King Diary

秩父で今日も季節を感じながら珈琲豆を焼いている

読書中『A Prisoner of Birth』

2009年08月10日 23時53分22秒 | 読書
今日上巻を読み終わりました。

ジェフリーアーチャーは好きな作家です。

それは彼の出世作の『百万ドルをとり返せ!』で
実に巧みなストリーテラーぶりを発揮したからで
それを読んでから先を読む楽しみを感じさせてくれる
作家だとファンになっています。

日本でもたくさんのファンがいるのに、なぜか
彼が逮捕されて刑務所に入るようになってから
その人気も急落したようで、あれほど熱狂的に
新刊が出るたびに大宣伝をしていたのに、最近は
あまり話を聞かない存在でした。

刑務所から出てからヒットがなくなったかのような
ピークを過ぎた扱いでしたが、この本は体験した
刑務所暮らしも十分生かされた現代の岩窟王的な
物語で巧みなストーリーとイギリスの現代の法律
事情が解り興味深いお話です。

日本人としては、イギリスというと現代でも王室が
あり、社会保障がしっかりしているため社会が老朽化
した成熟した資本主義の国というイメージでしょうか。

私は、学生時代の知識より、最近のサッカー人気で
ワールドカップになぜイングランドとスコットランド
が出ているのか不思議でイギリスとはウェールズや
北部アイルランドの四つの国で出来た連合王国と
いうことを知るに至りました。

江戸時代に、各大名がそのまま残って天皇の下に
一つ一つの地域じゃなくて国だよといってひとつに
なったようなものでしょうか。

イギリスでは今でも貴族が残り、その分家柄やら
地域性やら色々と差別されるようです。そういう
古くからある領地と領民のような契約は今でも
あるらしくそれらを守り領主様のためのサポート
として法律制度もあるから裁判制度は古くから
あり、古いものを残すために様々な職業も綿々と
続いて残る結果になったのでしょう。

古い制度がいいとは限らず、古いものと新しいものを
整合させるためにまた新たな法律が必要になり、そのため
政治家も必要になります。古い法制度を守り、地域を国と
認めるその態度はEC連合でも積極的にリードするかの
ような位置の国かと思えば、ユーロにも参加しておらず
かつての主軸通貨たるポンドをなくしたくないのでしょう。

先進国で、王室もありかつては日英同盟という同盟国の
間柄で近しいものを感じる人も多いはずなのに、意外と
複雑な国で四つの国で出来ているということも知らない人が
多いのではないでしょうか。

首相にしても、サッチャー、メージャー、ブレアあたりは
すらすら出てきますが、今のゴードンブラウンはすぐに
でてきません。

それに労働党が政権をとってイギリスも変わるという話で
したが、イラクへの派兵やアメリカべったりは相変わらず
だという感じです。

イギリスもサブプライムまでは景気のいいのを一緒に享受
していたんですから当然といえば当然です。

なぜ日本だけバブル崩壊、失われた10年とさらにリーマン
ショックとずっと冷や飯つづきなのでしょうか。

逆に考えれば、日本やイギリスのようにいろんな法で
がんじがらめで、官僚制度がしっかりとした国は米国の
ような激しい競争の国にはなじめず、国際競争からも
はじかれていくということなのでしょう。

三位一体改革や郵政民営化など打ってきた政策がことごとく
国民のためだったのかという疑問ととにかく現政権NOを
言うことから次の日本を期待する国民に示されるマニフェスト
は余計不安を掻き立てるものばかりという混沌を抜け出せ
ない閉塞感に満ちた夏となっています。

そういう現代にあり、自分の運命とか理不尽な正義と法に
対する救いはこの小説のようなリセットと復讐なのでしょう。
閉じ込められたようなこの改善されない世の中に、こういう
破壊がひょっとして自分の人生でも逆転と転生があるのでは
という期待もちょっと持ったりして楽しくなります。

でも下手な復讐は悲しくなるだけです。

そこでアーチゃーの巧みな腕が発揮され、今後どのような
カタルシスに導いてくれるのかということになるのですが、
それは、百万ドルでも彼の腕は実証済みですから、後半の
下巻もこれから楽しみです。
コメント
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