虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

子ども自身の見る目を育てる  気づく力を養う

2016-04-04 08:15:35 | 連絡事項

 

今年も京都で開催される工作のワークショップの講師をさせていただきました。

子どもたちと他の子の作品を見てまわる時間のこと。

それぞれの作品の前で、「この作品のすばらしいところはどこだと思う?」

「面白いところ、工夫しているのは、どこだと思う?」とたずねました。

子どもたちから、「ここでしょ!」「あそこ!」「こういうところがすごい」

「こんなところを工夫している」と次々声があがりました。

未完成に見える作品も、目立たない地味な作品も、見たところ他の子の模倣にしか

映らない作品も、そこにある長所を探す目で眺めたとたん、

たちまち、その作品にしかない独創的な魅力が輝きを放ち出すから不思議です。

 

個々の作品の『動き』や『形』に潜んでいる科学的なものや数学的なものが、

「次はそのアイデアをどう発展させようか」という

ワクワクの火を子どもたちの心に灯していくのがわかります。

 

上の写真の作品のすばらしい点と問うと、

子どもたちは、ビー玉の滑って行くスロープの一つひとつがつるっとした素材、

ざらざらした素材、パリパリした素材、ガタガタガタした素材、

さらっとした素材などに見た目も美しく貼り分けられている点に気づきました。

見ると、ビー玉スロープを受ける部分も、異なる素材で異なる形に作られています。

 

たいてい、違いを生み出す時には

色分けして視覚的な違いを出す場合がほとんどです。

でも、ざらざらガタガタといった触った感じからくる違いを意識して作品を作ると、

ビー玉の滑り方、滑る速度、滑って行く時に出る音などに違いを出すことができるのです。

 

触感の違う素材は、「探すこと」と「作ること」の二つの方法で集められています。

ガタガタした触感を作るには、「紙を階段状に折ればいい」といったあたり前の

ような発見は、探すことに行き詰った時、「作る」に転換することができる知恵に

つながります。

 

今回、ビー玉迷路を作る方法をお手本で示したのですが、この作品では、

「ビー玉の通って行くコースはひとつだけ」という先入観を打ち破る

面白いアイデアが使われています。

「ふたのある箱」という形もうまく活用されています。

子どもたちには、基本を応用させるコツが目に見える作品から学べるように

言葉を添えています。

 

 

写真の作品の良いところをたずねると、

子どもたちは、引き出し式の箱で作ったビー玉用エレベーターや

箱を切って作ったビー玉を飛ばしたり移動させたりする道具を指さしました。

どちらも今回、作り方を説明したものではあるのですが、

実際、自分で作るとなると難しい個所がたくさんあったでしょうに、

上手に作っています。

わたしは子どもたちを土台に使われている紙に注目させました。

薄手の画用紙を土台としているので、最初から形が整っている箱のふたや段ボールを

使うよりも見栄えが悪いのです。

でも、「紙の端を折って立体にする」というアイデアは、紙さえ継ぎ足せば、

どんなに大きなサイズでも

作れるという利点や簡単に壁面の高さを変えられるという利点、

材料が足りなくても自由自在に自分のアイデアを実現できるという利点があって

すばらしいのです。

また、このように紙を折って立体を作る作業は、

算数の世界の気づきにもつながります。

そうした発見を面白いな、と味わうことができる間を大事にしています。

 

この作品は小2の子が全て自分で作ったものです。そのように子どもが自分で

作った作品は、ビー玉を転がした時の面白さがしっかり追求されているところが

すばらしいです。

遊ぶと面白いこと。それはとっても大切です。

 

写真は、『ようちえん』という作品です。

箱やストローやペーパータオルの芯などをダイナミックに貼り合わせています。

作る作業を心から楽しんでいたことがわかる出来栄えでした。

 

子どもたちに「この作品のどこがすばらしいと思うかたずねると、

下の写真のように牛乳パックの先を切り抜いて色付けしている部分と

幼稚園の建物中貼りめぐらされているストローを指しました。

 

写真ではわかりにくいのですが、

牛乳パックの口の部分は三角形の山折り谷折り線が入っているので、

科学館のプラネタリウムの天井部分やミラーボールのように

近未来的な建物を思わせる美しさが感じられるのです。

「三角と三角でできている建物の屋根はかっこいいね。

これは何でできていると思う?

何を使うと作ることができるでしょう?」とたずねると、

みんな目を丸くして考え込んでいました。

正解した子と作品を作った男の子はとてもうれしそうでした。

牛乳パックの口の付近にどうして三角形の折目が入っているのか、

実際に空の牛乳パックを切って考えてみると、子どもの探究心を刺激してくれます。

折り方によってひっこんだり、飛び出したり、開いたり閉ったりするのですから。

 

この後、子どもたちが自分の作品の一部を指して、

「これは何で作ったでしょう?」というクイズを出して楽しむ姿がありました。

 

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これも小2の子が自分ひとりで作った作品です。

ストローで作った迷路はまばらで、スロープはストーローだけでできていますから、

ちょっと手を抜いて作ったようにも見えます。

でも、実際にビー玉を動かす過程を実演してもらうと、

「こういう風にしたい」という目的のもと、何度も試行錯誤を重ねてできた作品で

あることがうかがえました。

作品見物に集まった子どもたちに、

「この作品のどこがすばらしいと思う?」とたずねると、

いっせいに乳酸菌飲料の容器に銀色の紙を貼ったものを指さしました。

 

どうしてそれが子どもたちにすばらしいものに見えたのかというと、

この容器にはひもがついていて、それをひっぱると容器が段差で傾いてビー玉が

飛び出すのです。

おそらく容器にひもをつけただけだと段差で傾けることができなかったのでしょう。

ひもは土台に貼ったストローを通してから引っぱる仕掛けになっていました。

ひもをつけて引くだけでは思うような動きにならなかったので、

工夫を凝らしたようです。

 

ストローだけのスロープは、ビー玉のサイズより幅を狭くするとちゃんと機能します。

新しいとてもいいアイデアですね。

 

 

ティッシュの空き箱のベッドに寝かされた5人の赤ちゃん。

トイレットペーパーの芯に目と口が描かれているだけなのに、

何ともいえない可愛らしさ。

「あっかわい~」という声が漏れていました。

 


折り紙で学ぶ角度の問題

2016-04-03 21:04:59 | 算数

新小4生たちと角度の学習。

二等辺三角形を折り紙で作ると、二等辺三角形の底角が等しいことが実感できます。

折ると、重なりますから。

 

上の写真のように折ると、ものさしを使わなくても

簡単に二等辺三角形が作れます。

 

二等辺三角形の角度クイズ。

 

二等辺三角形を学んだ後で、正三角形を作りました。

折り紙は正方形なので、その辺を3つ使う形で三角形を作ると

正三角形ができます。

 

子どもたちに大受けの『三角形の手品』です。

適当に三角形を作った後で、角をそれぞれちぎって合わせます。

 

3つ合わせるとまっすぐに……!!180度になります……!

 

「小学2年生くらいまでしか通用しない手品だよ。三角形の内角の

和が180度って習った子にはできない手品」というと、

これから三角形の角度を習う子たちはすごく喜びます。

 

簡単な数回折るだけで正八角形を作ることができます。

そうして作った正八角形のひとつ内角は何度か考えています

 

折り紙クイズが楽しかったので、作ったクイズを貼って本にしました。

 

時計の長針が1時間に何度進むのか?

1分間に何度進むのか?

時計の短針が1時間に何度進むのか?

1分間に何度進むのか?

についても、目で見て楽しめるクイズにしました。


カテゴリー化、階層化、分類化の能力が伸びる年中、年長さんの時期

2016-04-03 09:18:02 | 通常レッスン

年中の★ちゃん、年長の☆ちゃん、●ちゃん、○ちゃんのレッスンの様子です。

「今日、何をしてみたいのか」を話し合う時間に、★ちゃんが

棚に飾ってある船を降ろしてもらいたがりました。

「船を浮かべる海や宝島を作って遊ぶ?」とたずねると、

みんな大乗り気で賛成しました。

 

青い布の上に船といっしょに魚やシャチのおもちゃを飾ってから、

ペンギンの人形をどうするかで揉めていました。

「ペンギンは海は海でも、氷のある寒い国の海にいるはず」という子らと

「海ならどこでもいいことにしよう」という子ら。

写真のようなブロックのプレートに北極を作ることで

意見がまとまりました。

「わたしね、かまくらを作ったことがあるよ」「氷のお家の中はあったかいんだよ」

といった話で盛り上がっていました。

 

みんな北極を作ることにとても満足したようで、それからは

ブロックのプレートを出して陸を作る度に、

「どの国にするか」という話をしていました。

上の写真はモンゴルだそうです。

「先生、モンゴルにトラはいる?」「モンゴルにはどんな動物がいるの?」と

いう質問があったので、いっしょに図鑑を見ました。

 

☆ちゃんの幼稚園で、モンゴルのゲルを建ててくれるイベントがあったそうです。

「モンゴルのテントの中はとってもあったかいんだよ。テントの中でモンゴルの音楽を聞いたよ」と☆ちゃん。

「そういえば、★ちゃんと●ちゃんは、民族学博物館でモンゴルのゲルを見たよね。覚えてる?」と聞くと、

「うん」「うん」とうれしそうにうなずいていました。

 

 年少や年中の子らのグループでこうした遊びをする場合、「お家」や「プール」「幼稚園」「遊園地」といった

自分が実際に体験したことがあるものをテーマにしています。

でも、年長が主のこのグループでは、自分が行ったことがない国について

想像力を膨らませながら遊んでいました。

同じように動物の人形を扱うのにしても、年少や年中グループでしたら

動物園を作るかペットとして飼うことにしたでしょうが、

年長を主とする子らは、草が生えているところにいる動物、山にいる動物、北極にいる動物など

気候や環境で、暮らしている動物を分類しながら遊んでいました。

 

その姿を見て、『よみがえれ思考力』の抽象的思考への移行について

説明している文章を思いだしました。

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◆ 抽象的思考への移行

 

子どもは新しいやり方で考えを組み合わせ始めると、対象のあからさまな

物理的特徴から離れることができるようになり、ピアジェの用語でいう

「具体的操作の段階」に入る。具体的操作期での興味深い特徴は、

子どもたちが「保存」の概念を習得することである。

(省略)

「保存の能力を試すテストは、質量や長さ、面積や質量について

子どもを「騙そう」とひっかける。

(省略)

子どもたちはどのようにしてこの関係を理解する段階へと到達するのであろう。

私は神経の準備性の量が関係していると考える。

しかし、子どもたちには何百という経験や訓練が必要なことも確かである。

(省略)

もう一つの主要な成長の領域は、カテゴリ化、階層化、分類化の能力である。就学前の子どもに、

世界中には動物と犬のどちらが多くいるかとたずねると、「犬」と答える。それは、その子がより広い

動物という分類の中のものとして犬を見るのではなく、知っている限りの犬という

直接の概念に捕らわれているためである。

その後、七歳くらいになると動物の写真を鳥類、哺乳類、爬虫類といったカテゴリにうまく分類することが

できるようになる。しかし、「もし全ての哺乳類が世界中から絶滅してしまったら哺乳類は生き残るだろうか」と

質問されると答えに躊躇する。

                         『よみがえれ思考力』ジェーン・ハーリー 大修館書店

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「より大きな抽象的な論題の中に下位の論題が存在する」ことを

理解していく過程は、子どもの遊びの世界に反映されています。

子どもたちがカテゴリ化、階層化、分類化する能力を洗練させていく上で、

親子の会話やさまざまな体験や遊びの重要さを感じています。


子どもの個性にじっくりと関わること

2016-04-02 20:47:29 | 子どもの個性と学習タイプ

Aくんはやんちゃで衝動性が強くひとつのことに集中できない一面と

秩序のある美しいものが好きで完璧主義で好きなことに深く集中する一面という

正反対の性質を併せ持った男の子です。

同年代の子といっしょの時はわくわくするあまり気持ちが高まって

自己コントロールがききにくくなるため、

個人レッスンに切り替えて、Aくんがやりたいことをとことんやりつくすことが

できるような環境を用意するようにしています。

 

そうして、Aくんという子とじっくり関わってみると、

この子は面白い子だなぁ、賢い子だなぁ、

やんちゃさの背後にこんなに繊細で優しい性質が隠れていたんだな、

ちょっとした刺激に影響されやすくて、おふざけ全開モードになっている時は

遊びの成り立ちにくさが気になっていたけど、

環境次第で上手くいかないことが続いても何度もチャレンジしなおすほど

エネルギッシュにひとつのことに集中できる子なんだな、

とAくん独自の魅力が浮き彫りになってきます。

 

この日、Aくんが興味を持ったのは、他のグループの子が作って帰った

警察署の車を上らせていくための坂の部分でした。

その上にビー玉を落とす仕かけを取りつけて、

大きいサイズのビー玉を落として遊びだしました。

 

Aくんは実験が大好きです。

他の子らとブロックでミニ四駆のレース場を作った際、

ゴールのトンネルにティッシュペーパーを挟んでおいたら、

車がそれを突き破って走っていった話に強い関心をしめしました。

ビー玉を滑らせる坂の途中にトンネルを作り

ティッシュペーパーを挟んでみることにしました。

 

突き破って滑っていくのかと思いきや……この通り。

とても感心したのは、

もっと高いところからビー玉が落ちるようにしたらいいんじゃないか」

「もっとビー玉をたくさん転がしたらいいんじゃないか」

と試行錯誤するAくんの根気とていねいさ。

何度やっても上手くいかなくても、驚くほどへこたれないし、

それは熱心に、条件をひとつずつ慎重に変えていきました。

どの条件でティッシュペーパーが破れるのかわかった後で、

ビー玉の落下装置にアルミ箔をはさんでみることにしました。

はじめ、簡単に破れてしまったのですが、

Aくんの「アルミ箔をボコッとさせて、ビー玉が入るようにしたら?」という意見を

取り入れて、アルミ箔をピンッと張らずにブロックに挟んだところ、

ビー玉を落としても穴が空きませんでした。

 

面白かったのは、

意外なほど予測がはずれてしまうことです。

見た感じこだろうと踏んでいても、

実際にやってみると思ってもみなかったような結果を得るのです。

 

 

 先月のブロック講座まではAくの作品は平面が主でしたが、

ほんのひと月ほどで物を立体的に組み立てるのが得意になっていました。

あってという間にビー玉を落とす道具やサッカーゲームなどを

ブロックで作っていました。

 

Aくんの個性にゆったりと関わったことが功を奏したのか、

算数の学習でもすばらしい集中力と実力を発揮してくれました。


簡単なピタゴラスイッチの装置

2016-04-02 07:11:53 | 理科 科学クラブ

ピタゴラスイッチの装置作りは、どの年齢の子にも大人気の遊びです。

遊ぶ際は、作品全体として立派に仕上げるよりも、

それぞれの子が見つけた「こういう風にしたい!」という

思いに焦点を当てて、上手くいく方法を探って試行錯誤することを大事にしています。

 

この日、新小4のAくんと新小1のBくんが興味を持ったのは、

赤いボタンを押すとビー玉が飛び出すしかけです。

Aくんが、ふと思い立って赤いボタンにブロックをぶつけたことから

「こんな風にしたい!」のアイデアが生まれました。

 

男の子って、「バリン!バシャン!ガシャッ!バーン!ドーン!ドカーン!」なんて

ぶっそうな音がしそうなことが好きですよね。

物は大切にしなくては……。

それに、危険な真似はしちゃダメですが……。

でも、「好き」「面白い」と感じる気持ちは、創造の原点でもあります。

 

Aくんは、ちょっと高い位置からブロックの塊を赤いスイッチの上に落としてみて、

ビー玉が飛び出すか確かめました。それから、先に作っていたビー玉用

レールの先にブロックを置いて、

転がってきたビー玉がブロックに当たる

→ ブロックが下に落ちて

→ スイッチボタンを押す

→ビー玉が飛び出して、次のレールを転がっていく

という流れをイメージしていました。


が、簡単に成功しそうで、現実は厳しい。

ブロックの塊がスイッチに当たっても、ビー玉が飛び出すことはありません。


パワーが足りないのならと、ブロックのサイズを大きくしても、

衝突と同時にブロックがバラバラになるだけでビー玉は動きません。

「レールを高い位置に設置になおして、もっと高い位置からブロックを落とすように

したらどからしら?」と提案した時、

Aくんがいいことを思いつきました。

ビー玉が当たったブロックが落ちる時、

↓の写真のように傾いて180度回転して落ちていくことから、

ボタンに衝突する面積ができるだけ小さくなるようにブロックの形を工夫するのです。

Aくんは面積を小さくすることでどんな効果があるのか

正確にわかっていたわけではありません。

でもそれが大成功。 

 

落としてみると、こんな感じに回転した後、ブロックの先がボタンに

当たってビー玉が飛び出していました。

 

スタート地点。

 

衝突してビー玉が転がっていった後。

 

温泉卵(4つ入り)のパックを使って、こんな装置も作りました。

ビー玉をセットして回転させると、穴から落ちて、ビー玉がスタートします。

 

 

 

 


ボードゲーム喫茶

2016-04-01 19:03:53 | 番外(自分 家族 幼少期のことなど)

中学入試を終えた子たちに誘われて

爬虫類カフェとボードゲーム喫茶に行ってきました(親御さんたちもご一緒しました)。

写真は、ボードゲーム喫茶の様子です。

3時半から7時まで、カードゲームやボードゲームをし続けて、

わたしはヘトヘト……。子どもたちは、まだまだ遊び足りなかったようで、

「もっと!」と騒いでいました。

 

ボードゲーム喫茶の店長さんに、ゆうもあゲーム会について教えていただきました。

幼い子たちも参加できるボードゲームやカードゲームの会です。

興味のある方はホームページをのぞいてみてくださいね。

 


子どもの能力を引き出す幼児教育  ダメにする幼児教育

2016-04-01 10:25:48 | 連絡事項

さまざまな幼児教育法が飛び交っていて、

「あれが良さそう」「これがお得」と選んでいるうちに、

弊害があるという噂を聞いたり、自分の子に合わなかったりして、

何が何だかわからなくなって、何もしないまま時が過ぎています……

そんな声をちらほら耳にします。

「子どもに何をさせようと親の自由」と語る学者もいて、

「幼児期は勉強なんかさせずにたっぷり遊ばせたらいいのよ」と

力説する先輩主婦もいて、

「何をしてもしなくても、結局、いっしょなんじゃない?いっそ自己流で適当に

育てちゃおう!」そんな気持ちに行きつく親御さんたちがいても

不思議ではありません。

 

確かに3歳までに英語を聞かさなかったとしても、

就学するまで計算やひらがなを教えなかったとしても、

0歳から先取り学習をしていたという子たちと

先々、能力の差はなくなるかもしれません。

けれども、水と光がなければ、ほとんどの植物か枯れてしまうように、

幼児にとって基本的で必要不可欠な学びが欠けてしまうと、それは発達不全となって、

その子の将来に後々まで悪い影響を及ぼすものもあるのです。

現在は、そうした子どもの成長に絶対必要なものが、他のどうでもいい情報にまぎれて

見えなくなったり、環境そのものが、子育てに不向きなものに変形していたりするので、

あえて当たり前のことに真剣に意識を向けていないと、大変なことになるかも

しれないのです。

そこで、私が考える「幼児の成長に必要不可欠なもの」と、

「弊害をもたらす危険だと思われるもの」を、

一度、言葉にして整理しておくことにしました。


<幼児に必ず必要だと思われるもの>

★自由な探索活動  (身体で空間を感じ取る体験も含みます)

★五感を使う体験 (感覚統合を育てる体験も含みます)

★愛着

★親と子の濃密なコミュニケーション

★遊び

★想像力と創造力を育む体験

★親愛を込めて、心のこもった言葉で話かけること

★人と交流 友だちとの遊び

★感情を認めること ネガティブな感情も表現させること 感情の処理方法を教えること

★リラックスできる場所と時間

★脳の発達の自然なパターンにそった活動に適切な支援を与えること



<幼児期に適度にあるといいもの>

★絵本の読み聞かせ

★自然との触れ合い

★積み木やブロックのような、能動的に関われるおもちゃ

★身体を使った運動

★日常生活でさまざまなものに出会うチャンス

★感覚的な入力を言葉とつなげるように支援する

★原因と結果を結びつけることができる子どもにわかりやすい体験

★新しいことへの挑戦を励ますこと

★お手伝い

★注意を向けて集中することをうながす課題

★歌う 音楽を聴く リズムに乗る

★絵を描いたり、物を作ったりする。

★身のまわりの不思議への関心をうながす



<幼児に害を与えると思われるもの>

★過剰期待

★親の不安にもとずく過保護(子どものすることを先にしてしまう。ミスさせない。

挑戦させない、けがやけんかを恐れすぎる)

★過干渉(つきまとって指示を与える。子どもが自分自身で心的なパターンを

形成することができない)

★放任や無視 親の精神的な不安や怒りを子どもに投影する

★忙しすぎるスケジュール

★体罰 言葉の虐待

★過度に窮屈な訓練

★未成熟で不適切な神経ネットワークを酷使させること

★子どもの年齢にちょうど適した体験を与えない

★受動的な体験が多すぎる

★刺激が多すぎる体験