篠綾子『星月夜の鬼子母神』(集英社文庫)
★★★☆☆3.5
【Amazonの内容紹介】
我が子を鎌倉殿にするために、母は鬼にでもなる──
鎌倉幕府草創期、権力闘争の時代。将軍の座をかけ、北条氏と争う。
鎌倉幕府草創期、まさに権力闘争の時代だった。
権力の中枢を担う源氏の乳母一族として比企氏は力をつけていく。
そして、比企の血を継ぐ若狭局は、鎌倉殿・源頼家の妻となり、長男を出産。
北条氏との権力争いが激化するなか、若狭は幼いころ経験した
親族の不幸な境遇から、強い決心を持っていた。
我が子を鎌倉殿にするためには、他人の子を喰らう鬼にでもなる──。
激動の転換期を描く時代小説。
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この作者さんの本は5冊目なんだけど、
たぶん、相性が悪いんだと思う。
というのも、読んでいて、
「いや、そうはならんやろ」
「そんなことで??」
と思うことがとっても多いのだ。
今回だと、頼朝が河越重頼を誅殺した「本当の目的」とか、
比企尼が頼朝に持ちかけた「取引」が、
ぜんぜん納得できなかった。
無理矢理ストーリーとして作っている感じがしてしまう。
でも、題材が好みのものが多いから、ついつい手に取ってしまうんだな~。
今回は若狭局が主人公。
あらすじから受ける印象より権力欲は強くなく、
ただ夫を愛し、子を案じる思いが強い母、といった感じ。
比企一族の出自にまつわる設定・エピソードは
終盤にかけてしっかり機能していたし、
ラストもとてもよかった。
主人公のわりに若狭局の出番があまり多くないのはちょっと残念だけど、
比企尼から竹御所に至る「比企の女たち」の物語とすれば納得。
「比企」として出てこないから目立たないけど、この物語の序盤、
「若狭局以前」ともいうべき母親世代のパートにもあるように、
比企の女性たちは頼朝時代にも、夫や子ども・孫を死に追いやられて
結構ひどいめに遭わされているのだった。