虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

遊べない子は、遊びに必要な技術を習得していない

2017-11-23 00:33:24 | 幼児教育の基本

 「子どもは遊びの天才」なんて言われますが、

実際には、遊ぶのが苦手な子、遊び方が不器用な子が

たくさんいるんじゃないかな?と思います。

 

子どもたちが心の底から楽しそうに真剣に遊び込むことができるようになるには、

いくつか体得していかなければならない技術のようなものがあると感じています。

 

遊ぶのに技術を体得しなくちゃならないなんて

おかしなことを言うように聞こえるかもしれませんね。

でもやっぱりいると思うんですよ。上手に遊ぶためのワザ!

 

目新しいおもちゃをちょっと触ってはうろうろするだけだったり、

遊び方の説明を聞いて、ちょっとうまくいかなくても何度か試してみるほどに

ひとつの物に根気よくつきあうエネルギーが乏しかったり、

遊びがワンパターンだったり、幼なかったり、依存的だったり、

友だちとふざけたり物を取り合ったりするばかりで

遊びが発展しなかったりする子っていますよね。

 

そうした遊び方は性格や能力に起因しているように思われがちです。

もちろん、それらの影響も大きいはずです。

 

でも、それとは別に、

「遊びに必要な技術を持っているかどうか」というのも

遊びの質と密接に関わっているのではないでしょうか。

 

では、「遊びに必要な技術」って、どんなものなのでしょう?

 

まず最初に大事なのは、

「何かとしっかり関わっていける力」をつけることかもしれません。

ひとつの遊びに愛着を抱いて、ひとつの活動を通して、

「面白いな、楽しいな」という気持ちを持続していくことができるようになることです。

 

遊びというのは、おもちゃがあって、それをいじってさえいれば

発展していくわけではありません。

楽しく遊ぶには、「いろんな形で想像力を使ってみる」という

実際に自分の頭と心を使って遊んだ体験が必要です。

遊びの世界で自分の頭を使えるようになっておかないと、

おもちゃがあるから、遊具があるから、楽しめるわけではないのです。

子どもは、自然に、物を何かに見立ててみたり、ごっこ遊びに興じたりするものですが、

大人の接し方やおもちゃが子どもの想像力を枯らせてしまったり、

奪ってしまったりすることもよくあることです。

また、もともと想像力に弱さがあって、ていねいに育んでもらわないと、

自分から使おうとしない子もいるのです。

 

環境と大人の役割は大きいです。

 

 

 
 
想像力だけでなく、思考力を遊びの中で活かしていく方法を習得すれば、
遊びはどんどん魅力的なものに発展していきます。
それでは、写真のブロック遊びをしている子どもたちを例に挙げて、
これまで書いてきたことを具体的に説明させてくださいね。
 
5歳と3歳の子たち、5人の遊びの風景です。
 
ひとりの男の子が電車のおもちゃを出してきて、ただ前後に動かしたり、
好きな電車を集めたりして遊んでいました。
遊んでいました……といっても、電車をいじっているだけなので、
それほど面白そうでじゃないのですが、飽きると新しいおもちゃを探しに行って
お気に入りに加えることで、本人の中では遊びが成り立っているようでした。
 
お家で、そうした遊びを遊びと思っている子がたくさんいます。
 
おもちゃをしばらくいじっていると、「片付けなさい」とお母さんに言われ、
片付けると、次のおもちゃが出したくなり、
出してきて触っているうちに、次の「片付けさい」という指示が来るということを
エンドレスに繰り返すうちに、
「遊び」という活動が、「赤ちゃん時期の見て触って満足」という段階から、
少しも発展していない子がたくさんいるのです。
 
電車のおもちゃを出してきて、ただ前後に動かしたり、好きな電車を集めたりして
遊んでいた子に、「ブロックを使って、その電車の駅や線路を作らない?」と誘うと、
少しとまどった顔をしながらうなずきました。
 
そこで、「ほら、前に、長い長い道路を作ったことがあるわね。
どんどん板をつないでいって」と言うと、
横でそのやりとりを聞いていた子が、パッと顔を輝かせて、
「あぁ、前にやった。もっといっぱい板がいる。もっともっと長くなくちゃ」と
言いながら、ブロックの板を並べだしました。
 

↑と↓は前にブロック用の板を並べた時の写真です。

 

↑ こんな風に道路を作って遊んだ楽しい体験を思い出したようです。

 

わたしが列車を走らせるためにブロックを横につないでいく見本を見せると、

他で遊んでいた子らも集まってきて、長い線路を作り始めました。

 

こうして手を使ってする作業に没頭し始めると、

子どもの態度は素直で落ち着いたものになっていき、

同時に頭の中はいきいきと活発に動きだすようで、

意欲的でよく練られた考えや言葉が出てくるようになります。

 

線路をつなぎ終えたとたん、Nゲージを走らせてみてから、

「そっちとこっちとで発車したら衝突しちゃうよ。

こっちの線路は、こっちからあっちに行って、あっちに着いたら

戻ってくるようにして、

あっちの線路は、あっちからこっちに行って、戻ってくるようにしたら?」と

言う子がいました。

すると別の子は自分の好きなように走らせたかったようです。

線路に1台だけ走らせるのでは嫌らしいのです。

 

そのため何度かNゲージが衝突することになり、言い合いになりかけたものの、

「それなら、連結したら?」という意見が出て、問題が解決しました。

Nゲージをどんどん(セロテープで)連結すると、長い1台の列車になるので、

1台ずつを行き来させているのと同じになったのです。

 

そうして遊び出すと、ここが終点、こうやって切符を買って……とごっこ遊びを広げる子、

駅で電車に乗る人が住んでいるお家を作ってストーリーを膨らませる子などが出てきて、

遊びが広がっていきました。

 

遊びって、ある程度、「ああ疲れた」「やるだけやった」というところまで

自分の身体なり、頭なりを使いきらないと、楽しさが湧いてこないものなのです。

その「やるだけやった」は、その時期その時期の子が

やっているうちにどんどん楽しくなっていって、「もうちょっともうちょっと」と

自分の限界までやり遂げないと気がすまなくなっちゃうような活動であること、

五感にとって気持ちいいこと、目で見て満足できるものであることが大事です。

 

だからといって、

わざわざこういうおもちゃを買いそろえなくちゃいけないということはなく、

お家にあるもので十分だと思います。

 

今回の「つないでつないで長く長くしていく」という活動は、

子どもにとって楽しくて達成感のある活動のひとつですが、

ブロックの板がなくても、下の写真のように「柵だよ」と言いながら

ブロックを置いていくだけでも、子どもにしたらさまざまな想像力を

掻き立ててくれりものなのです。

 

↑の写真の作品を作った子は、教室の端から端まで柵を付けた後で、

おもむろに立ちあがると、

しみじみと自分の作り上げた作品を眺めながら、

「どうして、こんなにすごいのが作れちゃったんだろう?」とつぶやきました。

 

置いていくだけ、並べていくだけ、囲むだけでも、道路ができ、

線路ができ、工事現場ができ、公園ができます。

そうした作業に熱中するうちに、想像力がいきいきと働き始めます。

 

「新しいおもちゃを出して、ちょっと触ってはお終い」という遊び方をしていたら、

自分の想像力を使うところまで行きつかないのです。

 

そうして想像力を働かせて遊んでいると、次には、

「上から電車を眺める駅を作りたいな」「これは特急で、こっちは回送で……」

「こういう風にしたい」「ああいう風にしたい」と

今度は思考力を働かせて、遊び始めます。

 

↑ 電車をくぐらせようとしたら、人形がトンネルの屋根にあたってしまうから

トンネルを高く作り直しました。

 

どんどんどんどん線路を長くしていく遊びから、

「地下鉄が上の駅のところに登って行くようにしたい」という願望が生まれ、

苦労してだんだん高くなっていく高架を作りました。

 

どんどんつないでいく楽しみも、

お城のなわばり図を作るという意味を意識しながら作ることで、

昔の人の知恵への関心が高まり、

自分たちもあれこれ知恵を絞って遊びこむことができました。

 

↑通ろうとすると、橋が崩れる仕掛け。

 

どんどん並べて、どんどん乗せているうちに、いろいろな物語が生まれていました。

 

どんどんどんどんつないでつないで……に熱中していると、こんな素敵な街になった

こともあります。

 

夢中になって遊ぶには、簡単にすぐできて、何度も繰り返したくなるような作業を

思い存分やることができる環境が大事だと思います。

公園でする砂遊びでも、お花を絞って作る色水遊びでも、何でもいいのです。

そうした身体を使って集中する活動を洗練させていきながら、

それがごっこ遊びにつながっていって、想像力をたっぷり使う機会が生まれるように

サポートしてあげることが大事だと思っています。

また思考力を使って次々生まれてくる願望を言葉にしたり、それを達成したり、

問題を解決したりする楽しさをたくさん体験させてあげるのも

とても大切な身近な大人の役目だと考えています。 


未完成と失敗に向かって進んでいく時期に 4

2017-11-21 20:18:03 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

「未完成と失敗に向かって進んでいく時期」の前の完成度の高い作品を作る

姿をちょっと紹介しますね。

 

小学2年生のBくんが、「今日作りたいと思うものを書いてきた」という

メモを見せてくれました。

「教室に材料がなかったり、できないものだった場合のために、第4候補まで

書いてきた」とのこと。

メモを見ながら、お金の問題、材料の問題、時間の問題などを話しあううち、Bくんは

「ロボットとかは作りたくても難しいかもしれないから、第3と第4は、

紙とかストローでも作れるものにしたんだよ」と何をしたいか考える時点で

実現可能な案も含めていたのだと、自信満々でした。

「観覧車は硬い紙とかでいいんだ。そこに絵を描くから。回るようにするんだ」

とのこと。

 

まず最初に観覧車を作ることにしたBくん。

重りを使って観覧車を回すことにしました。

大きめのビー玉を入れると、くるくる回転します。

「この観覧車、速すぎるな~」と言いながら

重りの重さを変えたり、高い位置から重りを入れてみたりして

ゆっくり回るように調整していました。

が、重りを少なくすると全く回らないし、重くするとくるくる回りすぎる

という状態でした。

 

「もう、これでいいや。観覧車には絵を描くことにするよ。

それより、この土台のところに、青くて薄いビニール袋みたいなひもがあるでしょ。

あれを貼って、水にしたいんだ。その上に舟を浮かべたいから」とのこと。

Bくんは、以前、教室で箱を使った船を作ったことがあります。

その時に作り方が気に入って、家でも何度も舟作りをしたそうで、

それは上手にちゃっちゃと船を作っていきました。

 

 

「この作り方なら、先生に教えてもらった作り方より簡単で、

きれいな形に舟ができるよ」とBくん。

「これで、第3の作りたいものも第4の作りたいものも一緒にできたよ」と喜ぶ

Bくん。面白いのは、工作の際に育っていきた段取り力を

算数の学習の時のしっかり使っていたことです。

 

8枚の細い5㎝の紙を1㎝ののりしろでつないでいく問題。

Bくんは、まず全てのテープの長さを足してから、重なっている部分を引く作戦で

問題を解いていました。

Bくんはかなりしっかりした小学2年生なんですが、

こうしたしっかりした子も、ある時期、(小学3年生くらいで)

未完成のままで創作を終わらせたり、話しあいだけで時間を浪費したり、

目に見える成果がないようなものごとで友だち同士で盛り上がったりする

ことがよくあるんです。

 

そうした大人から見ると停滞ともとれる時期が、どんな意味を持っているのか、

子どもたちの姿から考えさせられています。

 

前回までの記事に対して、教室の工作好きの女の子のお母さんから

こんなコメントをいただきました。

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 いつもお世話になります。
★の母です。

出来上がりの形ではなく、動きを目的にして、★が最近いろいろ作っています。
作品ではなくパーツだけで作業が終わってしまうので、見栄えは良くないし、失敗作も多いです。
スキー板、ビー玉coaster、自動販売機のボタンを押して出てくる仕掛け、輪ゴムを使ったジャンピングボードなどが、がらくたのようにそのあたりに転がっています。

「今度虹色教室にいったら、機械みたいなのを作ろう、あ、エレベーター教えてもらおう」と言っていました。

算数も今はわり算を理解するのが楽しいようです。

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スクラッチでプログラミングはいかが?

2017-11-19 19:35:20 | 通常レッスン

小3のAくんが、『スクラッチ』という小学生でも簡単にプログラミングできる

ソフトでゲームを作ったそうです。

「ぼくの作ったゲームで、みんなに遊んでもらいたい。ブログで紹介して!」と

頼まれました。

 

スクラッチでプログラミングをする前に、

ワイワイプログラミング

というNHKのサイトを見ると内容がわかりやすいです。

実際にスクラッチでプログラミングしたい場合、

ワイワイプログラミングの画面に右上の「SCRATCHサイトへ」のボタンを

押すか、をクリックしてください。

スクラッチのサイトの

「検索」のスペースに、

motonobuと打ち込んで、検索ボタンを押すと、

Aくんが作ったゲームがいろいろ出てきます。

みんなぜひ、遊んでください、とのことです。

できれば、感想がほしいそうです。

 

Aくんのお母さんの話では、スクラッチやティンカーというプログラミングに

関わる遊びをするうちに、Aくんは逆思考で問題を解決

するのがとても得意になったそうです。

虹色教室でも、最レベやトップクラス問題集の複雑な文章題を

スイスイ解くようになっています。


未完成と失敗に向かって進んでいく時期に 3

2017-11-16 14:20:18 | 日々思うこと 雑感

 「子どものあれしてみたい」「これしてみたい」につきあっていると、

そこには、子どもの自分ってどんな人間だろうという摸索があることが

見えてきます。

 

「何を選び、どのようなプロセスでそれをしたのか」には、

「私は誰で、どのような人間なのか」という問いかけと答え

散りばめられているんです。

だからこそ、3年生前後の子たちは、大人が想定して準備したものに

片っ端からケチをつけたくなったりするのかもしれません。

 

その都度、あなたはこんな人だったんですね、

あなたのこんな一面に触れました、と確認していくことも

ただ評価して矯正して、能力を高めていくだけではない

身近な大人の子どもとの関わり方の大事な形だと思っています。

 

最近は、子どもが「こんなことしたいな」と言った時点で、

系統的によくできあがった習い事などに放り込まれて、

外にあるレール上で、手取り足取り教えられてしまうのが常です。

それが悪いわけではないけれど、

そうやって外から効率的な学ばされる前に、

不器用に自分の方法で力の限りでやってみて、失敗してみて、

得るものの大きさを実感しています。

 

教室をしていると、2時間ほどの間にも、

その子もその子の周りにいた子もわたし自身も、本質的な何かが

心に刻まれる瞬間が何度も訪れます。

 

 近視眼的に眺めると、中途半端な仕上がりで、

今ひとつ成長を感じない時間を過ごしているように思えても、

少し離れたところから大局的に見ると、

ひとつひとつの機会がかけがえのない貴重なものだったと

気づくことがよくあります。

 

たとえば、こんな風にです。

3年生のグループに入っている2年生の女の子で、「こういう風にしたい」と

始めたことのほとんどが、未完成で不完全な形で終わることが続いている

子がいます。

この子の場合、3年生前後という節目に近づいて、そうした作り方をするように

なったというより、もともと、「わたしはこうしたい」という

強い意志のもと、身体よりも頭が前のめりになる感じで作業をするタイプの子です。

 

この子がいつも未完成で不完全な形で終わるのにはわけがあります。

というのは、「このようなに作りたい」という目で見てわかる形を目指して

作るのではなく、

「このような動きを作りたい」というイメージの世界でしかとらえられない

動きを生み出す方法を目指して作っているのです。

 

ですから、仕上がった時点で大人の目から、見栄えの良し悪し、完成未完成で

判断すると、いまいちなのですが、

そのプロセスは、さまざまな方法に思いを巡らせて、

試して、分析し、調整したという本人にすると大切な価値があるのです。

面白いのは、算数の学習でも、この子は物づくりの時同様、

失敗に強いというか、

上手くいっているのかどうかあいまいな状態でも

考え続けることができるという強みを使って

高い能力を発揮しているのです。

 

 

話の途中ですが、次回に続きます。

 

 

 

 

 

 

 


考える方法 と 行き詰った時の解決法 3

2017-11-15 21:31:31 | 日々思うこと 雑感

考える方法 と 行き詰った時の解決法 1

考える方法 と 行き詰った時の解決法 2 の続きです。

 

小4のAちゃんは考えることが得意な女の子です。

Aちゃんはできるようになったことを誰かに教えるのが大好きで、

「わかった」と納得するとすぐさま、

「先生、どうやって解くのか、わたしが説明してもいい?」

「○○ちゃんに、この問題がどういう意味が教えてあげてもいい?」とたずねます。

 

「まだみんな自分で考えたいだろうから、もう少し待ってね。

答えあわせの時間にはAちゃんが先生役をしてね。」

教室では、そんなやりとりをすることがよくあります。                                                            

Aちゃんは、「考えるのが得意だから教えている」というより、

「教えるのが好きだから、わかったことを、他の人にもわかるように説明しようと

するうちに、考えるのが上手になっていった」というほうが正しいように思います。

 

誰かに上手く説明したいから、本当の意味で理解するまで、

「わからない。こうじゃないの?ここのところがよくわからない」と言い続けて、

納得しない一面も、Aちゃんの思考力を鍛えています。

 

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何個かあるお菓子を3人で分けたら、それぞれの子のお菓子の数と

あまったお菓子の数が同じになりました。

最も数が多い場合、お菓子はいくつでしょう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

という問題で、最初Aちゃんは、

「こんなの問題がおかしい。だってそれぞれの子のお菓子とあまったお菓子が

10個だって、28個だっていいってことでしょう。多い場合だから。

だったら、答えは無量大数だもん」と言っていました。

そこで、お皿に小物を分けさせて、1個ずつの場合、2個ずつの場合……と

試していき、3個ずつ分けて、あまりも3個にしたところで、

「これだと、あまりじゃないよ。3個あるならみんなに分けてよって苦情がでるわね」

と話すと、「あーわかった!あーわかった、わかった!」と飛び上がって喜んで、

それでも納得がいかない友だちのBちゃんに説明しはじめました。

 

 

「何個かあるあめを7人の子で平等に分ける時、

それぞれの子が持っているあめとあまりが同じ場合どうなるか」という

Aちゃんの解説。

他の子らが理解した後も、Aちゃんは誰かにこれが説明したくて、

「先生、じゃあ、10人の子の場合で、先生に説明してもいいですか?」と

たずねたり、迎えにきたお母さんに教えたりしていました。

 

わたしはほかの子たちに、

「誰かに教えること、説明することで、『わかった』が、『すごくわかった』に

なるし、何度も教えて、何度も説明すると、

『すごくすごくすごくわかった』になるよ」と言いました。

 

それから、「心の中にまだクエッションマークがいっぱいなのに、

わからないって言ったら恥ずかしいから、わかったって言ってしまう時があるよね。

でも、誰かに説明できるくらいわかるまで、

わからない、どうして?って納得しないのは、少しも恥ずかしいことじゃないよ。

 

考える方法 と 行き詰った時の解決法 2

2017-11-15 15:41:09 | 日々思うこと 雑感

ピッケのつくるえほんのワークショップで小2のAくんが

『くりんの木さがし』というすてきな絵本を作りました。

下の写真は、作品の一部です。

 

りすのくりんの家であった木が倒れてしまったため、

新しい家にする木を見つけにいくストーリーです。

 

 

この作品を作る過程で、Aくんは最後のシーンを作った後で、

先に作ったシーンに戻って手を加えました。

「倒れて枯れた木と周辺の環境」と

「新しく探し出した木と周辺の環境」の変化を際立出せるためです。

 

Aくんは、下の「新しい家にすることにした木」のシーンと

上の「倒れた木」のシーンについて、他の子らに説明しました。

 

「(下の)この絵の木は、いろんな実がなっていて、花も咲いていて、

木のまわりもいろいろな草や花があって、どんぐりも落ちている。

初めは、(上の)前の絵にも、どんぐりとか草とかもっと置いていたんだけど、

最後の絵と比べた時に、どんなふうにちがうかわかるように、

きのこのついている切り株と草だけにしたんだよ。

青い倒れている木は枯れているから青いんだ」

 

最後の作業を終えてから、

それまでしたことを振り返って、おかしな部分はないか、もっとよくなる方法はないか、

と考えてみるのはすばらしい知恵ですね。

 

工作をする時も、算数や他の学習をする時も、とても役立つ頭の使い方だと思います。

 

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年中のBちゃんの頭の使い方は、まるで見ているものに吸い込まれてしまうほど

真剣に物を眺めて、相手の言葉に全身全霊で耳を傾けることから始まります。

 

Bちゃんは、誕生日のプレゼントにシルバニアファミリーのお家を

買ってもらう予定だったそうです。

でも買い物に行った先で、上の写真のような

広げるとお城の中とお庭があらわれるポップアップ絵本を見つけて、

「どうしてもこれがほしい、シルバニアのお家よりもこっちがいい」と

言い張ったのだとか。

Bちゃんは工作が大好きなので、プレゼントにこの絵本をもらうやいなや、

「これと同じものが作りたい」と言いました。 

といってもBちゃんの手に余る大掛かりなポップアップの仕掛けです。

そこで、「虹色教室で作る」という流れになりました

 

Bちゃんといっしょに長い間、うっとりとこのポップアップ絵本を眺めた後で、

「Bちゃん、どの部分が作りたいの?どこがすてきだと思う?」とたずねました。

Bちゃんは庭にある六角形の噴水と植物で作った迷路を指さしました。

 

Bちゃんの指さすそれは、とても魅力的なポップアップの仕掛けでした。

 

「六角形の秘密」とでも名付けたいような

六角形という形を生かした仕掛けなのです。

 

作り方は単純です。

紙を帯状に切って折って、六角形のわっかを作ります。

 

六角形はふたつの向かいあう辺が平行ですよね。

Bちゃんとは、「平行」のことを、手のひらと手のひらの間に少し隙間を開けて

向かいあわせて表現しています。

向かいあわせの平行な辺の上も下も山の形に辺がつながっていますから、

それがぺったんこになったり広がったりするのです。

 

この平行な辺と辺をセロテープでとめて、他はとめません。

すると、とめていない部分の辺が開いたり閉じたりして、

ぺったんこに折りたたまれたり、六角形に広がったりするのです。

 

できた部分はプレゼントとしてもらった絵本に比べると、ほんの一部です。

でも、Bちゃんは、心から満足した様子でした。

真剣に、ポップアップ絵本を覗きこみながら、

「次はこことここを作る」と夢を膨らませていました。

 


考える方法と行き詰った時の解決法 1

2017-11-14 13:13:04 | 算数

過去記事です。

年長のAくん、Bくん、年中のCくんの算数の時間にこんなことがありました。

サピックスのぴぐまりおん(1・2年生)の『のりものけん』という問題を

解いていた時のことです。

この問題は、園児にはいきなり解くのは難しいので、問題を解く前に、

12枚綴りの切りとることができるチケットを作り、

おもちゃを並べて作った遊園地の乗り物を選んで遊びました。

 

コロコロカー    のりものけん 2まい

コーヒーカップ   のりものけん3まい

メリーゴーランド  のりものけん 4まい

グライダー      のりものけん6まい

ジェットコースター  のりものけん8まい

という決まりです。

 

「グライダーに乗りたい」と言って6枚の乗り物券を切りとって渡し、

残りの6枚で何に乗ろうかと考える……

という遊びをしてから、ワークの問題を読みます。

 

ワークの問題を読む時、一区切りごとに、「どういう意味かわかる?」とたずねて、

理解度を確認しています。

 

「みんなは ゆうえんちに きています。どういう意味かわかる人?」

「はい、みんながゆうえんちにきたってことでしょう?」とAくん。

「そうよ。みんなっていうのは、すすむくん、だいちくん、かおりちゃん、

がんちゃん、めぐちゃん、けいこちゃんね。」

 

「のりものけんを 12まいずつ かいました。どういう意味でしょう?」

「のりものけんの、この点々って切ってある券が12あるから、

それを買ったってことでしょう?」とBくん。

 

「次は難しいよ。ちょうどなくなるように みんなはのりものに のりました。

ちょうどなくなるってどういうことかな?ちょうどじゃない場合ってどんなことかな?」

この質問には、Bくんが必死になって答えてくれました。

「あの、ジェットコースターに乗って8枚出して、それからコロコロカーに乗って、

もういっかいコロコロカーに乗って全部なくなるのは、

『ちょうどなくなる』ってことで、もし、ジェットコースターの後で、

コーヒーカップに乗ったら、ちょうどじゃない」

「そうね。Bくん。よくわかったね。コーヒーカップに乗ったら、

券が1枚だけあまるから、1枚だけで乗れる乗り物はないものね」

「のりものに 1かい のるのに ひつような のりものけんの まいすうは 

右のとおりです。意味がわかる人?右のとおりってどういうこと?」

「この右の絵のところの、コロコロカー2まいとかいうところでしょ」とAくん。

 

こんなふうに一区切りごとにわからない部分がないかていねいにたずねた後で、

『れい』をしっかり見るようにうながします。(『れい』を見て気づいたことを

言葉にしておくのもいいです)

 

「グライダーに 1かい、 コロコロカーに□かい のったよ。」と

すすむくんの言葉から、12枚のチケットの色を塗り分ける問題で、

3人とも考え込んでいました。

 

すると、Aくんが、「先生、ブロックを使ってもいい?」とたずねました。

許可すると、グライダーの6枚を除いた6枚分のブロックを持ってきて、

コロコロカーに何回乗れるのか考えて、きちんと解けました。

BくんもAくんからブロックを譲り受けて、解くことができました。

 

 

Aくんがブロックを使うことを思いついたように、考える方法のレパートリーを

いろいろ持っているといいですよね。

子どもたちが、考えるためにいいアイデアを思いついた時は

みんなでその良さを確認して、アイデアを共有できるようにしています。

 

 小2のDくんがレゴでコマを飛ばすマシーンを作っている時、こんなことがありました。

初めて、ギアや滑車を使ったレゴに挑戦したDくん。

解説書の絵を見ながら、意気揚々と作っていました。

中盤あたりに差し掛かった時、

「ずいぶんできたね。どう?面白い?」とたずねたところ、ため息をつきながら、

「途中でわかんなくなってきた。やっぱ、難しいな。」とつぶやきました。

どうするのかとしばらく様子を見ていると、「はぁ~」と深くため息をついてから、

何やら決意した様子で、「いいや!戻ろっ!」というと、

それまで作っていたパーツをバラバラにしだしました。

それから、説明書の3の図を指して、「先生、ここからやりなおすことにした」

と言いました。

「それなら、今度は、1手順終わるごとにあっているかチェックしようか?」

ときくと、「そうする」とのこと。

そうやって、1手順ずつチェックする間、わたしはチェックしている内容を

「穴の位置は、左から3番目、うん、あっているね」

「ギアとギアがきちんとかみあっているかがポイントよ。ちゃんとかみあって

いたらクルクル回るからわかるわ」などと、口に出して確認しました。

 

 

そうして前にため息をついていた中盤あたりに差し掛かった時、

Dくんは、「もう自分でできるよ。チェックしなくても大丈夫」と

自信ありげに言うと、最後まで自分の力で仕上げました。

Dくんはうれしくてたまらない様子で、

「もっともっと作りたい」と言っていました。

 

このコマ飛ばしマシーンを他の子らにも見せる時、

わたしはみんなに

Dくんが自分で考えた行き詰まった時の解決法について話しました。

「Dくんはね、最初、自分でどんどん、どんどん作っていったの。

でも、途中でだんだんやり方がわからなくなって、どうしたらいいか

わからなくなったのよ。

そうして、行き詰ってしまった時、Dくんはどうしたと思う?」

他の子らは首をかしげて聞いていました。

「Dくんは、こんな風にしたの。

まず、せっかく作ったブロックをバラバラにしていって、最初の方の3番目の図に

戻ってやりなおすことにしたの。

それから、ひとつの図を完成させる度に、先生のチェックを受けて、

ちゃんとあっているかどうか正確に確かめるようにしていたの。

簡単でわかりきっていることも、そういう意味があったんだなって

理解しながら進んでいったら、先に進めば進ほど簡単になっていって、

途中からは自分ひとりで全部仕上げることができたのよ」


未完成と失敗に向かって進んでいく時期に 2

2017-11-12 21:27:30 | 日々思うこと 雑感

子どもの「こんな風にやりたい」と「現実」の間を取り持って、

ああでもない、こうでもない、と話しあいを重ね、

実際、「じゃあ、こうする」と本人が納得してし始めたことを、

こちらとしては知恵を注ぎ込んで手助けするわけです。

 

それが、どうしてそんなに難しいのかというと、

こんな事情があります。

 

その年代より下の子たちは、「砂場があるから砂遊びをする」的な発想で、

やりたいことと環境がそこそこ結びついています。

 

また、やりたいことの背後には、自分の発達上の課題が隠れているので、

自分がやっていて心地よくて面白いことがしたいので、

技能的にできること、できそうなことが、したいのです。

 

でも、3年生前後のちょっと頭でっかちになってきた子というのは、

「他の子よりすごいものが作りたい」

「今までやったことがないことがしてみたい」というように、

環境とも自分の技量とも結びつかない

イメージだけを追いかけて、やりたいことを決めがちです。

 

そうした子たちが「やりたい!」ということは、わたしにとっても、

未知のことがほとんどです。

材料の準備もないので、さんざん探したあげくに、

「こんなものを使って、できるのかな?」から始めたり、

妥協案を求めて、子どもと話あいが続いたりします。

 

それにつきあう限り、わたしは「先生」とは名ばかりの

その世界の初心者です。

 

それでも、大人目線の完成を目指して、

することが決められていて管理されている場はいくらでもあるし、

「そんなの無理」と一蹴される経験もめずらしくないでしょうから、

一ヵ所くらい、その子の今の思いに、本気で関心を寄せる場があっても

いいんじゃないか……と、子らの迷走に付き合っています。

 

先日、コリントゲームを作りたがる子がいました。

何とかコルクボードがあったので、

それを板代わりにして釘を打って作ろうとしました。

すると、コルクボードだから、釘がぐらぐらするし、

後ろから釘が少し出て危ないのです。それを段ボールを貼って塞ぎます。

コルクボードって、こんな素材なんだ、と発見します。

それを見ていた他の子もコリントゲームを作りたがるのですが、

材料が薄い板しかありませんでした。

釘を打つと後ろにはみ出すので、こちらも段ボールを裏に貼って防ぎ、

釘というものは、ある程度の深さまで打ち込まないとはずれてしまうのだと

やって初めて気づきました。


ゴムで打つ部分を作るのは、こうしたらいいんだな、

と理科工作の本を参考にして、フックのついたねじを木の棒につけて

ゴムを通すと、玉を打つ部分ができあがります。

もう、それができた時点で、3年前後の子にすると、

お腹いっぱい状態で、時間切れとなります。

 

「子どもに何かを教え込む」というスタイルのビジネスからは、

かなりはみだした関わりですが、

子どもが自分の意志で選んだことを

知恵を絞りながら、何とかやってみるのを助けることは、

子どもが自分の考えを発見し、組み立てていく作業を

後押しすることになります。

 頭の中の壮大な計画と、現実にできることのギャップの間で揺れながら、

うまくいかないためにあきらめそうになる気持ちやイライラや

やりたいことがはっきりしない焦りなど、自分の心の中の葛藤をさらけだして、

目に見える何かを生み出していくプロセスの貴重さを思います。

 


未完成と失敗に向かって進んでいく時期に 1

2017-11-11 21:17:46 | 日々思うこと 雑感

↑ (写真は年長のAちゃんのノートルダム寺院のステンドグラスです。)

 

 

先日、マイコー雑記のマイコさん、Follow your bliss のたまきさん

たちとのチャットで、

教室のギャングエイジと呼ばれる年齢の子たちとの

関わりの様子をお伝えした時の文章を、ここにも

残しておこうと思います。

 

小学3年生くらいの子たちというのは、

急に世界に対しての視界が開けてきているのに、

身体はそれまで暮らしてきた世界にいるようなところがあります。

つまり、頭は世の中を知った風に眺め始めるのに、

身体は子どもの世界の住人そのものなんです。

 

そんなこの時期の個々の子どもの「こんなことをしたい」

「あんなことをしたい」という思いに付き合うのは

至難の技です。

 

「それはとうていできないでしょ」というようなものを作りたがるし、

こちらの妥当な提案はどれもこれも嫌がるのです。

時間内に完成するか、創るための材料はあるか、

作りあげる自分の技量があるか、は全く頓着しないで、

とにかく「すごいもの」

「工作の本に載っている難易度が高そうなもの」

「創るのにいったいいくらかかるの?と驚くようなもの」

を作りたがります。

コリントゲームを作りたがる子がいたとすると、

3年生に満たない子たちには、紙を使って満足のいく結果に

導く方法を提案して作ることができます。


でも、3年生は、「それはいやだ」と大人に否を突き付けたいのです。

 自分が知っている本当の物、やってみたいこと、

自分の考えをぶつけてきます。

 

大人の考えをコピーする形で何かするのは嫌なんだけど、

自分の考えで何かしようとすると、大人の手助けをたくさん必要とする、という

矛盾した年代の子たちです。

自立しようとして、自立に向けてのもがきに

大人の助けがいるのです。

 

 そうした時に、わたしは、「その日のレッスンの時間内での目に見える成果」とか

「親御さんの期待」といったものと、

「子どものやりたい」の間で、板挟みにあいながらも、

それこそ、未完成や失敗に向かって、全力で子どもを支えるような

流れとなることも少なくありません。

 

時間内には到底できるはずがないとわかっていたり、

この材料では、見栄えがかなり悪いものになると予想できたり

するけれど、

あえて、「こんな風にしたら、今あるもので、時間内に、完成度の高いものが

できあがるよ」とアドバイスするのは控えて、

子どもが自分で見つけて選んだこと、今やってみたいと感じていることに、

求められる分だけ手助けして寄り添っています。

それは「何をしている教室なのか」「何を目指しているのか」といった

教室の土台となっているものを揺るがすふわふわした時間でもあります。

 

次回に続きます。

 


12月16日(土)、17日(日)のユースに来ていただく方の発表です

2017-11-11 17:35:02 | 生徒募集 イベント参加募集

2月16日(土)、17日(日)のユースでのレッスンの追加募集に、

ご応募いただきありがとうございます。

 

部屋割りの関係等で、今回、来ていただくことができなかった方、

大変、申し訳ありません。

 

ご参加いただく方は、

 

TREEさん

けんちゃん母さん

K.Nさん

(親子で参加予定の方が子どもだけの参加に変更されたので、急遽、

もう一組参加いただけることになりました。

発表後なので、ご連絡いただくまで新しいブログの記事にひとことそえておくように

します)

 

の三組です。

 

お名前のある方はこちらのコメント欄に「お名前」「メールアドレス」

「電話番号」を記載ください。

非公開の状態で見て、連絡事項を送らせていただきます。