フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

12月29日(月) 晴れ

2008-12-30 02:44:46 | Weblog
  今週は、前半が2008年、後半が2009年、週の途中で年が替わる。いよいよ今年も大詰めである。冬休みというのは夏休みや春休みと違って、長さも短く、また学期の途中にあるので、授業のことは忘れて研究中心の生活というわけにはいかない。年賀状書きや、大掃除や、墓参りや、親戚との付き合いもある。それでも忙中に閑ありで、今年一年を振り返り、来年のプランを考えたりする時間は十分にある。これは私に限ったことではなく、日本中の人がそうなのだ。そこかしこで「よいお年を」の挨拶が交わされる。いまや数少なくなった共同体的感情が街中にあふれている。年末年始の散歩の楽しみはここにある。
  午後、妻にやっておいてねと言われた寝室と居間とダイニングとキッチンの蛍光灯のカヴァーの掃除をすませてから、外出する。自転車に乗って、池上の「甘味あらい」に行く。今年最後の贅沢あんみつを食べる(あとから磯部巻きも)。ちょうど店が混んでいる時間で、唯一空いていたカウンターの一番手前、入り口に近い席に座ったのだが、なんだか足元が冷える。入り口の引き戸から隙間風でも入ってくるのだろうか、それとも側で回っている換気扇のせいだろうか。いったん脱いで椅子の背もたれに掛けたハーフコートを膝掛け代わりにしたが、それでも寒かった。もしかして風邪を引いたのか。支払いを済ませ、店を出て、向かいの「蓮月庵」に飛び込み、きつね蕎麦を注文する。店内には石油ストーブが置かれていて、しばらくその前に立って暖を取る。ああ、暖かい。

         

         

  きつね蕎麦を食べてさらに身体が暖まったので、日暮れ間近の本門寺の境内を散歩する。初詣を前に露店の準備が始まっていたが、人影はまばらで、史上最大の作戦前夜のノルマンディーの海岸のようである。本堂にお参りし、手を合わせる。昨今の社会状況を考えると、「来年もよい年でありますように」とは祈れず、「来年は少しでもよい年になりますように」と祈る。

         

         

         

         

         

  自宅に戻り、自転車を置いて、駅の方へ散歩に出る(駅の周りには駐輪する場所がないのである)。ツタヤでリラクゼーション系のCD(宗次郎、喜多郎、久石譲)を4枚借りる。一泊二日と思ったが、店員が一泊二日の料金で一週間レンタルできますといったので、そうしてもらう。パソコンで文章を書いているときは集中力の妨げになるので音楽はまず聴かないが、フィールドノートの更新をするときは別で、音楽(ただし楽器演奏のみのもの)をよく聴く。有隣堂で以下の本を購入し、「カフェドクリエ」で読む。

  植田正治『小さい伝記』(阪急コミュニケーションズ)
  『カメラピープル みんなのまち』(ピエ・ブックス)
  香山リカ『親子という病』(講談社現代新書)
  橋本治『あなたの苦手な彼女について』(ちくま新書)
  鴨下信一『誰も「戦後」を覚えていない〔昭和30年代編〕』(文春新書)
  『勝間和代 成功を呼ぶ7つの法則』(マガジンハウス)

  夜、来年度の講義要項の作成に着手する。たくさん科目がある上に、今度から全15回の授業のシラバスの作成を求められているので、なかなか大変なのだ。どんなにきっちりとしたものを書いたとしても、授業は生き物だから、決してその通りにはいくはずがなく、たぶんそんなことはみんなわかっているはずなのに、『風のガーデン』のルイの偽の結婚式でルイとバージンロードを歩く貞美のように、わかっていないふりをして、求められるままにシラバスを作成するのである。