金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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156:村上龍 『五分後の世界』

2012-12-11 10:56:04 | 12 本の感想
村上龍『五分後の世界』(幻冬舎文庫)
★★★★★

気がついたときには、見知らぬ場所を歩かされていた小田切。
彼が紛れ込んだのは、もといた世界より5分進んだ日本。
本土決戦後、日本は連合国によって分割統治され、
人口の激減した日本人は、地下に潜み、
ゲリラ兵として連合国と戦っていた。
地下の世界で、生き延びることだけを考えざるえない状況に追い込まれ、
小田切は誇りを持って戦う兵士たちと、「5分後の日本」のあり方を見て、
もといた世界とのギャップを目の当たりにする。

**********************************

おもしろかった!!
『半島を出よ』もおもしろかったけど、
苦手要素が少なかったのでこっちの方が好き。
誇りを失った現代日本および日本人に対するアンチテーゼとして
パラレルワールドの日本が描かれていて、
荒唐無稽な設定ながら引き込まれる。
決してユートピアではなく、差別もあり、限界もあり、
けれども人々は何か目指すもののために生きている。
そういう国の姿に魅力を感じてしまうのであった。

近現代史が好きな人は特におもしろく感じるんじゃないかな。
おすすめ!


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NHK大河「平清盛」レビュー48

2012-12-09 20:49:27 | NHK大河「平清盛」レビュー
「重盛が棟梁だったころにはまだマシだったのにネー」
「重盛が死んでからじゃなーい? 清盛が悪いことし始めたのって!」

と目の前であからさまに、麻呂たちからダメ棟梁認定をされた宗盛。
清盛からケリ入れられつつ、

「大叔父さんが死ぬって知らずにひどいこと言ったし、
 まともな元服の儀もしてもらえなかったし、
 平治の乱ではへなちょこで、頼朝いじめて怒られたし、
 どうせ重盛の兄上とはくらべものにならないダメ息子ですよ! 
 ダメ棟梁ですよ!
 でも棟梁だから言うけど、父上還都して!!」

と自らのぼんくらヒストリーを披露しながら、
還都の必要性を清盛に訴えるのであった。
きっとこれが宗盛の最大の見せ場。
この子、元服の儀のことでも
「ないがしろにされてる」と思ってたのね……。
重盛に反抗的な態度取ってたのも、
ここまで根強い「いらん子」コンプレックスがあったためだと思うと
かわいそうになってきた。


そして、徳子にも批判されてたし、宗盛の訴えが効いたのか、
ついに清盛は人生を賭けてつくった福原の都を
わずか半年で捨てることになるのであった。
実際どうだったかは別として、清盛は福原を
死んでいった人々から受け継いだ夢と認識していたので、
やるせないし、切ない。

……ここで終わっておけば、余韻のあるいい回だったのに!

**********************************
弁慶が語る清盛の武勇伝

鳥羽院と清盛のエア射殺ごっこの回想

頼朝のひとりエア射殺ごっこ

頼朝の清盛ヨイショ
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最後のこの源氏パート、本当に必要だったんだろうか……
個人的にはドッチラケだったよ。
ナヨナヨニートの面影もなく「我に従え!」と清盛みたいなことを言って
バージョンアップしていた頼朝だったが、ここはほんとアホっぽかった。
ひとりエア射殺ごっこ……ノリよすぎというか、感化されやすすぎる。
これがなくても、清盛の志が頼朝に受け継がれたことは
十分わかる気がするんだけど。

そして、一世一代の見せ場をつくった宗盛から重衡へ、
バカ息子ポジションは移譲された。
この子、前からこんなアホだったっけ?
忠清の発言について「何がいけないの? 父上えらいじゃん」と言う
前振りがあり、ラストで南都焼き討ち。
みんなが「どーすんの、もうこれ言い訳できないよ!」と
言ってるところへ帰ってきて、
「父上、やりました!」とポジティブ発言。
清盛が、「あ~もうダメだこりゃ」という顔した後に
重衡を褒めてたところで、
見ていたわたしは気分がずーんと沈んでしまった。
この子も、維盛&資盛と同じく、戦後育ちで
「うちの父ちゃんは偉いんだぞ!」
と思って育ったんだもんなあ……
(維盛と一歳しか違わないのか!

【その他いろいろ】

・相変わらず輝いている藤原経宗の顔芸。
 兼実にも顔芸が伝染。

・清盛の武勇伝=弁慶の不審人物ヒストリー
コメント (2)
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映画:『サマーウォーズ』

2012-12-05 08:59:02 | 映画の感想
映画『サマーウォーズ』(細田守監督)
★★★☆☆

高校二年生の健二は、夏休み、憧れの夏希先輩に頼まれて
アルバイトとして長野になる彼女の実家を訪れた。
夏希の婚約者を演じることになってしまった健二は、
祖母・栄を筆頭とする旧家の大家族の中で、
婚約者として数日間滞在することになる。
その夜、携帯電話に数字が羅列されたメールが届き、
数学オリンピックの日本代表になり損ねた健二は
その暗号解読に夢中になり、解答を送信してしまう。
翌朝、インターネット上の仮想世界OZが
大混乱に陥り、OZと連動した現実社会も
正常に機能しなくなっていた。

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『おおかみこどもの雨と雪』の宣伝なのか、
夏くらいにテレビでやっていたような?
見そこねたのでDVDで視聴。
見ているときはおもしろかったし、盛り上げ方もうまくて
ほろりと来てしまう場面もあったのだけど、
この家族がやってることって、結構、自分勝手よね……
墜落してくる小惑星探査機の落下地点を何も考えずに
ずらしてたけど、一歩間違えれば
死人が出るところだよ!

弱気で奥手だけど数学の天才、という
主人公の男の子がかわいい。


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NHK大河「平清盛」レビュー47

2012-12-02 20:52:01 | NHK大河「平清盛」レビュー
清盛も頼朝も同じく
「父の悲願を果たすため武士の世をつくる」
と言っているのに、それぞれが思い描く「武士の世」が
まったく別物である、というところがおもしろい。
義朝と、いずれ来る武士の世について語り合っていたシーンの
回想が入っていたけれど、あの時点で
「武士の力を示す、公卿たちを見返す」
という点で一致していたのであろう二人の「武士の世」は
その後、別のものになっていたんだよね。
清盛が変わってしまったのではなくて、
忠盛の代から、平氏の目指すところは公卿になることで、
それがうまくいってしまったから、清盛の国づくりは
そのまま「体制下での権力」を目的にして続行。
一方、「体制下での権力」闘争に敗れた源氏は、
別のものを模索せざるを得なかった、ということで。

忠清に死を覚悟で
「平家はもはや武門ではない! 殿自身が武士ではない!」
と言われて怒った清盛は、忠清の首を刎ねようとして
いつもの宋剣を扱いきれずにひっくり返ってしまうのであった。
「心の軸が体を支え、心を支える」
という忠盛パパの言葉の回想が入り、
清盛の心の軸がぶれていると暗示して今日は終了。
前回立ち直ったかと思ったのに、さらに突き落す容赦ない脚本。
「過去のあのエピソードがここにつながった!」
という構成の妙は『清盛』ではもう何度もあったので
驚かないんだけど、大河でよく描かれる
「非情にならなければならない」
という点以外の、権力者の悲しさを描いているところが
第三部のおもしろさよね。

ピークを過ぎて命運に陰りが見え始めた平家に比べ、
これから権力を手に入れるぞ!と発展途上の源氏は
敗走の後も前向きな雰囲気。
大軍を率いてやってきた尊大な上総広常をツンツンモードで
追い返し、「大将の器」アピールを始めた頼朝。
20年近くニートやってたのに、なにこの成長ぶり。
政子王子に「私を明日へ連れてって!」とか
姫みたいなこと言ってたくせにね!
しかし、「平家をやっつけるぞー! オー!」と
一致団結して盛り上がり、新しい世の中を目指して話し合ってる
この北条や三浦たち坂東武者も、鎌倉幕府ができてからは
権力闘争に明け暮れ、互いに陥れあって滅びていくのだと思うと
なんだか切ないね。


【その他いろいろ】

・先祖自慢した後で、「昔は昔、今は今!」という景親。
 ひょっとしてツッコミ待ちだったのか?

・義経「兄上のところに行きたいです!」
 秀衡「戦の才をよいように使われ、捨てられるだけ。命さえ危うかろう」
 予知能力者・秀衡。まるで後世の人が考えたようなセリフだな!

・義経&弁慶主従のウィリアム・テルごっこ
 →秀衡「あきれた主従じゃ」
 ほんとですね。

・維盛が総大将に任じられたことについて、
 何やら思うところありそうな宗盛。
 重盛の死後は、維盛が後継者争いの対抗馬だったんだもんね。
 この子はずっとコンプレックスを抱えたままなんだなあ。
 そして忠清の発言に
 「やっべー、どうしよ!? どうしよ!?」
 って顔してるところ。
 ちょっとしたカットにもキャラがちゃんと出てる。

・義経、特に可愛いと思ってなかったんだけど、
 「弟」な表情は可愛かった。

・梶原景時のエピソードはちゃんとやったのに、
 範頼と全成は存在自体がスルーされている。
 阿野全成は永井路子の「悪禅師」が印象的だった。

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