虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

世界の建物 と 3歳児の知恵遊び、 年長さんと算数

2013-01-27 17:52:38 | 算数

  

年長さんの★ちゃん、☆ちゃんと 3歳の弟の●くんのレッスンの様子です。

 

3Dパズルの世界の建物をあちこちに飾って、街を作って遊んでいました。

●くんは消防隊員になって教室に飾ってあった建物に救出に出掛けていました。

★ちゃんと☆ちゃんが協力して作っていたキラキラ屋さん。

 

恐竜の背中にたるを乗せて、お姉ちゃんのところに

宝物を届けるのだそうです。

右の写真は、ライオンと泥棒さんが戦って、泥棒さんが、「もう悪いことしません」

と謝っているところです。

ブロックのプレゼントのパーツ。

ちゃんとブロックにはまるので、開けるとブロックの突起が見えます。

それを見た●くん、「あっ、マジックショーみたいだね。ぼく、マジックショーを見に行ったことがあるんだよ」

と言っていました。

 

ピントが合っていない写真ばかりだったので、工作の様子をきちんと紹介できないのですが、

★ちゃんと☆ちゃんはお家を作り、●くんはストローで吹きあげるエレベーターを作っていました。

 

お母さんの話によると、☆ちゃんのお家での工作が、どんどん凝ったものに変化しているそうです。

掃除機を作るにしても、ゴミを捨てる部分をどのように作るのか、といったところまで

工夫を凝らしたものになってきたのだとか。

今回のレッスンで、いろいろなアイデアを盛り込んで工作を続け、

「後5分しか時間がない」という間にも、「お家と机といすが作りたい」と言って

新たな作品を大慌てで作っていました。

●くんとハムスターを使って「間違い探し」をしているところです。

パターンを作って並べていく問題や、簡単な算数遊びも楽しみました。

 

★ちゃん、☆ちゃんの算数タイム。

100以上の数の計算をしたり、文章題を絵を描きながら解いたりしました。


将来のビジネスのビジョン? と 円の面積と円の角度

2013-01-27 17:10:52 | 初めてお越しの方

 

小学3年生の女の子の算数クラブの様子です。

これまでも学校で工作グッズを流行らせて

教室内に会社まで設立していた★ちゃん。

 

今回のレッスン中、偶然できあがったノミ人形に、

「これはイケル!」とビビビツと来た模様。

 

「学校で売るわ」と言って、たくさんノミ人形を作った後で、学校内で生産するために……と材料を

袋に詰めていました。何でも、自分で造幣局も兼ねているので、

売れることまちがいなし、なのだそう。

それが売れなかった時のために、貝細工の「なめくじ」人形(赤い箱の中)も作成。

右の人形や宝箱は今回の女の子たちの作品です。

この「ノミ」や「なめくじ」をかわいいと思うセンス……「なめこ図鑑」や「こびと図鑑」の流行にも

通じるブサかわいい、キモかわいい?の世界。

 

算数タイムには、円の面積の問題を基礎から始めて

入試に出た応用問題までたくさん解きました。

面積の問題は、折り紙パズルのような要領で解けるためか、

どの子もとても面白かったようです。

 

 

 

全員が頭をひねったのは、角度の応用問題。

二等辺三角形を見つけ出したり、作ったりすることで、

角度を求めていくコツが身に着きました。


「国立民族学博物館に行きたい!」 (遊びが知的な好奇心につながっていく時)

2013-01-26 13:16:46 | 通常レッスン

(↑ 蚊帳の中)

 

年長さんの女の子たちのレッスンです。

今回のレッスンでどんなことがしたいのか話あう場面で、★ちゃんは「小さなビルやお家をたくさん作って

街を作りたい」と言い、☆ちゃんは「かまくらが作りたい。自分たちも入れるやつ!」と言いました。

それぞれ別のものを作るか、どちらか一方の意見を採用して協力して作るのか

さらに話あっている最中に、少し遅れて●ちゃんが現れました。

 

「●ちゃん、今、たくさん建物を作って街を作るのか、自分たちが入れるようなかまくらを

作るのか話しあっていたところなのよ」と説明すると、

●ちゃんは、顔を輝かせて、「かまくら!かまくらがいいよ。かまくら作ろうよ!」

と言いました。

 

☆ちゃんと●ちゃんはかまくら作りをふたりですることに決めて、材料選びを始めました。

このふたり……「自分たちが入るサイズで!」と言いながら、デュプロブロックやハンカチサイズの布で作ろうしていました。

それでは、いつになったら完成するやら……。

 

そこで、教室で小さなパーテーをする時などに使用している折りたたみ式の『蚊帳』を

出してあげることにしました。

「1,2の3!」とみんなで蚊帳を広げるうちに、★ちゃんもかまくら作りに参加したくなったようでした。

「ねぇねぇ、かまくらの中に昔のものとか置いて、飾り付けしよ。」「椅子とか置いて、部屋みたいにしたいけど、

あんまり置いたらだめだよね。家具がいっぱいあったら、普通のお家みたいになって

かまくらじゃなくなっちゃうから。うさぎのベッドだけ作ることにしよ。」

「布とかがいいよ。白いブロックで作るのはいいと思う。みかんはどれにする?」

そんな話あいが続いていたので、

国立民族学博物館でさまざまな国のお家の中の様子を展示してあることや、

馬車の中で暮らしている人の様子やモンゴルのテントのようなお家の中も見ることができる

といった話をすると、

「行きたい!そこに行ってみたい!」「よその国の人の暮らし、見てみたい。どんなたんすかとか、寝るとことか、

食べ物作るとことか」「そこに今日行けるの?」と

大騒ぎ。

 

このグループの子たちは(一人お休みの子がいましたが)年長さんになった頃から

物作りやごっこ遊びの場面でも、「忍者の暮らしをよりくわしく再現してみたい」「外国の人のマナーとか洋服の着方を

その通りに真似したい」「宇宙ロケットの中の様子を食事とか、宇宙の実験とかもそっくりにしてごっこ遊びがしたい」

といった、図鑑やお出かけ先で仕入れた知識を取り入れて遊ぶことが増えました。

そろって凝り性さんです。

 

ちょうど本人たちの中から関心が高まっているいい機会なので、

この春休みに国立民族学博物館に遠足に行くことにしました。

 

 

「かまくらの中に飾る人形を作って、雪の世界を作りたい」という意見が出たので、いっしょに紙コップで人形作りを

することにしました。

基本の形を教えると、それぞれ自己流に工夫を凝らして、面白い犬の人形たちを作っていました。

 

 

犬の耳をストローでカールさせています。

犬をたくさん作った後で、「犬のお家が作りたい」と言ってから、

「そうだ、犬のかまくら作りたい」と言いなおして、こんな作品を作っていました。

 

かまくら作りで切り取った部分が「そり」に似ていることに

気付いて、そり作りをしています。

 

面白いのは、お友だちのアイデアを真似る子が,

必ず一工夫、自分の独創的なアイデアを

付け足すようにしているところです。

写真はそりのひも部分を二重にして、手でつかむところがよりリアルなものになるようにしているところです。

 

そりから身体が飛び出さないように、手前部分に飛び出し防止のでっぱりをつけたり、

ひもをモールに変えて、おしゃれにしたりしている子がいました。

 

お兄ちゃんがいる◎ちゃんは、剣を持った勇者犬、眼鏡をかけた博士犬などを作っていました。

 

お家も、ひとりの子がかまくらを作ると、もうひとりは同じ材料で、エスキモーの氷の家を作り、

もうひとりの子は白い土壁の芸術的な曲線で扉をくりぬいている面白い家にしていました。

わたしが教えたことをしっかり学びつつ、お友だちのアイデアを取り入れつつ、

協調して遊びつつ、必ず自分らしさを表現しようとする

子どもたちの姿をうれしく感じました。

氷の池や雪の世界を走る列車を作っています。

雪で列車が走れなくなった時は、そりで移動するそうです。

草原に雪が残っているところなのだそうです。

 

算数は、(年中さんなのですが)語彙量と想像力が豊かな子たちなので、

最レベ1年生の文章題をしました。

うっかりミスもしますが、自分で読んで絵を描いて解く力があります。

こんな問題です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

りんご2かごと 3こ かいました。 1かごは6こ 入っていました。

いえに かえってから かぞく5人が ひとり1こずつ たべました。

りんごは なんこ のこっていますか。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さちよさんとめぐみさんとみどりさんの 3人は、おかしを4こずつ もっていましたが、

さちよさんは 2こ、めぐみさんは 1こ、みどりさんは 3こ たべました。

① のこっているおかしは、めぐみさんと みどりさんとでは どちらが どれだけ すくないですか。

② 3人の のこっている おかしをあわせると ぜんぶでなんこに なりますか。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

自由に絵を描いて考えてみた

後から、お互いの絵を見ながら、

どんな描き方だとわかりやすかったのか、

「うっかりポイントはどこなのか」といった気付きをうながしました。

 

 

 


発達障害のある子のお友だちとの関係をサポート 1

2013-01-25 22:23:15 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

発達障害の診断を受けている3歳5ヶ月の★くんと未診断ながら発達上の凹凸が目立つ☆くんの

レッスンの様子です。

 

感情表現が乏しくて、めったに笑うことがない★くん。

お友だちが親しげに近づいてきても、口をへの字に曲げて、

知らんふりするか、険しい口調でぶつぶつ文句を言います。

★くんにとってお友だちの存在は目ざわりでわずらわしいもので

しかないようでした。

そこで何とか★くんに「お友だちと仲良くできた」「こんなことあんなことをいっしょにやって面白かった」

という体験をさせてあげたいと思い、親御さんたちに1時間半ほど席をはずしていただくことにしました。

(ふたりともあっさりしすぎているほど簡単にお母さんと別れることができました)

最初のうち、「ぼくはバスが好きなんだ。ぼくは、バスが……」と言いながら、

バスの扉の開閉をくり返していた★くん。

「バスのドアが閉まらないよ」と

ぶつぶつ……。

このバスのおもちゃは、扉の閉まり具合が甘くて、ピタッと気持ちよく閉じてくれないのです。

 

「本当だ。閉まらない、閉まらない、閉まらないね」と言いながら、

わたしが★くんを真似て指で扉を閉じようとしていると、

★くんはこちらの手元をジィーと見つめていました。

 

「このバスのドアはピッタリ閉まらないのよ。だってそういうおもちゃだから。

ちゃんとドアが閉まらないバスなのよ」

 

と残念そうにため息をつきながら言い足すと、

ほんの一瞬、★くんの唇の先にかすかに笑いを浮かべました。

それから、バスの扉を触るのをやめて、ブロックの車体を連結させ始めました。

 

それを見た☆くんが親しげに近づいてきて、「これでいっしょに遊ぶ?これで遊ぶ?」と

たずねながら、★くんが連結させていた車体に手を伸ばしました。

 

☆くんは人と関わるのが大好きな温和な優しい子です。

ただ自分の物と他の子の遊んでいる物の区別がつかないようなところがあるのです。

またその場の状況を理解したり、相手の表情を読んだりすることが苦手です。

ですから、自分のおもちゃを取り上げられかけて、「イヤッ!」と言いながら威嚇している★くんの

様子に気づいていませんでした。

 

そこで☆くんにこんな声をかけました。

「☆くん。☆くんは、★くんが連結した車でいっしょに遊びたいのよね。

でも、★くんは、イヤッて言ってるよ。★くんのお顔を見てみて。イヤだな、ぼくが作った車だよ。プンプンって

怒っている顔をしているよ。」と言いました。

☆くんは、★くんの顔を見て、ニコニコしながら、「いっしょに、いっしょに車しよう」ともう一度言ってから、

少し気まずそうにもじもじして、宙に向かって、「お腹すいた、お菓子食べたいよ。お腹すいたよ」

と心細そうな声をあげました。

☆くんはお母さんと別れる前から「お腹すいた、お菓子食べたいよ」と繰り返していたので、

☆くんのお母さんからビスケットを数枚預かっていました。そして★くんのお母さんには、

ビスケットを食べても大丈夫か確認を取っていました。

 

そこで、「ビスケットを持ってピクニックに行く子はいますか?」

と声をかけて、

「ウェットティッシュで手を拭いて、包む布にティッシュを敷いて、その中にビスケットをくるむ」という一連の作業を

するようにふたりをうながしました。☆くんは自分から進んで、自分の分と★くんの分のビスケットを

ティッシュの上に置いて、上機嫌です。

 

くるんだお菓子を手に、「さあ、ピクニックに行きましょう」と教室内をぐるっと回って、

椅子をお山だということにして上りました。

★くんはしぶしぶ参加していましたが、ちゃんと山に登って降りて、野原に着いたらお菓子をほうばりました。

☆くんは、ニコニコニコニコ、こんなに楽しいことはない、という様子ですが、★くんは

終始、仏頂面です。

でもゆっくりながら☆くんの真似をする姿から、嫌なのに参加しているわけではなさそうでした。

 

わたしが片手を挙げて、「クイズですよ。クイズ。今日、お菓子を持ってきた子だれでしょう?」

とたずねると、☆くんは飛び上がらんばかりの喜びようで、手を挙げて、「☆くん、☆くんだよ」と言いました。

次に、「もうひとつクイズ。ペットボトルのお茶を持ってきたのは誰でしょう?」とたずねると、

また☆くんが手を挙げて、「★くん、★くんだよ」と答えました。

★くんも小さな声で、「★くん」と答えていました。

今度は、「それなら、バスが好きな子誰でしょう?」とたずねてみると、ふいに★くんの顔にパッと笑顔が浮かんで、

「★くん!」という答えが返ってきました。

 

 

次回に続きます。

 

 


『天才脳の育て方』 林成之先生の5つのメソッド 6

2013-01-25 19:21:35 | 初めてお越しの方

 

 

『天才脳の育て方』 林成之先生の5つのメソッド 5

の続きです。(↑は、あわてて書いたため、わかりにくい書き方になっていたため少し書きなおしました。)

 

「他人の脳に入る力」というのは、幼児期の学習だけ見ていると、

勉強とはあまり関係がないように思われるかもしれません。

 

確かに幼児用ワークや、

幼児から始めて、先の学年の学習までどんどん進めていけるようになっている系統学習では、

「他人の脳に入る力」を必要とする問題はまずありません。

 

でもそれは学習のほんの一部分だけを扱っているからにすぎないのです。

 

実際には、出題者の意図を読み取ったり、「誰かに書かれた文章」という他人の脳内の創作物を

理解したりする力は、学習する上で必須の力ですから。

 

「他人の脳に入る力」って、単にお友だちと仲良したり、周囲に同調していく能力とは

異なるはずです。

相手の気持ちになったり、相手の考えていることを理解しようと努めることで

伸びていく力ですよね。

子どもが幼いうちは、親御さんが子どもや子どものお友だちの気持ちに寄り添い、

その言葉にしっかり耳を傾けて、咀嚼しようとすることが大事なのかもしれません。

 

林成之先生はこれまで紹介した5つのメソッドの他に

「脳がよろこぶ3つの習慣」も挙げておられます。

 

①「他人」や「別の意見」を認める

人の良い点を見つけられる子に

 

②誰かのせいにしない

無理、ダメの原因を探さない

 

③マニュアルに頼らず自分で考える

効率損得は、脳の学習にそぐわない

 

効率や損得、リスクを考えると、マニュアル通りの思考や行動になりがち、

しかしそれでは自分が本当にしたいことにならないので、A10神経がレッテルをはりません。自己報酬神経群も

機能しません。本当に脳を活性化させるには、マニュアルなどに頼らず、自分自身が考え抜くことが大事なのです。


  (PHPののびのび子育て 3月増刊号)

 

 

 

 

 

 


いっしょにする活動内容を豊かに。(自閉症スペクトラムの子たちのレッスンから) 3

2013-01-25 14:15:42 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

タイトルの自閉症スペクトラムの子たちのレッスンとは別の話題になって申し訳ありません。

 

★くん(未熟児で生まれた後遺症から言葉を話すことができない5歳の男の子)は

言葉をしゃべることはできないものの、他の子のすることに

興味津津で、いつも背後から覗きこむようにしてよく観察しています。

 

 

からくりおもちゃの動かし方や道具の使い方などは、流れを記憶していて、

その通りに再現できます。

 

一見、さまざまなことを教えやすいように見える★くんです。

しかし、これまで家庭や療育の場での学びは、

停滞していたようです。

 

その一番の理由は、身体の機能の面で声を出すのが困難なため

言葉がしゃべれないことにあるようです。

発声の困難さから一語文もままならない★くんですが、

遊びや生活面での知力を思うと、二語文、三語文のやりとりをする能力は十分ありそうでした。

 

音声言語だけに頼るのをいったんあきらめて、

絵カードやベビーサインのような身体を使った言葉や

文字を使って、二語文や三語文のやりとりができるようになることを目指していくのが

大事なんじゃないか、と思いました。

 

前回のレッスンでそうした話し合いをしてから、

その準備のため、★くんのお母さんは片面が大きなひらがなの文字、片面が★くんの好きな乗り物の写真が

載っている絵本を購入して、読んであげているそうです。

 

すると、なかなかいい手ごたえがあったようです。人と同じものを同時に見て、感情を分かち合うことができる子ですから、

今後も読み聞かせの世界を広げていくことは大切そうです。

 

レッスンでも、★くん、●くん、☆ちゃんの3人で教室の理科の箱(今回は本物そっくりの昆虫のおもちゃや魚のおもちゃなどが

入っているものです)を開けて、「どっちが魚でょう?」とあてっこしたり、

布をかけて、上から触れて中身が何か推測するような遊びをしていた時には、

★くんが一番集中してそれに取り組めていました。

こちらが見て欲しいと思うものに、注意を向けることができるからです。

けれどもその一方で、魚と虫を並べて、魚はどちらなのか選べないくらい

物の名前があいまいなこともわかりました。

 

2,3歳児向けの写真や絵の図鑑を見ながら、「りんごはどれかな?」「猫はどこかな?」

といった指さし遊びや、言葉を確認しあって物に触れる時間なのが大切なのかもしれません。

また、「どっち」とか「どこ」とか「だれ」という質問も

あいまいなまま理解しているようでした。

言葉を発声しなくても、指をさすだけでやりとりできるコミュニュケーションの中で

そうした言葉への理解をうながすといいですよね。

 

★くんの聞き言葉の理解があいまいなのは、

★くんが「間違い」に鈍感なこと、

つまり「間違い」を「間違い」として意識することが

ほとんどないように見えることにも原因があるのかもしれません。

 

たとえば、「魚はどっち?」の質問に、

かぶとむしの人形に手を伸ばした後で、「こっちこっち」とお母さんが魚を指すと、

かぶとむしを放り出して、魚を手にはするのだけれど、

その姿からは正誤がわかったのではなく、

ただお母さんの誘導のままに動いているという感じがあるのです。

 

ですから、そうした時に、「かぶとむし」を触ってみて、「ブッブーちがうね。バツ」と手で大きなバツを作り、

「魚はこっちだね」と魚に触れて、手で丸を作ったり、パチパチ拍手したりして

はっきりわかるように提示することや、

一度わかりかけたものは、何度も何度も、

「ええと……こっちは、さかなかな……ちがうちがうバツだね。こっちだね~」

と正しい、正しくないを判断する遊びを何度も繰り返すようにするのも大事なのでしょう。

 

 

 

 

 

 


いっしょにする活動内容を豊かに。(自閉症スペクトラムの子たちのレッスンから) 2

2013-01-24 21:16:07 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

このグループのうち●くんは、

自閉症等のハンディーキャップがある子たちのユースホステルでのレッスン

に参加してくれていました。(その記事では、◆くんとしています)

 

この思い出は●くんにとって印象的な楽しいものだったらしく、お泊りの日の後も

車に乗り込んで、高いビルに行くという設定で、ブロックや乗り物のおもちゃを使って

何度か遊んでいたそうです。

今回のレッスンでも、お人形を手にして「車に乗せてください」と言うと、ちゃんと車で迎えにきて、乗せてくれました。

 

またドールハウスのお風呂に人形を入れて、「チャプチャプ」言いながら遊んでいたので、

「お風呂に入れて、お風呂に入れて」と人形を差し出すと、

それも風呂に入れるふりをしてから、自分の人形は1階から階段を上がってくる真似をして

風呂に入れました。

それからわたしの顔を見上げて、ちょっとぼんやりした表情ではありましたが、ニコッとしました。

 

そんな●くんの姿を見て、

●くんはこちらが1メートルほど離れている時と、●くんの行動を阻止するような

声かけをしていない時には、自発的に目を合わせようとすることがあるように感じました。

 

●くんは何か触りたいものがある時には、お母さんに声をかけられても

知らんふりして、まるで周囲にいる人を振り払うかのような突進ぶりで

物を抱え込むところがあります。

欲しがるものを渡す時に、ワンテンポ間を持たせて、こちらの目を見て、「ちょうだい」と

要求することを教えようにも、

人の視線を回避するように斜め下を見詰めたまま、力づくで

それを奪い取っていきます。

 

遊びの最中も、周囲とのコミュニュケーションを絶って、

自分の世界に没頭していたり、

声をかけられると、それを避けるように離れた場所でひとり遊びを始めることがよくあります。

 

「あれしたい、これしたい」という衝動が先走っている時や、

他の子におもちゃを取られないか、

周囲の大人からあれこれ指示を出されるのじゃないか、と身構えているように見える間、

●くんのコミュニュケーション能力が極端に低くて、人の目も決して見ようとはしません。

 

けれども、時折、頬が少し緩んだようなぼんやりした表情をしている時に、すかさず声をかけると、

こちらの目を見て、笑顔を浮かべて、きちんとしたフィードバックが返ってくることが

以前のレッスンでも、今回のレッスンでも何度かありました。

 

●くんのお母さんも幼稚園の先生も、●くんはちょっとずつではあるけれど、

みんなと笑いながら座っている時があるし、目を合わせて「バイバイ」を言える時もある、

少しずつコミュニュケーション能力が向上している、と感じているようです。

 

その一方で、できていたことがだんだんできなくなっていたり、

以前にも増して自分の世界に閉じこもるような姿も見られると気にかけています。

 

●くんのお母さんにとって、そうした●くんの行動は予測不可能で、

コミュニュケーション能力を向上させるためにどの場面でどのように働きかけたらいいのか

つかみかねるようでした。

 

わたしは●くんが呼びかけても全く聞こえていないように振舞って、

視線をあらぬ方向に固定していて

遊びに没頭するのには、それなりの理由があるように感じました。

 

必ず身体を緊張させて、周囲に対して強い警戒心を表わしていたからです。

 

自分が遊んでいる物をお友だちに取られる、お友だちの物を奪おうとしたため、それをお母さんに取り上げられる、

「ごめんなさいは?」「○ちゃんと目を見て」といった指示をされるなど、

●くんの警戒心を刺激する要素はいろいろ考えられます。

 

●くんが1メートルほど離れた人には笑顔を向けることがあるのを見ると、

人との距離が●くんを緊張させているのかもしれないし、

目の焦点を合わせるのにちょうどいい距離というのがあるのかもしれないし、

声の調子や言葉かけに嫌なものと、嫌ではないものがあるのかもしれない……とも考えられました。

 

そうしたことを検証しながら、

●くんを緊張させる原因となっているものを取り除いたり、減らしたりする工夫がいるのかも

しれない、と思いました。

 

また、「うまく目があった時」というのを、

よく分析するようにして、できるだけ何度もそうした良い状況が再現できるように

環境を設定する必要があるのかもしれません。

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 


赤ちゃんの頃から……学習欲と理解力のある子を育てる方法

2013-01-24 18:23:17 | 幼児教育の基本

過去記事を紹介します。

虹色教室では2時間の間に、工作や積み木を使った創作活動、理科実験、
暗算や九九といった積み上げていく学習、プリントによる思考力のテスト、それぞれの個の興味にあわせた活動をしています。

創作活動や理科実験を
全力で取り組めるいきいきしたものにしようと思ったら、
積み上げていく学習は、意欲的に取り組んで
短時間に集中してパッパッと理解していく力が必要です。

子どもだけのグループで学びだした子たちは、
お家では甘えん坊の子も
自立した態度できちんと学んでくれます。

私が子どもたちを見ていると、
子どもはどの子も(たとえ知的障害がある子でも)
成長するにつれてそうした態度を身につけていくな、と感じています。

そうした子どもの学習欲や理解力を高めるためには、
赤ちゃんのころから親の接し方がとても大切です。

親子レッスンに幼い子を連れていらっしゃる方々が
子どもに何か教えているとき、

子どもが少しうんざりするくらい長い説明をくわえようとしたり、

まだ完全に理解にいたっていないときに、
確認テストのような質問をしたり、

子どもがじっくり同じことを繰り返したいときに、
次のステップをもとめたり、

子どもが自分で考える間を与えずに
どんどん教えたり、

子どもが飽きてももう少し……とがんばらせたり、

子ども自身にやりたいことを選ばせなかったり、

子どもが自分の学ぶ力に自信を抱くことができるような言葉かけをしていなかったりします。

そうしたことを数回でも続けていると、子どもはたちまち
勉強は面白くないもの、自分は上手にできない子……
ということを学びます。

私が、子どもに何かを教える場合、子どもがいきいきする楽しい活動の中で、
少しだけ教えて、
もっと教えて欲しいという気持ちが強いうちに
さっさとやめます。
そして、子どもがどんなにしっかりしていて
学ぶことが大好きで理解力がある子か、私がとても
うれしく感動していることを子どもに伝えます。

つまり勉強するときはいつでも、
大人が子どもから満足を得るよりも
子どもが大人の働きかけや言葉かけから満足を得る量の方が
たくさんになるように調整しているのです。

赤ちゃんにとっての学習は、
はいまわって、触って、口に入れて、物に手を使って働きかけること
です。
赤ちゃんがしたがることが、十分できるように手助けしてあげます。
もし大人が見本となることを見せてあげたい場合は、
だまってポイントに気づくように見せて、
赤ちゃんに興味が生まれるまでは無理強いしません。

そうした赤ちゃんの時期から、大人が、

勉強するときはいつでも、
大人が子どもから満足を得るよりも
子どもが大人の働きかけや言葉かけから満足を得る量の方が
たくさんになるように調整する

ように気をつけていたら、子どもはその子のペースで
学ぶことが大好きな子に成長していきます。

幼い子に今すぐ何かできるように求めることは
ばかばかしいことです。
子どもって、本当に個性的で、その子としての
魅力にあふれているからです。

昨日の小2の☆のレッスンでこんな気づきがありました。
この子は競争がきらいで、コツコツ練習するのも嫌い、学校の宿題はぐずぐず……という子です。
でも星が好きで世界の地理が好きで、算数の難問が好きで、恐竜が好きで、読書が好きで、音楽が好きで、スポーツが好きで、機械の組み立てが好きです。
☆くんのお母さんは、☆くんが好きなことは十分取り組める環境を用意していますが、☆くんが嫌いなことは、責めずに叱らずに、そっとフォローしてきました。

昨日、☆くんは教室で購入した『テルミン』という楽器をはじめて見て、
喜んで弾きはじめました。
熱心にいろいろやってみたあとで、
大人の科学の本のテルミンの弾き方の記事を熱心に
読みながら、再度弾いていました。
それから、テルミンが生まれた歴史や、テルミンの構造の記事を
熱心に読んでいました。
また、算数の文章題がとてもよくできていたので
「すばやくたくさんの量がよくできたね」と褒めると、
「算数よりもさ、宇宙のことがしたいな」と言っていました。
(それが教室ではすばやく学習をやりとげる理由です)
それで、海王星の周期が描ける道具を作りました。

競争がきらいで、コツコツ練習するのも嫌い、学校の宿題はぐずぐず……という☆くんの性質は、泣いても嫌がっても、
叱って矯正して
みんなと同じようにできるようにできたのかもしれません。
でも、そうして他の子と同じように育てようとして、
☆くんらしい探究心や読書欲が育まれたか……というと怪しいのです。
それより、☆くんらしさがきらめくようになると、
ぐずぐずしてコツコツしなくちゃならない作業を怠ける癖は、
自然と克服されてきました。
小学校の他の子たちよりちょっと時間がかかっているだけなのです。


いっしょにする活動内容を豊かに。(自閉症スペクトラムの子たちのレッスンから)

2013-01-24 13:20:09 | 教育論 読者の方からのQ&A

自閉症の診断を受けている2歳後半の☆ちゃんと診断はまだ受けていないものの

目が合わず、他人との関わり方にさまざまな問題を持っている3歳前半の●くん、

未熟児で生まれた後遺症から言葉を話すことができない5歳の★くん(自閉症ではありません)のレッスンがありました。

工作、ゲーム、理科の箱を開けてするクイズ、推理遊び、絵カード、人形ごっこなど

いろいろな遊びを楽しみました。

写真は色の玉でデザインを作っていくおもちゃですが、

ボタンを押して、玉を下に落として遊んでいます。

こうした遊びをする時に、ただ「できるようになる」ことではなくて、

「1,2、3の時ボタンを落としてね。黄色いの、黄色いの。見ていてね。

ちゃんと落ちるか見ていてね」といったわかりやすい言葉をかけて、

こちらの声かけと息を合わせて活動するように導いています。

 

また、「黄色い玉」だとわかるようになったら、次には、

「緑……じゃないね。ブッブー」「青……違う違う。ブッブーバツバツ」といった

正しさと間違いに敏感になるようなおしゃべりも加えています。

そうして、「それは違うよ。黄色だよ」と正しい答えを

本人が言いたくなるように導きます。

お友だちといっしょに椅子に座って活動するのは

難しい子らですが、

子どもたちの興味を引き出す素材を用意すると、かなり長い時間、集中して

活動に取り組むことができていました。

今回の工作では、ストローに発泡スチロールの入れてエレベーターにしたり、

吹くと玉が回転するおもちゃを作ったりしました。

また磁石で動く虫作りもしました。

 

自閉症スペクトラムの子と工作を楽しむには、一番最初にどんな活動持ってくるか、が大事だと思っています。

最初にその子の興味を強く引く活動で、

なおかつ、ある程度、視野が狭まって集中を起こさせるようなことから始めて、

楽しい気持ちが高まるにつれて、やる内容の幅を広げていくのです。

また素材選びや、その子のこだわりにあわせる工夫も必要です。

 

 

ニコニコさんとプンプンさんを見分けてベルを押すゲームです。

人の表情を見分けることに注意が向くようになっていきます。


『天才脳の育て方』 林成之先生の5つのメソッド 5

2013-01-24 09:07:09 | 教育論 読者の方からのQ&A

林成之先生の『天才脳の育て方』 の5つのメソッドの続きです。

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⑤ 他人の脳に入る力

 

「失敗するかも」といった不信やマイナス思考のないポジティブな精神状態を

作るためには、他人が何を考えているのか、相手の脳に入るトレーニングが大事です。

もともと人間は共同作業が好き。そして、「人のために貢献する」本能も

持ち合わせています。

だから、「誰かが失敗したら、自分が取り返す」と思えるのです。


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「本当の子育て」と「育成シュミレーションゲーム」は

似ているようで、根本的な質の違いがあります。

 

あたり前のこととはいえ……そのふたつを

イメージの世界では同じように錯覚してしまいがちです。

 

本物の子どもは、「他人の脳に入る力」というのを潜在的に持っているし、獲得していけます。

 

でも育成シュミレーションゲーム内の子どもには

天才的な頭脳を育成したり、多彩な技能をどこまでもインプット

していくことはできるけれど、

永遠に「他人の脳に入る力」を得ることはできません。

 

 

子どもが幼いころは、早い時期からいろいろ練習させて、

子どもが持っている能力のレベルを少しでも高めていくことが

親の役目と錯覚しがちです。

 

そうした考えは、もし本当の子育てが育成シュミレーションゲームと

そっくり同じものだとしたら一理あるし、上手くいくのかもしれません。

 

でも、子どもがロボットでもゲーム内のキャラクターでもなく「人間」の子である限り、

ちょっと勝手が違ってきますよね。

 

もし、親が、個人的な能力を鍛え上げていくことにばかり一生懸命になれば、

「他人の脳に入ることができる」という人間だからこそ持っている力の発達を

妨害することになるかもしれない、という意外な落とし穴があるからです。

 

林成之先生は脳が目覚めるポイントとして、こんなこともおっしゃっています。


相手の気持ちになるトレーニングが

思いもよらない成果を導きます。

誰かの失敗を取り戻したい」と心から願ったとき、莫大な力を発揮できます。


レッスンの時間が来たので、次回に続きます。