金木犀、薔薇、白木蓮

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NHK大河「平清盛」レビュー47

2012-12-02 20:52:01 | NHK大河「平清盛」レビュー
清盛も頼朝も同じく
「父の悲願を果たすため武士の世をつくる」
と言っているのに、それぞれが思い描く「武士の世」が
まったく別物である、というところがおもしろい。
義朝と、いずれ来る武士の世について語り合っていたシーンの
回想が入っていたけれど、あの時点で
「武士の力を示す、公卿たちを見返す」
という点で一致していたのであろう二人の「武士の世」は
その後、別のものになっていたんだよね。
清盛が変わってしまったのではなくて、
忠盛の代から、平氏の目指すところは公卿になることで、
それがうまくいってしまったから、清盛の国づくりは
そのまま「体制下での権力」を目的にして続行。
一方、「体制下での権力」闘争に敗れた源氏は、
別のものを模索せざるを得なかった、ということで。

忠清に死を覚悟で
「平家はもはや武門ではない! 殿自身が武士ではない!」
と言われて怒った清盛は、忠清の首を刎ねようとして
いつもの宋剣を扱いきれずにひっくり返ってしまうのであった。
「心の軸が体を支え、心を支える」
という忠盛パパの言葉の回想が入り、
清盛の心の軸がぶれていると暗示して今日は終了。
前回立ち直ったかと思ったのに、さらに突き落す容赦ない脚本。
「過去のあのエピソードがここにつながった!」
という構成の妙は『清盛』ではもう何度もあったので
驚かないんだけど、大河でよく描かれる
「非情にならなければならない」
という点以外の、権力者の悲しさを描いているところが
第三部のおもしろさよね。

ピークを過ぎて命運に陰りが見え始めた平家に比べ、
これから権力を手に入れるぞ!と発展途上の源氏は
敗走の後も前向きな雰囲気。
大軍を率いてやってきた尊大な上総広常をツンツンモードで
追い返し、「大将の器」アピールを始めた頼朝。
20年近くニートやってたのに、なにこの成長ぶり。
政子王子に「私を明日へ連れてって!」とか
姫みたいなこと言ってたくせにね!
しかし、「平家をやっつけるぞー! オー!」と
一致団結して盛り上がり、新しい世の中を目指して話し合ってる
この北条や三浦たち坂東武者も、鎌倉幕府ができてからは
権力闘争に明け暮れ、互いに陥れあって滅びていくのだと思うと
なんだか切ないね。


【その他いろいろ】

・先祖自慢した後で、「昔は昔、今は今!」という景親。
 ひょっとしてツッコミ待ちだったのか?

・義経「兄上のところに行きたいです!」
 秀衡「戦の才をよいように使われ、捨てられるだけ。命さえ危うかろう」
 予知能力者・秀衡。まるで後世の人が考えたようなセリフだな!

・義経&弁慶主従のウィリアム・テルごっこ
 →秀衡「あきれた主従じゃ」
 ほんとですね。

・維盛が総大将に任じられたことについて、
 何やら思うところありそうな宗盛。
 重盛の死後は、維盛が後継者争いの対抗馬だったんだもんね。
 この子はずっとコンプレックスを抱えたままなんだなあ。
 そして忠清の発言に
 「やっべー、どうしよ!? どうしよ!?」
 って顔してるところ。
 ちょっとしたカットにもキャラがちゃんと出てる。

・義経、特に可愛いと思ってなかったんだけど、
 「弟」な表情は可愛かった。

・梶原景時のエピソードはちゃんとやったのに、
 範頼と全成は存在自体がスルーされている。
 阿野全成は永井路子の「悪禅師」が印象的だった。

コメント
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