうして?」「なぜ?」と質問

することが増えてきたそうです。

 

線路にずらりと列車を並べながら、「○○と○○と○○が連結して、長く長くつながっていくんだよ。

電車のうしろの車輪がくるくるってなるから、すべるんだよ」などと、

あれこれ解説してくれます。

 

あんまり自信満々に電車を連結させているものですから、

「いいなぁ。★くん。上手ねぇ。先生も、連結、連結って、電車を並べたいなぁ」と言うと、

★くん、一瞬黙りこくって複雑な表情を浮かべていました。

自分の作品作りを邪魔されるのではないかと不安だったのかもしれません。

 

そこで、「先生も、下に線路を置いてね、電車の連結、連結ってできるかな?」と

たずねなおしました。

すると、しばらくしてから、

「できるよ。先生も、できる」と静かな声で返事が返ってきました。

 

そこでわたしが近くにあった電車2台を線路に乗せたところ、

「それは、ガチャンってできないからっ、連結じゃない。もうちょっと上になってたら、連結」と、

わたしの置いた電車を取りあげて、連結部分の問題を指摘します。

といっても、★くんの電車の連結部分と同じではあるのですが、

何かとイチャモンをつけたい模様です。

「それにしても、★くんにしてはめずらしく自己主張するなぁ。自分に自信がつきはじめたのかな」と感じました。

 

★くんはおとなしくて生真面目な性質で、これまでは感情をあまり表現しないことと、内気過ぎるところが

気にかかっていました。

お母さんに対してもわがままを言ったり、自己主張したり、自分から甘えたりすることが

ほとんどありませんでした。

教室に来始めた当初は、お母さんがおもちゃを片付けるように言うと、まだ遊びたいように見える時にも

即座に片付けだすおりこうさんの反面で、

おもちゃで遊ぶ時間よりも片付けをしている時間の方が長くなってしまいがちなのが

気になっていました。

★くんのお母さんは温和で優しい方で、けっして片付けを無理強いしているわけでは

ありませんでした。

★くんの几帳面過ぎる性質が、こだわりを作っていたようなのです。

 

わがままを言ったり、自己主張したり、甘えたりすることが少ない子の目には、

他人や世界が恐ろしいもののように映っているようです。

★くんも、防衛的な構えからか、周囲に対する好奇心が遮断されて、

無表情のまま自分ひとりの世界に閉じこもって遊ぶ姿が目立っていました。

 

虹色教室に通ってくるうちに、

★くんの遊びは積み木の列車の駅作りから

働く車を工作で作ること、さまざまなもののサイズや色や数について比較していくこと、

高架の線路を作って、街作りをしながら、自分の考えを自由に言葉で表現することやおままごとをすることへと

広がっていきました。

しだいに表情が明るくなり、おしゃべりも達者になってきました。

几帳面な性質は、物を作る時、色をそろえたり、

はさみで小さく小さくものを切り刻むような創造的な活動のなかで活かされるようになり、

几帳面さに邪魔をされて、遊びが狭まるようなことはなくなりました。

 

 次回に続きます。

 

 

 

 

 


学力が気がかりな子たちのグループレッスン 3

2012-03-20 20:29:47 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

◎ちゃんのお母さんは、教える前に◎ちゃんが、自力でどこまで考えることができて、

必要なサポートが何なのか具体的に見極める大切さを

実感なさいました。

いくらなんでも、本人が「わからない」と感じる体験もできないほど

教えてしまっては、できることとできないことの境界が

見えなくなってしまいますから。

◎ちゃんのお母さんの話では、◎ちゃんが通っている支援級の先生や他の大人たちも

1から10まで先取りして◎ちゃんに教え、それを繰り返させて

定着させることだけを大切にしているそうなのです。

 

◎ちゃんはワーキングメモリーが弱い子なのですが、

そうした記憶力の弱さは必ずしも生得的なものだけが原因ではなくて、

自分で覚えておかなくても、ちょっと、ボーッとしていれば、次にすることを

指示してもらえるという習慣によるものもありそうでした。

というのも、◎ちゃんは好きな「ウノ」などの

ゲームは、必要なことをちゃんと覚えていて、けっこう手ごわいという一面があるのです。

 

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話を今回のグループレッスンの子たちに戻しますね。

ひとりの女の子はいったん理解するとかなり高い能力を発揮する上、

字も絵もしっかりしていて、利発な印象を受ける子なのです。

でも、非常に易しい事柄でも、やったことがないことには

想像力や思考力が働きにくいようで、不安に囚われておろおろしてしまう

姿があります。

こうした神経過敏で怖がりな子に対して、

「自分でしなさい」「自分で考えなさい」とつっぱねるのは

酷な気もします。

一方で、自分でどのように対処するのか、どこまで手助けするのが妥当か……という

ことを考えてもみないで、毎回、本人の求めるままにサポートしていると、

教えてもらうまで自分で考えない、想像してみないという習慣もつきがちです。

 

なら、どうすればいいのか……というと、

機械的に指示を与えたり、教える作業に入るのではなくて、

「どんな風に対処するかな?」と自分から助けを求めてくるまでは

一歩引いて待ってみることが大事だと思います。

失敗した時も、「誰でも失敗するし、失敗をおそれずやってみるのは勇気がある証拠!」と

話してきかせるといいかもしれません。


学力が気がかりな子たちのグループレッスン 2

2012-03-20 07:52:50 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

 

このグループの1年生たちは、教える上で少していねいにサポートする必要はあるものの

実際の学力は学年以上のものが身についてきてはいます。

この日も最レベ問題集1年生(奨学社)の総合実力テストをしたところ、

どの子もしっかり解けていました。

この1年で急速に知力が伸びてきたのです。

 

ただ、そのようにペーパー上のテストは良い成績を取れるようになったとはいえ、

それぞれの子が、ひとりひとり別の困り感を抱えてもいて、

今後もていねいなサポートを必要としているのも感じました。

 

特に気をつけているのは、

「教わったことならきちんとできるけれど、

初めて何かに取り組む時に

その年齢の子なら当然わかっているだろうと思われる暗黙の了解がわからなかったり、

直観的にわかるはずのことができなかったりする」という点です。

 

そのため、目新しい課題を前にすると、

今にも泣きだしそうにおろおろする子、何をしなくてはならないかということも

忘れて落ち着かなくなる子、トンデモな推理をしてお友だちに笑われる子、

どこから持ってきたのかわからないような答えを次々並べる子などが続出するのです。

 

「だいたい、こうだろう」と当たりをつけることが苦手なようです。

また、そうした体験の不足も気になります。

 

「だいたい、こうだろう」と当たりをつける体験の不足といえば、

先日もこんな気になる場面に遭遇しました。

 

小学3年生の知的障がいの女の子、◎ちゃんのレッスンでの出来事です。

(◎ちゃんは、今回の記事のグループではありません)

 

わたしは◎ちゃんが、できないことやわからないことにぶつかった時、どのような反応を取るのか

知りたいと思っていました。

 

ちょっと考えてみて、「わからない」と言うのかな?

しばらく考えこんで、「わからない」と言うのかな?

適当な答えでもいいから、「こうかな?」「ああかな?」と言うのかな?

イライラして怒りながら「わからない」と言うのかな?

お母さんに教えてもらおうとするのかな?

教えてもらうとしたら、どこがどんな風にわからないのか指摘できるかな?

ショックを受けるのかな?

けっこう強くて、教えてもらいさえすれば、再チャレンジしようとするのかな?

わたしに「先生、教えて」とたずねてくるのかな?

 

そうした「わからない!」という事態に◎ちゃんがどのように対応するのか

把握しておきたかったのです。

 

ところが、困ったことに、いつまでたっても、◎ちゃんが「わからない」に自分なりに

どう対処するのか把握できないのです。

◎ちゃんが、「わからない」ことに遭遇しないわけではありません。

それこそ、見るもの触れるものわからないことだらけではあるのです。

でも、どうしてわたしが◎ちゃんの対処法を把握できないのかというと、

◎ちゃんが、「わからない」ことを、自分で「わからないな~」と感じとるよりも前に、

◎ちゃんのお母さんが、「~しなさいよ」「~は?」「~して!」と

次にすることを教えてしまうからなのです。

◎ちゃんは、「お母さんの言葉」というスイッチで動いているかのように、

反射的には何かするけれど、自主的に何かする姿はありません。

でも、遊びの場面では、あれこれ思いついて好きなように振舞っています。

 

◎ちゃんのお母さんはとてもていねいに子育てをしておられる方で、

そのおかげで、就学した後も、2や3という数を認識することすら難しくて、

認知の歪みをたくさん持っていた◎ちゃんが、

今では

かけ算やわり算や国語の文章問題まで扱えるようになってきています。

ですから、これまでの子育てでは、◎ちゃんのお母さんの働きかけは

けっして間違っていなかったのだと思います。

 

でも、今、◎ちゃんはずいぶん考える力がついてきていますから、そろそろ、

「自分の頭で考えてみて、

やってみて、

結果を見て、

その良し悪しについて判断を下す」

という体験が必要なのかもしれません。

そうした自分でしてみた体験の積み重ねから、

目新しい課題にチャレンジする時も、「こうじゃないかな?」と当たりをつけてみる

こともできはじめるはずです。

 

そんな話を◎ちゃんのお母さんに伝えて、◎ちゃんに教える言葉を控えていただく約束をしてから、

わたしは◎ちゃんとゲームで遊んだり、勉強したりしました。

 

ゲームは『キティーちゃんのモノポリー』です。

◎ちゃんは、青いカートの絵があって、「もう一かいふる」と書いてあるマスに

止まりました。

わたしは、「◎ちゃんはどうするのかな?」と思いながら

黙って見ていました。

◎ちゃんは、「こうしなさい」と指示をもらえないので、一瞬、ボーッとしたまま過ごしていたのですが、

ひらめいたように、「も、う、いっ、か、い、ふ、る」とマスの字を読んで、

また、ボーッとしていました。が、こちらが何も言わないのに気づくと、

「あぁ、あぁ、サイコロをふることかな?もういっかい?」と言って、

サイコロではなくルーレットで遊んでいたのですが、そこには気にかけず、

ルーレットを回しました。

「◎ちゃん、よく気づいたね。ちゃんと、字を読んで、どういう意味かなぁって考えたら、

どうするかわかるね」と言うと、ニコニコしながら、コマを進めていました。

 

また、算数の学習では、「午前8時から 午前11時までは(  )時間」とある問題で、

何も言わずにいると、「ご、ぜ、ん~」と問いを読んだ後で、指示を待つように

首をかしげていました。

そこでもわたしが、、「◎ちゃんはどうするのかな?」と思いながら

黙って見ていると、◎ちゃんはリラックスした様子で、問題のすぐ上にある

時間の帯を指しながら、「この8?これが8時?」とたずねました。

「そう、よくわかったね。わからない時は、近くにある図を見れば

わかる時があるね。8にしるしをつけておこう」と言うと、

8に丸をして、縦線を入れてから、またボーッとしていました。

が、それでもわたしが黙っていると、思い出したように問題を見て、11にも

しるしを入れました。

それ以上は難しかったようなので、8と11の間に色をつけてあげると、

それだけで了解した様子で、3(時間)と書き込みました。

 

次回に続きます。

 

 

 

 


ユニバーサルジョイント

2012-03-20 07:06:25 | 工作 ワークショップ

続きものの記事は、今日か明日のうちに書きますね。

『子どもの科学』(2004.8)でかんばこうじ氏が『JIZIBO(自在棒)』という

ストローでユニバーサルジョイントを作るアイデアを紹介していました。

 

ユニバーサルジョイントというのは、トラックの底の部分にあるような動力軸の角度が変わっても

回転を伝える仕組みです。

 

1分もあれば作れる簡単な作りですが、

首をかしげたり、うなずいたり、回したりする多彩な人形の動きが

作りだせる面白いしかけです。

 

科学クラブの●くんと作ったところ、簡単にできる上、動きが面白いので、

大喜びしていました。

さっそく自在棒の数を増やして、他の動きも取り入れて工夫していました。

 

わたしが考えたアイデアではないので、ブログ上で紹介できないのは残念です。

 

(教室に来る子で作り方を知りたい子は申し出てください。あっという間に作れますよ!)

 

 

 


自由に創造的に遊ぶことで伸びる知恵 (年中、年長さんのレッスンから) 1

2012-03-19 19:02:06 | 幼児教育の基本

年中、年長さんのレッスンのひとこま。

「お店屋さんごっこをしたい」と言いだして、

椅子に商品を並べています。

値札用のカードを出してあげると、1円、800円、9000円など

好きな値段をつけて貼り付けていました。

それぞれの子が、「こうしよう」「ああしよう」と意見を出しあっては、

ちゃっちゃと遊びを展開していきます。

レジの中をきれいな色のおはじきで整える子がいる一方で、

奥では、レストランのコーナーも作りたい、ということで、椅子を並べて布をかけて

テーブルにしていました。

わたしの提案なしでどんどん思いついて作業をしていく分、「えっ?それがテーブル?」などと

子どもの柔軟すぎる発想にびっくりすることも多々あります。

 

 

とちゅうで、だれがお店屋さんをするのか、だれがお客さんになるのかで

揉め始めました。

「○ちゃん、レジをすればいいじゃん。だって、スカートはいてるし」と★ちゃん。

「いやよ。それにこれはスカートじゃないもん」とキュロットであることを見せる○ちゃん。

しまいに、「先生がおきゃくさんをしてよ」と人気のない役をわたしに振ってきました。

 

そこで、わたしが赤ちゃん人形を抱いてお買いもの。

赤ちゃんがあれこれ欲しがって指をさすものの、「指人形がひとつで9000円!それは高すぎるわ。もっと安いのにしなさい。

これなんかどう?◇ちゃんの弟が作ったタケコプター、1円で売ってるじゃない」と言い聞かせるシーンを演じていたら、

☆ちゃんが9000円の値札に0をひとつ増やした後で、1の札を指して、

「これは1円じゃなくて、1万円ってことなのよ」とニヤニヤしながら言いました。

わたしは、「なんて、高いお店!今日はお買物は我慢して、レストランで飲み物でも飲んで帰りましょう」

と言うと、ブドウジュースを注文しました。

「赤ちゃんがひっくり返してもこぼれないように、ストローをさしてあるふたをつけてくださいね」

と言うと、手真似でふたを取りつけながら給仕してくれました。

 

 

それにしても、子どもたち上手に遊ぶようになってきました。

ゲームも自分たちでセッティングから進行までどんどんこなしていきます。

 

 

そこでこの遊び上手さんたちに、自分たちがセッティングしたおもちゃを使って

小学生の子らがよくつまずく問題を

出題してみることにしました。

 

「このおもちゃとこのおもちゃとこのおもちゃの3つを、★ちゃんが買いました。

このおもちゃとこのおもちゃとこのおもちゃの4つを○ちゃんが買いました。

さて、ふたりともが買ったのはどれでしょう?」

「ふたりとも買わなかったのはどれでしょう?」

という問題です。

 

この問題が難しいのは重複を扱っていることなのです。

「集合」を学ぶ時にも同様の概念の理解力が求められます。

 

子どもたちはすぐさま了解して口々に答えました。

最初はちょっと勘違いをしていた子も、何パターンか考えるうちに

しっかりわかっていました。

 

こうした概念の理解は習い事が少なくて、自由遊びが多く、自発的な行動ができる子たちが

とても得意です。

どうして習い事が少ない子の方が得意なのかというと、

生活のなかに隠れている数学的な概念は、

教えられたことを鵜呑みにする癖がついておらず、

遊びを自由に作りだせる子たちの方が

気づきやすく、失敗から得た知恵がついているからなのです。

ペーパーで学ぶことの多い子は、大人から教わるまで

考えるスイッチを切ってしまう癖がつきがちなのです。

 

自由に創造的に遊ぶこと、

おともだちと協力しあって、話し合ったり、ぶつかり合ったりしながら

遊ぶことの重要性を感じます。

↑ 「陣地取り遊び」で算数の学習もしました。

 

 

 


自閉症の子のコミュニケーションしたい気持ちを育む 3

2012-03-19 09:26:26 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

病院で広汎性発達障がいや自閉症と診断された子たちと

いっしょに過ごしていると、

共通するあるひとつの体験をきっかけに

それまで考えられなかったほどのスピードで、コミュニケーション能力が向上していくのを実感しています。

 

「それまで考えられなかったスピード」というのは、けっしてオーバーな表現ではなく、

年長さんまで同じことばかりしたがって、会話らしいものが成り立ちにくかった子が、

数ヶ月でお友だちと笑いながらスムーズに会話するようになったり、

一生、人と関わっていくのは難しいのじゃないか、と思われた子が、

1年後には、お友だちの集団で仲良く遊べるようになったりするのを

わたしは何度もこの目で確認しているのです。

 

「共通するあるひとつの体験」とは何かというと、

その子が心から面白いと感じている物事に

こちらも同調して、いっしょに心から楽しめたという体験です。

 

ただいっしょにやった、というレベルではダメで、その子の感じ方、喜びの高まっていく速度、

注目しているポイント、喜びの表現法、呼吸の変化、目の使い方からわかる何のどのような動きに惹きつけられているかということ、

その子が感じている躍動感がその子の筋肉の動きとしてどのように表現されているか、

遊んだ後の余韻、何回くらい同じことを繰り返したいのか、

反射的な反応などを正確に捉えた上で、

同じ遊びに取り組みながら、お互いの心と心が、

溶け合うように同調して楽しむ体験をするのです。

 

そうした体験の後で、子どもから積極的にこちらと関わろうとする態度が生まれ、

「遊ぼう!遊ぼう!」と誘うようになり、その遊びを繰り返すなかで、

わたしの他者性を受け入れ、他者であるから面白いということを体験していくと、

柔軟性が増してきます。

 

でも、それは接する大人の側にそうした能力があれば

いきなりできるというものではなく

いっしょに何度も過ごしていく時間の積み重ねの途上で、偶然、遭遇する

そうしたチャンスをのがさないということでもあります。

 

タイミングが大切だと思っています。

 

それは大人がトランポリンを用意して、それで遊びながら気持ちを同調させていくの

などとはちょっと異なります。

もっと個性的で、その子の内部にすでに潜在していて、

他者と共有することで、自分自身の全てが受け入れられたかのような

気持ちに至るような体験でなくてはならないのです。

 

★くんにしても、ピタゴラスイッチ遊びを通じて、わたしと★くんのお互いの気持ちが同調して、

心から楽しむことができるようになった後で、

次に遊ぶ時には、こんな変化がありました。

互いに「あ、うん」の呼吸でわかりあえているように、

「あそこでくるくるちゃんとまわってくれるかな?」「くずれた時にはいっしょに協力しあって直さないと」

「ゴール地点に音の出る仕掛けを置いておくと、ドキドキするね」といったことが、

目と目を合わせるだけで相手の考えていることがわかりあえているような

非言語のコミュニケーションが成り立っていたのです。

 

今回のレッスンは、どれくらいのペースでちぐはぐなコミュニケーションに陥るのか把握しようと思って、

カセットテープで録音していたのに、1時間半という時間の間、(テープが10分テープしかなかったので、

録音自体は30分ほどしかしていません)

継続してスムーズにコミュニケーションが取れていて、

最初のうち、1回だけおふざけで唐突な発言をしたくらいだったのです。

 

ピタゴラスイッチで遊んだ後で、ロリットというゲーム(↑の写真)を

はじめていっしょにやってみることにしました。

 

 

 

 


自閉症の子のコミュニケーションしたい気持ちを育む 2

2012-03-18 18:17:11 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

★くんがわたしと打ち解けて遊びはじめたのは前々回のレッスンからです。

また会話らしきものや非言語のコミュニケーションが続くようになり、

自分の方からわたしと目を合わせよう、いっしょに遊ぼう、という意欲を見せてくれるようになったのも

その日からです。

お母さんに席をはずしてもらうことは、その数回前のレッスンからしていたのですが、

その日までは、お母さんが見えなくなったとたん、

お母さんが近くにいる時に「してはダメ」と言われていることを

一通りやってみるような様子で、同じアニメのせりふをしつこいほど繰り返しながら、グルグル回ったり、

列車のおもちゃをテーブルに置いて、目の高さをその列車とテーブルの隙間に合わせて、

ずっと列車を動かし続けていたりしました。

わたしが何か話しかけると、「○○って言って!」とわたしに言ってほしいせりふを指示する返事が返ってきて

会話に発展することはありませんでした。

 

それが前々回、次のような出来事があって以来、★くんのわたしへの態度は

急速に変わり始めました。

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(過去記事です)

 

★くんと、長いボールコースターを作って遊びました。

この遊びの最中、★くんはこれまで見たことがないほどのはしゃぎっぷりで、

ピンポン玉サイズのボールが筒に入った瞬間、その地点で数回回転することが

うれしくてたまらないようでした。

「見て!ねっ!見てよ。ねこのボールがくるくるってまわるん?トンネルで。

ねぇねぇ、ピタゴラスイッチかくめい~くるくるビーダマ~♪」と途中までは私の方を見て、

途中からはひとりで歌うように言いました。

私も真似て、「ピタゴラスイッチかくめい~くるくるビーダマ」とふしを付けて言うと、

「それ、ぼくが作ったんだよ。名前!」と返ってきました。

「★くんが作ったのね。くるくるまわるもんね。くるくるっとね」と返すと、

「どう?これねぇ、くるくるってまわるんだよ。すごく。今から、ここから転がすからね」と★くんは

満面の笑みを浮かべて、ボールをスタートさせました。

このボールコースターで遊ぶ間中、★くんは私のまなざしの先や表情を見て、

ちゃんとボールを見ているのか、自分と同じように喜んでいるのか確かめるような様子でした。

また、心から打ち解けて、満面の笑みを浮かべていました。

どうも、このボールコースターを作る前の

クーゲルバーンで遊んでいた時から、私が急速に楽しい遊び相手と感じられるように

なったようなのです。

気にいった理由は、

★くんのお母さんが外に席をはずしてくださっていたこともあって、

私はわざと★くんの遊び方に合わせて、荒っぽい口調で「バーン!」とか「ドカーン」とか、「もうっ!★くん、やめてやめて!グラグラ

ドッカーンってこわれちゃうよ。あ~あ、こわれた~ハハハハ~(大爆笑)」と言ったりして、

★くんのはちゃめちゃな遊びっぷりと同調して遊んでいたからのようです。

 

★くんは、おなかがよじれるほど笑い転げてました。

その後★くんは私の一挙一動に好奇心いっぱいのまなざしを向けながら

目と目が合うと、いたずらっぽく笑いかけてきたのです。

その後、長いボールコースターを作ってからは、★くんの方から積極的に私に話かけては、私の返事を聞いて、

それに返事を返す……という会話の中身は同じようなことの繰り返しなのですが、

心と心でずっと長い間、キャッチボールをし続けることができたのです。

こんなに楽しく★くんと遊んだのは初めてでした。

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今回のレッスンでは、★くんはこれまでのレッスンのように、

「わたしと遊ぼうとする意志や遊んで楽しいという様子はあるものの、

コミュニケーションとしてはぎこちなくて一方通行」という態度ではなく、

驚くほど自然に、心を通い合わせてピタゴラスイッチ作りしていました。

 

その様子をたまたまカセットテープに録音していたのですが、

最初のうちに一度だけ、ふざけて大きな声を出しただけで、

その他の時間はずっと自然なコミュニケーションが持続していました。

「○○って言って!」とわたしの言うせりふを先に決めたがる癖もなくなり、

わたしが何か話すたびに、それは面白そうに聞いていて、

わたしの言う通りにやってみたり、指さす方を見たり、返事をしてから、こちらに何か話しかけたりしていました。


幼稚園でひとりで遊ぶのを見るのが辛い

2012-03-18 17:37:43 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

過去記事です。この記事後、家族の関わり方の改善や働きかけで、☆ちゃんは目覚ましく成長し、

物作りが好きな魅力的な女の子に成長していきました。

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もうすぐ5歳になる☆ちゃん。2歳になる弟くんといっしょに
遠方から親子レッスンに来てくれました。

☆ちゃんのお母さんの話によると、知能の遅れもさほど感じられないし、
園の先生にも問題はないと言われるものの、
呼びかけても反応が遅く、
お友だちの輪に入れなかったり、遊びについていけなかったりすることが
気にかかる…ペーパーのプリントはこなせるものの、
この2年ほど、おしゃべりや遊び方に成長が感じられず
何だか心配でなりません…
というお話でした。

☆ちゃんとりんごの木からりんごを摘み取るゲームをしたところ、
ルールを理解する力や
りんごを数えてバケツに入れたりする数学的な力は
きちんと身についていることがわかりました。
しかし、
座り方がぐにゃりとしていて、姿勢を保つのがしんどそうだったことと、
ルーレットを回したり、りんごを木からはずしたりする作業を、
お手本に注目できず独特の奇妙な手つきで繰り返したり、
年齢にしては不器用すぎるところ、
一回、何かするたびに私の顔を無表情のまま何十秒も見つめる癖など
気になることもたくさんありました。

また、耳で聞いたことが、それとわかるまでに
ずいぶん時間がかかるように見えることも気になりました。
動きのひとつひとつが弱々しくて、子どもらしい活気が伝わってきません。

私には☆ちゃんのお母さんの心配が、
ただの思い過ごしや悩みすぎのようには思えませんでした。
「私の接し方がまずいのでしょうか?」とおっしゃるお母さんの育て方が、
☆ちゃんから受ける弱々しくて、不安定な様子の原因だとも思えませんでした。
☆ちゃんは、ただ発達がゆっくりなだけなのでしょうか?
個性なのでしょうか?

これから☆ちゃんにどのように接していけばよいのでしょう?

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5歳の☆ちゃんの話にもどります。
☆ちゃんといっしょにドールハウスで遊んだのですが、
☆ちゃんはまるで自分以外にだれも人がいないかのように
無言のまま、ひとり遊びをしています。
お友だちといっしょのときも、同じような態度なのだそうです。

その遊ぶ姿は、砂場に集まった1歳、2歳の子が、
いっしょに場を共有しながらも
相手のすることに無関心なままひとり遊びを続ける姿に似ています。

私は☆ちゃんにちょっとした人形劇を見せました。
雪だるまの人形に「わーい、ケーキだ。ここに隠しておこう」と
タオルの下にケーキを隠させて、「ちょっとお出かけしてくるね」と雪だるまを
遠くにおきました。

その後、別の人形が、タオルの下のケーキを見つけ、
「わーい、いいもの見つけたよ。そうだ、あっちに隠しておこう」と隠させました。

「帰ってきた雪だるまは、どこにケーキが隠してあると思うと思う?」
と☆ちゃんにたずねてみました。

すると、☆ちゃんは、少しの間、ポカンとして考えていましたが、
「ここ」とタオルの下を指差しました。

私が☆ちゃんがそうしたクイズを通して、理解しているかどうか知りたかったのは、他者のこころの内容をどれくらい理解しているかです。
「こころの理論」という概念の発達具合を調べる
サリーとアンの課題を模した問題をたずねてみたのです。
すると、
☆ちゃんの表情や遊び方、人への接し方を見ていると
すごく意外だったのですが、
☆ちゃんはすんなり正しい答を指差すことができました。

☆ちゃんは広汎性発達障害ではないのでしょうか…?

だとすると☆ちゃんから受ける極端なほどの
コミュニケーション能力の低さはどこからきているのでしょうか?

☆ちゃんのお母さんは、「☆ちゃんが、お友だちの輪に入れずに
ひとりで遊んでいるのを見るのが辛い」と言います。
「小学校に入ったときに、いじめを受けるのではないか?」とも気にしています。

いったいどうすればよいのでしょうか?

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☆ちゃんに絵本の絵を見せて、いろいろと質問してみました。
その都度、☆ちゃんはポカンとしたままぼんやりしていたかと思うと、
じれったくなるほど時間が過ぎてから、
正確な絵の意味を説明してくれました。

広汎性発達障害の子に見られるような認知のゆがみや
細部へのこだわりはみられません。

私はふと、☆ちゃんのコミュニケーション能力の弱さ、
人と関わる能力の低さは、
2次的なものかもしれない…と感じました。
2次的なというのは、
聞く力や、察する速度などにLD(学習障害)などによる
弱さやゆがみがあって、
それが原因で、まるで自閉の傾向を持つ子のような対人関係のなりたたなさが
生じているのではないかと思ったのです。

まだ幼稚園児である☆ちゃんに、学習障害かもしれない…などという
余計な心配は無用なのかもしれません。
しかし、LDが原因で、2次的な問題が起きている子を放っておくと、
知的な問題がないにもかかわらず、
知的障害の子と同じように学校の授業についていけない事態が起こったり、
広汎性発達障害ではないにもかかわらず、
お友だちとうまく関われず、
いじめられることにつながるかもしれないと思ったのです。

 

広汎性発達障害など、自閉症の範疇にある障害によって
お友だちと遊べないのと、
LDなどによって、
2次的にお友だちと遊べないのとでは、
どのような違いがあるのでしょう?

あまりいい例とは言えないのですが、
食欲を感じたり、食べ物をかんだり、消化したりする力が弱くて
食べない子と、

食欲もあるし、食べ物をかめるし、消化する力もある…
でも、手の力が弱くて他人の力を借りなくては食べ物を口にうまく運べない…
そのせいで食べるという経験が減る
そのせいで自分は食べれないと思い込んだり、食べることに消極的になる

という子のちがいに似ていると思います。

また、理解する力が弱い、覚えられない、考える力が弱い…
だから勉強ができない子と

理解する力もあるし、覚えられるし、考える力もある…
しかし、さまざまな音から今自分にとって大切な音を拾う力が弱かったり、
察するのに時間がかかる。だから、集団に向かって、すばやく次々指示を出されると、聞くというインプット段階でつまずくため、
勉強ができなくなる…という子

のちがいと似ていると思います。
学校では、しばしばこの二つの異なるハンディーを持つ子が
同じ扱いを受けています。

広汎性発達障害のある子は、社会性の発達がゆっくりで、
認知のゆがみから細部だけしかとらえていなかったり、一方通行の関係を好んだりします。ですから、
無理に集団に入れようとせずに、ひとり遊びをそっと
見守ってあげたり、
同年代の子と遊ばせようと思い込まず、
その子がいっしょに遊んでいて心地よいと感じる少し年上の子や少し年下の子と
遊ばせてあげる方がよい場合があります。

しかし☆ちゃんのように、
認知の面できちんと発達している場合、
同年代の子の輪にうまく入れていない状況は、
本人の心を深く傷つけていたり、
自分に何か悪い部分があって遊んでもらえないのかもしれない…という
誤った考えを抱かせるかもしれません。

周囲の大人が、☆ちゃんの弱い部分を補ってあげて、
集団のなかで自然に楽しく過せるように
フォローしてあげる必要を強く感じました。

親御さん、幼稚園の先生、学校の先生が
相談しながら☆ちゃんのお友達との関係を1ステップずつ良いものに
変えていく努力がいると思うのです。


自閉症の子のコミュニケーションしたい気持ちを育む 1

2012-03-17 21:46:19 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

娘とコンサートに行ってきました。帰りに「お母さんへのプレゼント」と言って、

小鳥の柄のティーセットを買ってくれました。

自分の身のまわりのものや学校にかかるお金の多くを自分のバイト料でまかなっている娘。

いつも助けてもらっています。

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今日は小学1年生の自閉症の★くんのレッスンでした。

この数年のうちに知的な力は劇的に伸びたものの

コミュニケーションする力には気になることがたくさんありました。

 

自分から一方的に思いついたことを言ったり、

問われたことに短い返事をしたりすることはできるものの、

会話を継続していくのは非常に難しかったのです。

 

会話での返事に、アニメの主人公のセリフをそのまま使うこともよくあって、

話がちぐはぐになっても、

そのままひとりごとのように同じ言葉を繰り返していることが多いのです。

 

お母さんと★くんの会話は、

お母さんが★くんに指示を与えて、★くんがそれにちょっとそぐわない返事をしつつも

「ちゃんと聞いていないのかな……」という様子で、何となくあいまいになって、

そのままコミュニケーションが終了してしまうことが

ほとんどです。

「おしゃべり」自体が成り立っているのを見たことがありませんでした。

 

それでも、1年前までは、自分の世界に没頭したまんま、ひとりごとを言ったり、

ピョンピョン跳ねたりして、コミュニケーションの成り立たなさはかなり深刻なものでしたから、

会話としては成り立っていなくても、それなりに受け答えできる場面も増えた今は、

あまり問題が感じられないものでもありました。

 

でも、「外から見たら、会話をしているように見えるだけでいいのかな?」

 

「★くんが、コミュニケーションしたいという気持ちを持ったり、

コミュニケーションを楽しいと感じられたりできるようにサポートしたい」

とわたしは強く感じるようになりました。

 

★くんは、お母さんが近くにいる時は緊張が強くて、

ひとりごとに近いでたらめな受け答えが多いです。

でも、レッスン時に1時間半ほどお母さんに席をはずしてもらうように

なってから、しだいにリラックスしてわたしとの遊びを楽しむようになってきました。

特に、何度か遊んでいるピタゴラスイッチ風のビー玉コースター作りをする時は、

他の場面では考えられないくらいスムーズに会話が続いていくことがよくあり、

わたしの表情を読みながら笑いかけたり、

いっしょにピッタリ息を合わせて活動を進めていくことができるのです。

 

そこで、今回もお母さんに教室の外でしばらく過ごしていただくことにしました。

そして、そうした遊びの最中にどのくらいの時間スムーズに

コミュニケーションが成り立っているのかお母さんにお伝えするために

カセットテープで会話を録音しておくことにしました。

 

次回に続きます。

 

 

 

 


学力が気がかりな子たちのグループレッスン (プラネタリウム作り)1

2012-03-17 13:08:32 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

今日は普通級に在籍しているけれど、
学力に気がかりなところのある小学1年生の子たちのレッスンです。

教室に着くなり、「工作がしたい!」と言い合っていた子どもたち。何が作りたいのかたずねると、

スライムとか、ドールハウスなんて意見が出ていましたが、しまいに「プラネタリウム」で

意見がまとまりました。

 

どんな風に作りたいのかの話しあいで、自分の誕生日の星座を作って映したいと★ちゃんが言い、

他の子らもそれに賛成しました。

星の図鑑を見ながら、紙コップに星座になるように穴をあけて、

セロファンを貼りました。

 

冬の大三角です。

 

プラネタリウムは、部屋を暗くして、テーブルの裏で。

はと座とうさぎ座を作ったそうです。

 

みんなプラネタリウムが成功してすっかりうれしくなった様子で、

次はそれぞれ自分の好きなものを作りたいと言いました。

☆ちゃんは自動販売機。◆ちゃんは、腕が飛び出すしかけのロボット。★ちゃんは電子レンジ。●ちゃんはお金入れを作りました。

 

腕が飛び出すしかけのロボットは、「バネがないから飛びださない」と言うので、

モールや針金でバネを作る方法を教えて作ったのですが、

即席で作ったばねの威力はイマイチでした~。(ロボットというより、ロボットの腕部分だけを製作していました)

◆ちゃんにするともっとポーンと飛び出すくらいにしたかったようなのです。

そこで、輪ゴムの力で飛ぶようにすると、しっかり飛び出すようになって

大喜びしていました。

 

どの子も物作りを通して、自分の伝えたいことを言葉で表現したり、目標を定めて最後まで物事に取り組む

ことが上手になってきました。

 

学習の様子は次回に書きますね。