
『天才脳の育て方』 5つのメソッドの続きです。
②チームのため力
「違いを認めて共に生きる」のは人間の本能。そして、コミュニケーションの原点です。
人を好きになる、指導者を尊敬する、物事に感動する……。
そうしたとき、脳の機能は高まります。
一緒に物事を成し遂げ、自分の損得抜きで、人のために力を出そうとすれば、脳の
本能は強力にサポートするのです。
対して、「他人を蹴落として自分を守る」という考えが生まれるのは、発達段階で愛情が不足したために
「自己保存の本能」が過剰に働くためです。小さいときから、人の良いところをみつけて感心したり、自他を忘れて
一緒にことを為す喜びを体験させてください。
今の時代、「違いを認めて共に生きる」場面を被害的に受け取る風潮が強いな……と思います。
自分の子よりできない子や幼い子が学ぶ場にいると、
進度が遅れるんじゃないか、自分の子の時間が減るんじゃないかと気を揉む方は多いです。
わが子が自分より幼い子の手助けをすることが多いと、損をしている気になる方もいます。
一方で自分の子よりできる子が身近にいると、わが子が自信を失って、
やる気がなくなるんじゃないかと心配する方もいます。
実際には、いろいろな年齢のいろいろな能力のいろいろな個性の子がいっしょにいるからこそ、
自分の心が動く場面があってさまざまなモチベーションが生まれてくるものです。
いろいろな子と過ごすことで、「いつもみんなと同じようにできなくてはいけない」という縛りが解けて、
学ぶ内容そのものに強い興味を覚えるようになる子もいます。
ちょっとした挫折に強くなったり、内省するようになったりもします。
個人的な子どもの能力アップにばかり努めていても、他よりも優れていよう、と励む気持ちだけで、
いつまでも突き進んでいくのは難しい気がします。
自分の損得勘定抜きで全力投球できる力が育っていたら、
どんな場面に遭遇しても、その時期のベストを尽くせるのではないでしょうか?
グループレッスンでは、それぞれの子の「こんなことしたい」や個性を大事にしながらも、
それぞれの考えや気持ちや「好き」の内容にお互いが興味を抱きあって、
いっしょに活動していくことで、相手の長所に気づいたり、助け合う気持ちよさを味わったり
するように配慮しています。
まだ幼い幼児の子たちにも
ひとりの子がトラブルに遭遇するたび、それが協力して問題を解決する体験となるように
導いています。
子どもは素直で純粋な心を持っていますから、
お友だちのために本気で頭と力を注ごうとするし、
そうした体験をすると、心から喜んで困っている子の手助けをするようになっていきます。
子どもたちのそうした姿を見るにつけ、大人ではなかなかこうはなれないな~と思います。
林成之先生は脳が目覚めるポイントとして、こんなこともおっしゃっています。
「好意」「尊敬」「感動」が120%の力を引き出します。
「好意」「尊敬」「感動」といえば、昨日こんなことがありました。
京都の工作のワークショップの帰りの電車で、ワークショップに参加してくれていた
年長さんの男の子といっしょになりました。
その時、その子のお母さんから、
少し前にブロック講座に参加してお友だちといっしょに
お城のなわばり図を作ったことがよほど心に響いたのか、それ以来、なわばり図にとても興味を抱いている
ようだ、というお話をうかがいました。
それで姫路城に連れて行ったところ、そこで城の案内の方が大人向けに解説をしているのも
ひとことも聞き洩らすまいという表情で聞いていたそうです。
すると、それを聞いていたその子が、「なおみ先生、なわばり図のところに扉がふたつあってね、
一つのとびらだけ通って、どんどん進んでいくと、ずうっとお城に着かないんだって」
と心底その話に感動している様子で話しました。
本当にしっかり聞いていたんですね。
そういえば、なわばり図を作りながら、城を作った昔の人々の工夫について話していた時、
その子の瞳がその時代の人々の知恵への尊敬でキラキラ輝いていたのを
思い出しました。

ブロック講座で、その子は最初何を作るか決めかねて、困った表情をしていたのです。
でもお友だちといっしょに図鑑のなわばり図を眺めるうちに、「いっしょに作ろう」と意気投合して
作ることにしていました。
ワクワクしながら協力して作りあげるうちに、
昔の人の暮らしやお城の構造などに強い興味が湧いてきたようなのです。
ひとりで作るのではなく、お友だちとおしゃべりしながら、
他の子の個性に触れながら活動していると、作る作業の中からも
知的な関心事も生じるようです。
その時のことを思いめぐらすうちに、今回の工作のワークショップで習ったことを
お家でもっと膨らまそうというアイデアがひらめいたようで、
遠慮がちに、「もう少し、太いストローをもらって帰ってもいいですか?」とお願いされました。
今回のワークショップでは太いストローを使って、エレベーターやアトラクション作りを楽しんだのです。
帰りの電車の中でも、他の子の作品を見た時の感動が蘇って、
自分もそんなものを作ってみようか、もっと面白いものを作ろうか、
という思いをめぐらしていたのかもしれません。



次回に続きます。