前回の記事で次のようなことを書きました。
------------------------------------------------------
ひとことで、「見る範囲」「考える範囲」がわからないために新しい問い方をされるとそれまでできていたことが全くできなくなる、といっても、
その子が自閉傾向がある子(広汎性発達障害、アスペルガー症候群などの診断を受けている子)か、知的障害のある子か、LDを持っている子か、ADHD傾向がある子か、さまざまな問題を重複して抱えている子か、
一般的な子ではあるけれど日常体験や遊び等が極端に不足している子かによって、困り方も異なるし、対応の仕方も違うものになってくると思います。
----------------------------------------------------------------
自閉っ子の場合、記憶力がいいので、自分が記憶している方法とは異なる解き方にぶつかると、それまで作りあげてきたルールが崩れてわけがわからなくなる、
あいまいな部分を含むものは、不安で手が出せなくなる、などの理由で混乱することがよくあります。
一方、知的なゆっくりさんの子の場合、ルールに気づけない、教えてもらい定着するまで付き合ってもらわないと、あたり前のように思われることも理解しにくい、ということができない原因となるようです。
たとえば、たいていの方は、
「はるこさんがおりがみを3まいもっています。いもうとののぶこさんは2まいもっています。
おともだちのたろうくんは5まいもっています。
はるこさんとのぶこさんとたろうくんのおりがみをあわせると、なんまいになりますか」
という問題があれば、
「はるこさんが~なんまいになりますか」まで読んでから答えると思いますよね。
でも知的ゆっくりさんの子のなかには、(設問一)と書いてある後のどこからどこまでを読んで、どれとどれについて考えて、答えを出すのかということに気づいていない子がいるのです。
「読んでね」というと読むけれど、読み終わってから「何が書いてあった?」とたずねると、首をかしげて、ひとつも覚えていないこともあります。
記憶するのが難しいということもあるのですが、「読む時は、ちゃんと読んだことを考えながら読むのよ。ここ、ここ。頭で覚えておくのよ」と説明してはじめて、
「あ~読むって、字を言っていくだけじゃなくて、何が書いてあるかわかろうとすることなんだ」と気づくことも多々あるのです。
また、読んでもの全てが考える範囲ということを知らなくて、設問の最初に、3と2という数字が出てきた時点で、「3+2だから5」と言ったり、
この問いについて考えるということもどこかへ行ってしまって、「えっ、19?えっ、じゃあ、36?」と問いとは全く関係ない思いついた数字を答えたりすることもあります。
とはいえ、それほどまでにわかっていないのかというとそうでもなくて、「今読んでいた問題のどこからどこまで見て、考えるの?」と問いかけて、
指で問題の範囲の枠をなぞらせると、ちゃんと解けるようになることがあるのです。
先日、こんな間違いをした子がいました。
上の段の文字と、その文字を入れ替えてできる言葉を線でつなぎなさいという問題。
上の段に「りあ、かいす、だんぱ」といった文字が並び、
下の段に「ぱんだ、すいか、あり」といった言葉が並んでいます。
当然、「りあ」と「あり」 「かいす」と「すいか」 「だんぱ」と「ぱんだ」を線で結んでいくのですが、
その子は、「りあ」と「ぱんだ」「かいす」と「すいか」「だんぱ」と「あり」を線で結んでいました。
解いている間中、上の文字と下の文字しか見ていません。
そこで、「この問題はどこからどこまで見るんだったかな?」とたずねて、指で見る範囲をなぞらせるようにすると、「あ~そうか、そうか」と言いながらきちんと結びなおしていました。
この子は絵を描くのがとても苦手で、目や口の位置なども髪の毛の上の方にちょこちょこっと書き込んで「できたできた」と言います。
描く前に顔全体を指でなぞらせて、目鼻口などを指先でチョンチョンと確認させてから、描く作業に移る、といった配慮が必要なのかもしれません。
自閉傾向などはないけれど知的な面での問題を持っている子は、人と関わりながら何度も繰り返し練習するのを嫌がらないし、繰り返し噛み砕くように教えると、ゆっくりながらにきちんとできるようになっていく面があります。
またひとつひとつバラバラには理解しているけれど、それらがつながっていないだけ、ということもあります。
教える時に言葉だけで教えずに手の平や指を使って体感でマスターさせるようにすると覚えやすいようです。