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金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

65:堀田善衛 『定家明月記私抄』

2018-10-05 19:25:20 | 18 本の感想
堀田善衛『定家明月記私抄』(新潮社)
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

紅旗征戎吾ガ事ニ非ズ―源平争闘し、群盗放火横行し、
天変地異また頻発した、平安末期から鎌倉初期の大動乱の世に、
妖艶な「夢の浮橋」を架けた藤原定家。
彼の五十六年にわたる、難解にして厖大な漢文日記『明月記』を
しなやかに読み解き、美の使徒定家を、
乱世に生きる二流貴族としての苦渋に満ちた実生活者像と重ねてとらえつつ、
この転換期の時代の異様な風貌を浮彫りにする名著。
本篇は定家四十八歳まで。

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読んだのは新潮社から出ていたハードカバー版の方。
なぜだかわからないけど、ここ五年くらい、ずっと定家が好き……。

出仕しているお姉ちゃんが同僚と喧嘩して
転がり込んできたのにあきれたり、
除目のたびに落ち込んだり恨み言を書きつけたり、
後鳥羽院から白拍子をあてがわれるものの
宿を借りて彼女をそこに泊まらせ
自分は別の場所に泊まったり、衝立を間に置いて寝たり。

時系列どおりでないせいで混乱するところもあったけど、
「私抄」の名の通り、明月記の記事すべてではなく、
興味深いものをピックアップして紹介してくれているので、
読み物として面白い。
貧乏を嘆いているのに、二十七人も子どもを作ってるのが
すごい。

「兼実は……などと阿呆なことを書いている」
など、著者の書きぶりに笑えるところもあって
大変おもしろかった!
続編も読もう。

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64:大塚ひかり 『本当はひどかった昔の日本―古典文学で知るしたたかな日本人―』

2018-10-05 19:12:32 | 18 本の感想
大塚ひかり『本当はひどかった昔の日本―古典文学で知るしたたかな日本人―』(新潮社)
★★★☆☆

【Amazonの内容紹介】

昔の日本では、子供は健やかに育てられ、家族は愛に満ちていた
……なんて大嘘。
『古事記』や『枕草子』『源氏物語』『宇治拾遺物語』などをひもとけば、
育児放棄や児童人身売買、マタハラに介護地獄、
ストーカー殺人から動物虐待まで、現代に負けない残虐悲惨な話だらけ! 
しかし、それでも逞しくて人間味あふれる日本人の姿を、
日本文学の古典から読み解く「文芸ワイドショー」。

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部分的にしか読んでいなかったので
このブログには記録をつけていなかったのだけど、
数年前に単行本版を読んでいたはず。

現在ワイドショーをにぎわせる残酷な事件が
一部の特異な例であって一般化できないのと同じように、
昔の日本人がみんなこんな感覚だったとは思わないけど、
「昔はよかった」が嘘だというのは納得。
ただの懐古趣味だよね。
モラルが向上しているかどうかは別問題として、
それらを「よくない」ととらえる意識は
現代のほうがかなり強いだろう。

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おでかけの記4:大須演芸場

2018-10-04 21:26:06 | おでかけの記


2日連続で、大須演芸場へ寄席を見に行った。

大須演芸場、名前はよく聞いていたけれど、
行ったのは初めて。
予想よりごじんまりした建物で、
アットホームな雰囲気。

落語の独演会と、それに近いようなものしか
聞きに行ったことがなかったので、
落語・漫才・パフォーマンス……と
さまざまな内容を組み合わせているのも、
複数の噺家さんの芸を続けて聞くのも初めて。

落語は2日間で5人のものを聞いたのだけど、
仲入りを挟んだ前半・後半のそれぞれの
トリを務める人は、やっぱり上手い。
登場人物ごとの演じ分けとか
間の取り方がちがうんだよね。

あんまりおもしろくないなあ……という場面でも
お客さんたちが白けず、
「楽しもう!」という姿勢でいたのがよかった。

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63:島崎藤村(原作)『破戒 ─まんがで読破─』

2018-10-01 17:34:29 | 18 本の感想
島崎藤村/バラエティ・アートワークス『破戒 ─まんがで読破─』(イースト・プレス)
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

「ボクは絶対にあの戒めを破りません」
「差別」という人間に根ざす社会悪を描き、
漱石からも激賞を受けた自然主義文学の傑作を漫画化! 

封建的身分差別が残る明治時代。
青年教師・瀬川丑松は父の戒めを守り、
素性を隠し暮らしていたが、
同じく被差別出身の解放運動家・猪子連太郎の生き方に感化されてゆく。
ある日、丑松の素性を疑う人物が現れ、生活は一変する……。

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原作を読んだのがもうずいぶん前で、
どれだけ簡略化しているのかわからないんだけど、
初読時と同じように胸が苦しい。

「全体で見れば、昔より今のほうが世の中は良くなっている」
とわたしはずっと思っているし、
その理由のひとつがモラルの意識の変化。
学校教育にはいろいろ問題もあると思うけど、
基本的な知識だったり道徳心だったりをOSとして
普及させるという点においてはやはりそれなりに有効だと思う。
自分たちと20歳上の世代だと、
男女の格差に関する意識にかなり大きな差があって、
それはやはり学校教育の変化に基づいてるんだと思うし、
実際に差別は社会の中に残っているけれども、
それを「よくないことだ」ととらえる意識すら
昔はなかったもの。

多くの人々が差別を当然として受け止めていた時代に、
差別される側の人間として生まれた主人公の
「逃げ場のなさ」が苦しい。
明るい方向を向いた終わり方だったけど、それも結局、
「出自が明らかになったらそこを去らなければならない」
という前提での展開だもんなあ。

たまに差しはさまれるギャグが、面白いんだけど、
全体のムードとあっていなくてそれが残念。
原作を読む気力はないけど、内容は知りたい、という人におすすめ。


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