虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

基礎的な発見 2 <折りたたむ>

2016-04-10 08:44:01 | 子どもたちの発見

新小1のAちゃんは、持って帰る際に作った工作物を

「コンパクトに折りたためるか」ということをとても気にする子です。

初めのうちは、工作物を捨てずに置いておいてもらえたり、

持ち帰り時に便利だったりするから、小さいサイズにしようと思っていたようです。

が、この頃は、どのような工夫をしたら小さく折りたたんだり、

再び元の状態に戻れるか、試行錯誤しながら考えていくこと自体が

面白くてたまらないようです。

 

小1と小2に女の子たちのグループで、ハンバーガーショップを作った時のこと、

他の子らがトイレットペーパーの芯などを使って調理台の支えを作る中、

Aちゃんだけは厚紙を切って下の写真のような支えを作っていました。

 

Aちゃんの説明を聞くと、折り上がっている時は、台の差し込み用の穴に

さしておき、折りたたむ際は、はずして厚紙を寝かしてたたむようにするとのこと。

ハンバーガーショップは、ヨーグルトの容器で作ったフライヤーをはずすと、

平たい紙の状態にたためるので、

台にこうした工夫を加えると、かなりコンパクトにしまえるのです。

 

Aちゃんは少し前まで、ポップアップ絵本を作ったり、

絵本型のドールハウス作ったりすることに熱中していました。

ドールハウス内に折りたためる隠し部屋を作ることも面白がっていました。

そうした物作りを通して、 

「折りたたむ」という技術が、Aちゃんの中で

いつでも使える知恵として定着しつつあるようです。

 

教室には、Aちゃん以外にも、「折りたたむ」ことに強い関心をしめす子が

何人かいて、六角形のプールのふちを折りたたむ方法やクリスマスツリー風の

木を折りたたむ方法などが探究されています。

 


調べ学習にチャレンジ♪ と 「会話」の話

2016-04-09 22:56:16 | 息子とおしゃべり(ときどき娘)

わが子が小学生だった頃、もっとも大切にしていたのは、

ワークをさせることより、何かを教えるよりも、まずよく「会話をする」ことでした。

 

マンガを読んだり、テレビゲームをしたり……

子供たちは自由に過すことが多かったので、していることの質はどうか…?

というと実に怪しい時もありました。

 

しかし、子どもが、「どうかなぁ…」と思う遊びに傾倒しているときも、

その内容について親子で深い部分まで掘り下げて討論するようにすると、

それはそれで、子どもにとって、いい成長をもたらしてくれたように思います。

 

小学校中学年頃、娘の場合、きちんと机に向かうことも多かったのですが、

息子はとにかくゲームをすることが好きで、

今日のところは勉強には目をつむっておこう……という日も よくありました。

そこで、ワークをさせるかわりに、息子の大好きなゲームについて語り合ったり、

調べたりしました。

当時、私は、娘や息子の言葉をできるだけそのまま記録して残しておきたいという

思いがありました。そこで、日々の出来事や家族会議の様子を会話を中心に

書き残していました。(原稿用紙にして何百枚……。)

その頃は、あまり深く考えずしていたのですが、

今になると,その時期その時期の 心や知能の成長の記録として大切な宝物に

なっています。(乳幼児を育てている方も、写真だけでなく、おしゃべりも

記録しておいてあげてくださいね。)

 

それで、この調べ学習というのも、息子と私が、ひとつの疑問について会話を

膨らませていった過程の記録が中心になっています。

 

息子が小4の時の家族の会話です。家族でゲームをしているとき、

息子が、どうして将棋ばんは、9×9マスなのか?ということに疑問を持ちました。

 

息子 「チェスもオセロも8×8マスなのに、どうして…

将棋はなんで…9なんて2つに割れない中途半端なマス目をしているんだろう?

戦うとしたら、領土がきちんと半分ずつ分かれた方がいいんじゃないかな?

不思議だ。」

 

母「もしかして他の国の領土に侵入していくような戦い方をする人々と、

決闘場をもうけて戦ったとか?将棋がどうやって生まれたか知りたいわ。」

 

父「奇数っていうのは、覚えやすいからだよ。きっと。」

 

息子「覚えやすいって?」

 

父「将棋のこまの位置を暗記して、頭で動かすとき、偶数より奇数の方が

ごちゃごちゃになりにくいと思うよ。」

 

数日後 なにやらひらめいた息子。

 

息子「9は3で割り切れる数でしょ。自分の陣地、相手の陣地、中心の戦いの場が、

まったく同じになるんだよ。それから、オセロが64マスなのは、

こうじゃないかと思うんだ。

オセロは黒と白の多さで決着するから、マスは偶数でなくちゃいけない。

でも100マスでは多すぎる。

次に小さいマス(でちょうど良いのは…)は8×8の64なんだ。」

 

父「それは、おもしろいアイデアだ。」

 

母「本当によく思いついたね。うちの家族は、推測したり仮説を立てたりするのは

好きだけど……。そう、実験するのもすきだよね。

でも、きちんと理由をたしかめて、くわしく調べることはめったになかったでしょ。

今度、図書館を使った「調べる」学習賞コンクールっていうのがあるらしいから、

納得がいくまで調べてみない?」

 

息子「ぼくは、ずっと前からさいころがなぜ6までなのか、

トランプがどうして52枚なのかと不思議に思ってきたし、ゲームと数の秘密について、

もっと知りたくなった。チャレンジしてみるよ。」

 

…という会話からスタートした、調べ学習でした。

で、調べる段になって

息子「ぼくの考えは仮説だから、本当のことをしらべてみなくちゃってお母さんは

言うけど、本にのってることも仮説の場合があるんでしょ。

いろんな人が、いろんな別の仮説を立てている場合とか…。

大昔のことなんて実際見た人いないんだもん。」

 

母「でも、思いつきの仮説とたくさんの事実にもとづく仮説は、別物よ。」

 

息子「ぼくさ、さいころってだれがつくったか不明だと思うよ。

昔の人が、石ころころがして表とか裏とかしていて、自然にさいころになったのかも。

だから、本当に作った人とかいるのかな?」

つづく。

こんな風に、小学校時代は、勉強させるより、

いっしょに会話を楽しむことが多かったです♪今になると、

かなりプラスになっている気がします。

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調べ学習のヒントになるかと思うので、少し続きを書きますね。

息子といっしょに調べ学習をする時、私たちは、本を見て表にまとめるのではなくて、

最初に「表の枠」を作って、あとから本を調べながら整理していきました。

そうすると、表に空白ができて、きれいに仕上げることは、できません。

いくら調べても、資料がないことも多いからです。

しかし、その空白が好奇心を刺激し、たくさんの本に接する機会を作ってくれました。

もしこれが、すぐれた資料をただ整理し、要約する形でまとめていたら、

調べが、わくわくする体験にならなかったのではないでしょうか?

はじめに、インドの象棋(しょう棋は、インドで生まれたそう。

ただ、日本では象に乗って戦う習慣がないので当て字の将がつかわれたのだとか。)

チェス

中国象棋

日本の将棋

のマスの数、図、ルール、ルーツ、特徴について、表にまとめました。

そこで、息子が驚いたのは、9×9マスは、

日本人が考えたとばかり思っていたのに、

子ども用の中国象棋で7×9マスの写真を見つけたことでした。

息子との会話の中で、

東洋的な考え方から、マスに奇数のアイデアがもたらされたのではないか?

という新しい仮説が生まれました。東洋の過去の「家」制度からいっても、

チェスのように女王が戦場に出てくるゲームは受け入れられなかったのでしょうか?

つまり、チェスのようなゲームから、女王が除かれて 奇数になったのか……??

そう考えるうち、何時代に将棋や囲碁が日本に入ってきて、

どのように遊ばれていたかを調べないと、こんがらがってきました。

そこで、息子は、はじめて「歴史年表作り」にチャレンジしました。

そうして進んだ調べ学習は、さいころのなぞに取りかかり始めたとき

最高にわくわくするものになりました。


当時の息子の作文です。
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「さいころのすごいなぞ」 4年○組○○○○
図書館でとりよせてもらった本は大人向けの専門の本だった。
けれどびっくりするような写真がいっぱい載っていて、ぼくは夢中になった。
一番驚いたのは、紀元前8世紀のアッシリアのさいころ。
他の資料では、ずっと、後になっても、
ぼうの形や動物の骨のさいころを使っているのに、
なぜかこんな昔に立方体のさいころが。
おまけに絵のさいころじゃなくて、今とおなじ玉の数を
あらわしている。写真をじっと見ていたら、横の面に大きな穴のようなものが見える。
なんだろう。
「この数なんだろう。」とお母さんが言ったので、
ぼくは急いで自分のさいころを持ってきて、
面と面をくらべてみた。
4のはずだ。
でも、穴はひとつみたいだけど。
「昔のサイコロは、今とおなじ玉の位置とは限らないよ。」と
お姉ちゃんが言った。
ぼくは、さいころのなぞを考えるのが、おもしろくておもしろくて、
こういうことを調べる学者さんになりたい、
と思ったくらいだった。
でも前からなりたかったゲームをつくる人になる夢も捨てがたい
ので、「将来はゲームをつくる人になって、参考のために、
そのなぞを調べたりする人になりたい。」と言った。
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うちの息子は、何をするにも、たらたらぐずぐすする性格で、
宿題に取りかかるのも、明日の準備をするのも、とにかくあとまわし…。
ねころがってゲームの攻略本を何時間も眺めていたり、
休みになると食事に帰るのも忘れて遊びほうけていたりしました。
1つくらいは習い事をさせたいと思っていたのですが、小学校の6年間、
頑固に拒絶して、何もせず……。
それでも、こうした作業をいっしょにしてみると、
そうした子の中に広がるイマジネーション溢れる世界に触れたような
心地がしました。
それぞれの子に、それぞれの個性……わが子もその通りです。
 

 

時計の読み方 と 時計の学習ステップアップ

2016-04-09 18:19:10 | 算数

 

時計の読み方がなかなか覚えられない子に、

下のような時計(100円ショップの時計のカバーをはずしたもの)を用意して、

「今は3時よ。3時1分にするにはどうすればいいかな?

長い針を動かしてね」と言うと、必ずといっていいほど、長い針を数字の1のところ、

つまり5分の位置に動かします。

 

見えている数字につられてしまうということもあるし、

長い針だから、一度に大きく動くだろう……カチカチ小さく動くのは短い針ではないか……

という子どもなりの判断が働いているからでもあるようです。

 

そこで、「長い針はお母さんの針。忙しくいっぱいお仕事するよ。

カチカチカチカチ。

この小さいめもりのところを、カチカチカチカチ……って」と説明して、

長い針の方が、小さいめもりを読んでたくさん数をカウントしていくんだな、

というイメージがつながりやすいように言葉をかけています。

 

とはいえ、言葉で説明して納得しても、

問題を出すとやっぱり間違いを繰り返してしまうもの。

 

そこで、時計の長針を動かしながら、

「1分,2分,3分,4分……」とカウントして、「5分!」のところで顔を伏せて、

また、「6分,7分,8分,9分……」とカウントして、

「10分!」のところで顔を伏せていく遊びをすると、

長針の読み方をマスターできるようになる子は多いです。

 

 

時計のクイズ

 

「今は8時です。 長い針がひとまわりすると、何時になるでしょう?」


「長い針はふたまわりすると、何時になるでしょう?」


ちょっとレベルアップ。小学2年向けの算数問題です。


「午前8時から午前11時までは、何時間あるでしょう?」


「午前8時から午後2時までは、何時間あるでしょう?

 


基礎的な発見 1 <重い>

2016-04-09 08:05:31 | 子どもたちの発見

4歳のAくん、2歳の弟のBくんのレッスンの続きです。

紙コップで作ったかごを2つひもでつないだだけのエレベーター。

さまざまな場面で活躍します。

写真のようにひもをかけるブロックがなくても

椅子や家具の取っ手やカーテンレールなどにひっかけるとすぐに遊べます。

 

写真はエレベーター遊びの逆バージョン。

エレベーターを上げるために入れていたビー玉が入った重いコップを

人形が乗っている側のコップを引っぱることで持ち上げています。

ビー玉が入ったコップの下に紙箱と板で作った

てこ(一方が長いシーソーのようなもの)を置いています。

ブロックや積み木に平たいもの乗せるだけでも簡単に作れます。

 

エレベーターを持つ手をパッと離すと、ドスンッとビー玉入りのコップが下に落ちて

どらえもんが飛び上がるという案配です。

途中でAくんがいたずらして、ぼうろのお菓子を仕掛けていました。

食べ物をおもちゃにしたらいけませんが……

今回だけはしつけはちょっと甘めにして、いざ実験。

ぼうろがポンポンとびあがると、AくんとBくんまでピョンピョン跳ねながら喜んでいました。

 


ボードゲームが大好き♪

2016-04-08 16:58:46 | 幼児教育の基本

4歳のお兄ちゃんのAくんと2歳の弟のBくんのレッスンで。

Aくんは教室に来る度に『ステラテゴ』というボードゲームをやりたがります。

『ストラテゴ』は、軍人将棋の一種で、コマの力が数字の大小なのと

進み方がシンプルで遊びやすいためか、年齢を問わず人気があります。

 

2年前のユースホステルで遊んで以来、『ストラテゴ』は

Aくんの一番のお気に入りです。まだ勝つために戦略を練るような

本格的な遊び方ではないけれど、たくさんあるコマを自分で並べて、勝負に熱中しています。

Aくんはゲームが大好きで、お家でも動物将棋など

さまざまなゲームで遊び込んでいるそうです。

 

この日は、本当は弟のBくんのレッスン日。

ですから、先に『Erster Obstgarten』という

カラスが果物を食べにくる幼児向けのゲームをしました。

その後でAくんの『ステラテゴ』に付き合わされていたBくんは、

たくさんのコマを盤に並べて、コマ同士を何度か戦わせるところまでは

がんばっていたのですが……まだまだ試合を続けたいAくんを振り切って

カラスのゲームのところに飛んでいきました。

見ると、自分でていねいに果物をセッティングしていました。

 

AくんもBくんも、興味を持ったものに

真剣に関わる熱心さが育っています。

ゲームの前に、紅茶の葉で竜巻を作ったり

ところてんを作ったり、

かんきつ類の汁にリトマス紙をつけてみたりする

簡単な実験遊びをしたのですが、ひとつひとつの作業に

夢中になって取り組むBくんの姿が印象的でした。

こうした熱心さは、前回の記事で書いたように

今、夢中になっている「基礎的なこと」でじっくり遊び込むことと、

遊びに熱中するなかで「基礎的なこと」と「基礎的なこと」をつなぐ力を養うこと

身についてくるものです。

また、時間や環境の使い方に、子どもの意思や活かされるほど自由があることと、

身近な大人が、少しだけ手間をかけて子どもがやりたがることにつきあってあげることが大事だと思います。

 

 


年長さんたちの算数タイム

2016-04-07 08:13:54 | 算数

 

5と3が並んでいるのを見て、一瞬で

8とわかることと、あといくつで10か言えることを

大事にしています。

年長のAくんとBくん。どちらもきちんと言えました。

 

8+4=

といった繰り上がりのある足し算も、一通りできていました。

 

そこで、少しレベルアップ。

「カメいっぴきが10円です。

カメを8ひき買って、後からさらに4ひき買うと

全部でいくらになるでしょう?」

 

いっしょに、10円、20円……とカウントしていって、120円

という答えにたどり着くと、ふたりともとてもうれしそうでした。

 

次に、

「カメいっぴきが100円です。

カメを8ひき買って、後からさらに4ひき買うと

全部でいくらになるでしょう?」

「カメいっぴきが1000円です。

カメを8ひき買って、後からさらに4ひき買うと

全部でいくらになるでしょう?」という問題にもチャレンジしました。

 

 

 


相談 「子どもとする工作が発展しません」 3

2016-04-05 23:57:40 | 工作 ワークショップ

先日、小学3、4年生の子のレッスンを見学しておられた親御さんが、

「サピックスの問題など複雑で難しいと感じる問題でも、

よく見ると基礎的なものを組み合わせただけ。」

「最レベ問題も基礎的な問題を二段階以上に組み合わせた問題になっている。」

「折り紙問題は一見すると複雑そうに見える中に、基礎的なものが隠れていて

それをみつけるだけ。」といった気づきをコメントしてくださいました。

また、「中学入試問題(あまり見たことはないのですが、想像では)は

遊び込んだ子供が意外に得意なのではないか。

私の学生時代のゼミは、一見他のゼミより卒業するのが難しそうなゼミなのに、

どういうわけか(私以外)遊び込んだ、芯のある、他にレールを敷かれることを

好まない、癖のある?人たちが集まった。」といったことも

書いてくださっていました。

 

コメントを読んで、

わたしはこれまで誤解がないようにうまく文章にまとめることができなかったけれど、

わたしが考える「発展」は、

この親御さんが学習について気づかれたことと非常に近いように感じました。

 

つまり、「発展」といっても、

言葉から連想されるようなしていることをどんどんレベルアップしていくものでも

後の学習に役立つ知識にリンクさせていくことでもないのです。

 わたしは、子どもが、今、夢中になっている「基礎的なこと」でじっくり遊び込むことと、

遊びに熱中するなかで「基礎的なこと」「基礎的なこと」をつなぐ力を養うことこそ、

「発展」だと考えています。

 

子どもとの工作が、作ったらそれでおしまい、となるのは、

今、子どもが夢中になっていることやできること、

見つけたことや興味をそそられていることなどに、

発展の種を見ようとしないからかもしれないと感じました。

 

前回の記事で、こんなことを書きました。

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この工作で発展させているのは、

「高さの利用」「傾きの利用」「重さの利用」「形の利用」などです。

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子どもの周りは、こんな風に発展の種にあふれています。

また、子どもは、自分にぴったりあった発展の種を見つけ出すのがとても上手です。

 

次回に続きます。

相談 「子どもとする工作が発展しません」 2

2016-04-05 22:41:39 | 教育論 読者の方からのQ&A

前回の記事で、---

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子どもの「絵本にでてくるものをつくりたい」という思いは、

絵本にでてくる「もの」が欲しいのではなくて、

絵本にでてくるものを通して、自分の想像力を膨らませたり、創造力を駆使したり、

思考力を使ったりしたいということなのだと思います。

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ということを書きました。

それについて、2歳半のAちゃんと3歳3ヶ月のBちゃんのレッスンの

様子から、工作を発展させていく時のヒントについて書かせていただきますね。

子ども自身の発見なり関心なりが初めにあって、子どもは物事に熱心に取り組み始めます。


この日、Aちゃんはひたすらブロックを重ねて高く積んでいました。

どんどん自分の背よりも高くなっていくブロックにご満悦のAちゃん。

ひたすら積む作業が一段落したところで、Aちゃんの物作りが発展するように

サポートすることにしました。

 

空き箱の裏にブロックをあてて、えんぴつで型を取ります。

こんな風に、実際にものをあててみて、サイズを確かめることは、

幼い子にも見てわかる技術です。

そうしてブロックの形の穴をあけたら、エレベーターのできあがり。

Aちゃんは、エレベーターを上下させて大喜びでした。

 

エレベーターの天井部分は、階段の隙間に差し込むと、

乗降りを橋渡しする部分になります。

 

さんざん遊んだAちゃんは、エレベーターを取りはずして、

はさみで切りはじめました。

改良したい部分があったわけではなく、

ただはさみを使いたいだけのようでしたが……。

そのため、エレベーターは最初の形より

あちこち切り目が入った不格好なものになりました。

でも、そのガタガタのエレベーターに、Aちゃんは、それまでにない強い愛着を

抱いていました。自分ではさみを入れたからです。

こんな場面の子どもの情熱を目の当たりにする度、安易に

「大人が思うよりよくするアドバイス」をしてはいけないと感じます。

人形たちを乗せては上げたり下ろしたりを繰り返していました。

 

 Aちゃんは、ままごと道具や人形よりも乗り物やメカニックなものを好む女の子です。

この頃は、お家の敷居の上でビー玉を転がして遊ぶのを一番喜んでいると聞いたので、

ブロックや紙筒でピタゴラ装置の遊びを楽しむことにしました。

 

↑前の記事で紹介した、ビー玉を集めながらレールを上っていく道具。

 

 紙筒をすべってきたビー玉を、紙コップで受けるコーナーを作りました。

紙コップには、ひもが貼ってあります。

ビー玉が入った後で、ブロックの塔にひっかけてあるひもを引くと

コップのエレベーターが上がりはじめます。

 

ひもを引くと、寝かせてあったコップが起き上がって

高いところにあがっていく様は、Aちゃんの強い興味を引き出したようです。

自分から進んで、コップにひもを貼ってエレベーターをもうひとつ

作ろうとしていました。

 

そこで、今度は、ひもの両端にコップをつけて、ビー玉が入ると

上って行くエレベーターを作りました。

 

夢中になって、ビー玉をコップに入れるAちゃん。

 

この工作で発展させているのは、

「高さの利用」「傾きの利用」「重さの利用」「形の利用」などです。

 

次回に続きます。

 


相談 「子どもとする工作が発展しません」 1

2016-04-05 07:56:23 | 工作 ワークショップ

工作についてこんな質問をいただきました。

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8ヶ月、4歳の娘がいるママです。いつもブログを読ませて参考にさせて頂いてます。特に小さい頃からあれこれ与えるのではなく、ゆっくりと子供の個性を認めてその子にあった発達で一緒に寄り添っていくような子育てをモットーに日々過ごしています。
今回、工作についての質問なんですが、娘と図書館に行って、絵本を借りて読むことが日課になっています。娘はその絵本に出ているものをつくりたがり、一緒に作るのですが、作っておしまいになってしまい、その後の発展につながらずいつもやきもきしています。
例えば、本の中で笛がでてきたので笛が作りたいと始まり、ネットで調べてストローで笛を作りましたが、それでおわり。お内裏様の尺を作りたいというので、折り紙で何度もおって尺を作ってお終いのような感じで消化不良の状態です。
先生の知恵をはいしゃくして、どのような発展ができるのか、少しヒントのようなものを頂けないでしょうか(^^;;長々と大変失礼しました。もしお時間頂けると幸いです。

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絵本にでてくるものをつくることは、とても魅力的な活動です。

でも、娘さんの「絵本にでてくるものをつくりたい」という思いは、

絵本にでてくる「もの」が欲しいのではなくて、

絵本にでてくるものを通して、自分の想像力を膨らませたり、創造力を駆使したり、

思考力を使ったりしたいということなのだと思います。


ですから、「○○が作りたいのね」とネットで検索したり、作り方の本を探す行為は、

あまりおすすめできません。

もしするとしても、親の頭と子どもの頭を自由に遊ばせてみた後で、

ちょっと新しい情報に心を開く程度で十分だと思います。

 

4歳くらいの子が、もの作りをする場合、

次のような頭の使い方を好みます。

 

① 時間の流れのなかでそれが変化する姿を楽しみます

たとえば、「なえ」でしたら、絵本によって、「ぐんぐん大きくなって……」と

育つ様子が描かれていたり、

「春が来て、暑い夏がきて、秋がきて、寒い冬がきて……」といった季節による変化が

描かれていたりするでしょうが、

工作材料を使って、そうした変化を楽しむといいかもしれません。

(たとえば、紙をちぎって、雪を降らすなど)

 

②探すこと、見立てることを楽しみます

材料になりそうなもの、形や雰囲気が似ている素材を子どもと探して、

それに見立てるくらいが楽しいです。笛でしたら、

ストローを1回切るだけで「笛」ということになるのもいいです。

 

③ さまざまな立場の異なる登場人物が、そのものにどう向き合うか、

どんなコメントをするかを面白がります

発展させることをものを上手に作ることや、

ものを作りながら何か教えることに絞る必要はありません。

作ったものをごっこ遊びの小道具にして、

お家にある人形等にそれについてコメントさせると、子どもは知恵を絞って返答します。

たとえば、尺のようなものも、「それは、遠くをのぞくものかい?」と

明らかに間違ったことをたずねる人形がいたり、

「ぼくは尺じゃなくて、○○(別の昔の道具)がほしい」という人形がいたりする

ごっこ遊びを楽しむと、深い興味につながっていきます。

 

④ 自分にできる技術で、それを作りたがります

「粘土を丸める、切る、折る」等、子どもが自分でできる技術で

作れるよう見本を工夫してあげるのがいいと思います。

子どもにできる基本的な技術が分からない場合、

虹色オンライン教材のサンプルページ

http://nijiiro.lekumo.biz/kousakusample/ 

のもくじ欄 (購入していない方も、もくじ欄は見れます)を参考にして

いただくといいかもしれません。

 

⑤ 自分の気づきや発見を表現したがります

 「あっ、ここに穴があいている」「こことんがっている」など、

子ども自身が気付いたことを

最も重要なこととして、もの作りの中心に据えます。

 

もう少しくわしく書きたいのですが、レッスンの時間が近づいたので、

今晩か明日に続きをアップしますね。





幼い子たちの工作で気をつけるポイント

2016-04-05 07:53:19 | 工作 ワークショップ

幼い子たちといっしょにする工作で気をつけるポイントを紹介します。

 

一番大事なのは、大人の満足のための工作にしないということです。

子どもが美しい出来栄えに気を配って

作品を作るようになるのは、

さまざまな段階を経た後です。

 

最初は、「切る」という楽しさや「切る」ことで可能になることに気づくこと、

「貼る」ことでできることや「貼る」方法に気づくこと、などが重要です。

 

そのため、出来栄えに気を配らず、作りをできるだけシンプルにして、

子どもの気づきをうながすようにしています。

 

たとえば、こんな工作があります。

箱をふたつ貼りつけただけの

「パクパクさん」「こわいこわいガブガブかぶるワニ」といった工作は、

1~3歳の子たちを夢中にさせます。

手動なので、1っか所にテープを貼れば、できあがり。

口を開いたり閉じたりして、相手の手をかじる真似をして遊びます。

 

幼い子たちには、セロテープよりも養生テープや布テープがお勧めです。

手で切ることができるし、

1っか所貼ると、しっかりつながるからです。

 

 

ティッシュ箱にラップの芯を貼っただけの「滑り台」

 

こうした1手順でできあがる工作は、幼い子たちに次から自分で作ってみようとする態度を育てます。

大人にしたら、「これが工作?」と思うものも、

子どもにとって、材料を選び、貼る場所を考え、自分で道具を扱うのは

難しいものです。

 

もし上手に作れるようになったら、

パクパクさせる人形にゴムを付けて、手を離すと開けた口が閉まるようにしたり、

滑り台に色画用紙を貼ったり、仕掛けをつけたりします。