巨大な自動販売機を作って持って帰った★くんの1年前の様子を記事にしたものがあったので、
ちょっと懐かしいのでアップします。
★くん、1年でずいぶん成長しました。
ブロックあそびが大好きな4歳8ヶ月の★くん。
お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんに目に入れてもいたくないほどの
可愛がられようで大切に育てられてきたこともあって、
ちょっと動くたびにシャワーのようにたくさんの言葉を浴びて過ごしていました。
そうした言葉かけに素直に従う一方で、創作物や遊び方からは
思考力の高さがうかがえるのに、自分から発する言葉がすくないことが
気になっていました。
そこで、極力、大人から発する言葉を減らしていただいて、
★くんの発するものをしっかり受信するように努めていただいていました。
今回のレッスンでいっしょに遊ぶうちに、★くんの口にする言葉も
アイデアの質も他人の意見を取り入れる柔軟性も問題解決能力も
前回までのレッスンでは考えられないほどしっかりしたものになってきていることに
気づきました。
それを付き添いで来られていた伝えると、★くんのお父さんも
それを実感していたそうで、
たくさん声をかけ過ぎるのをやめただけで、こんなにも
しっかりと自分の意見を言い、考えを展開していくようになるのかと
驚いていたそうなのです。
もちろん、それには、★くんの頭脳活動を好み、
細部にまで気を配るという本人の才能によるところもあります。
でも、そうした個性的なものが芽をだしはじめるのは、
大人が子どもを自分の好きなように動かすのを控えた時でもあるのです。
★くんは電車の駅作りに励んでいました。
電車の長さに合わせて、ていねいに駅を作りながら、
自分の作った駅がどのようなサイクルで運営されているのか
説明してくれます。
自分の考えをしっかり表現する力がついてきた★くんですから、
今、身近な大人が★くんにどんな見本を見せてあげると、
★くんの世界が広がるのかというと、次の2点だと思いました。
①図鑑や本の知識を自分の活動に取り入れるためのお手本をしめす。
●自分のしている活動をより広く多角的な視点から見えるように
●問題解決の方法を身につける
②★くんの今の敏感期に気づいて、それに適した活動が
行いやすいようにサポートする。
★くんが、駅を作っていたので、
自分の作品作りに新しいアイデアを取り入れるために図鑑を見る時の
コツを教えることにしました。
まず、どんな図鑑を見るかです。
大図解のように機械などの内部の仕組みがくわしい図鑑、
駅のなかのさまざまなものが載っている図鑑など、
いろいろなものがありますね。
子どもと大きな本屋や図書館で選ぶのも楽しいです。
★くんは、駅のイラストの階段を目にしたとたん、
自分の作っている駅を地下にする設定が浮かんだようで、
テーブルの上に切符売り場や改札口があって、
そこから階段を下りてきて、地下が駅になっていて、地下にもさらに下に行くための階段
があるんだ、と説明しました。
そしてユニークな構造の作品を作りだしました。
★くんは自分で考えて行動に移すことが好きな
子です。几帳面で完璧主義の性質ため、
一度やりはじめたことは、細部に至るまで自分のイメージ通りになるように
根気よくていねいに関わります。
そのように自発的に活動することができる長所の反面、
他人の意見に耳を傾けず、自己流のやり方にこだわるため
遊びも学びもワンパターンに陥りやすいきらいもあります。
わたしは★くんの個性に配慮して、
自分で新しい知識やアイデアを開拓していけるような
本や図鑑との関わり方を身に付けさせたいと思いました。
子どもに何かを教えるには、「タイミング」というのが
重要だと感じています。
幼児というのは、いつも一生に通じるような技能を習得するための
敏感期にいるものですから。
今、その子が何の敏感期であるのか、
よく把握した上で、適切なタイミングで教えるのでなければ、
何も教えない方がまし……だと感じています。
子どもは放っておいても自分で学びますし、子どもの自発的な行動は
敏感期によるものがほとんどだからです。
この日、★くんの2歳1ヶ月の妹さんも教室に来ていたのですが、
この子はちょうど数の敏感期に入りかけているところらしくて、
ひたすら椅子を並べたり、重ねたり、数を1対1対応させることに
熱中していました。
★くんは、がんばればできそうなレベルの
「ふたつ」のことに同時に注意を向けながら、
完璧にできているかどうか確かめられて
達成感が味わえる活動に
対して非常に敏感な時期にあるようでした。
文字でしたら、「はみださないでなぞること」と「書き順通りにすること」の
ふたつに注意して作業をすることに
面白さを感じる時期ということです。
こうした敏感期のあらわれは、子どものありのままの姿を認めて
自然な成長を大切にすればするほど、はっきりと出てくるものだと実感しています。
「2歳の子に字の書き方を教えよう」「書き順にも注意させよう」といった
敏感期を無視した大人主導の教え方をしていると、
敏感期と思われるものがほとんどなく、何事にも自信がないか、
攻撃的なほどのがんばり方をするかのどちらかで、最終的に無気力になるか
過剰に他人の評価にこだわる性質になりがちだと思います。
(図鑑との関わりの教え方については次回に)
算数の学習では、「じゃんけんをする」
「勝ったらマスに色を塗る」
「折り紙の16マスを塗り終えたら、それぞれの色の数を
数えて勝ち負けを確かめる」という3つの作業をきちんとこなすことが要求されている活動を
心から楽しんでいました。
こうした学習も、カリキュラムだから……とさせるのではなくて、
その子の敏感期によるタイミングと好みの個性に配慮した上で誘うのがいいと思います。
図鑑の話に戻りますね。
★くんは自分の頭のなかのイメージだけで繰り返し
同じことがしたいタイプです。
ですから、まずは自分でしたい活動を存分にやって、
ちょっと手持ちぶたさしたあたりで、それまでしていた活動に広がりや意味を持たせてくれる
ような図鑑を見せてあげるといいのかもしれません。
★くんといっしょに見たのは『はっけんずかん のりもの』と『大図解 21世紀こども百科』でした。
『はっけんずかん のりもの』は乗り物の内部の様子を、ポップアップ絵本のように
めくることで見ることができます。
工作で乗り物内部を作りたがる子に適しています。
★くんは駅の様子を作りたがっていたので、図鑑の駅の絵を、
「作ったら面白そうなものはないかな?」「いいアイデアはないかな?」
と言いながら、眺めました。
★くんは階段の絵を見つけて、最初、自分の作っている駅は階段はつけられない
と言っていました。
確かに、写真の状態の時には1階だけの平面しか
イメージできないですね。
でも、そこで、テーブルを利用することを提案すると、たちまち、★くんの想像の世界は
上にも下にも広がりだしたようです。
作っている駅を地下鉄ということにして、テーブルの上に切符売り場や改札口があって
地下に向けて階段が続いている様子がどんどん浮かんできたようなのです。
地下からさらに見えない地面の下に向けての階段も
作っていました。
わたしは、さらに新しく取り入れるアイデアはないか
図鑑の絵を眺めてみるようにうながしました。
吊ってある丸い時計があります。
「時計があるね。作れないかな?」とたずねると、
★くんは、「無理!無理!作れないよ」と興味なさそうに駅の屋根の続きを作りはじめていたのですが、
「でも、ほら、テーブルのところから吊り下げたらどう?」とさらに言うと、
「そうだ、セロテープで吊ったらいい!」とすっかり乗り気になって、いっしょに時計作りをすることに
なりました。
紙コップの底をはさみで切り取って、針や数字を書いて、
駅の時計に。
★くん、すっかりこの作業に夢中になって、帰宅する時間が来ても、
「もう1個!もう1個!」とコップの底を切り抜いて、好きな絵柄を描いて
遊んでいました。
この作業は、最初に力を入れて紙コップに切り込みを入れなくてはならないのですが、
その力加減が大人でもむずかしいのです。
ちょっとはちゃめちゃな遊び方をする動きがダイナミックな子たちは、
こうした作業をすることに躊躇しないのですが、★くんのように
几帳面で完璧主義の子にはハードルが高いものです。
でも、子どもって、そんな風に自分にとって限界すれすれにあるような作業を
「えいっ」とばあkりにやってみて、うまくできた時、
「もっと!もっと!」としつこいほど夢中になることがあるのです。
★くんにとって大事なタイミングですから、
「紙コップがもったいない」などと思わず、
本人がやりたがるだけ切らせてあげることにしました。
★くん、自分の頭で考えて、自分の力で作りながら、
適度に他人のアドバイスを受け入れたり、
図鑑などから新しいアイデアを取り入れていくことが
できはじめているようです。