是枝裕和監督の新作『奇跡』を観ました。
この監督の作品はこれまで
『DISTANCE』(2001年)
『誰も知らない』(2004年)
『花よりもなほ』(2006年)
『歩いても 歩いても』(2008年)
『空気人形』(2009年)
と、並べてみると自分でも驚くほどよく観ているのですが(いずれも公開時劇場で)、やはり巧いし、それぞれに違った味があるため、つい次を期待し、観てしまうのです。
この監督の多才ぶりは、上に掲げた映画がそれぞれ全く連続性のない違った分野のものであることに示されているのですが、今回の『奇跡』は、敢えて言えば『誰も知らない』の系列にあるといえるでしょう。

共通点は、大人の生活(それ自身大変なのですが)の変化の中で、知らぬ間に疎外されてゆく子供たちを描いた点です。
しかし、大きな違いもあります。
それは『誰も知らない』が、ほとんど救い手のない中での子供たちの孤立を描いているのに対し、今回の『奇跡』は子供たちに開けの可能性を残していることです。
そのひとつの要因は、主人公の兄弟にはそれぞれ仲間がいて、この映画そのものがそれら子供たちの群像劇の一面をもっていることです。
子供たちは自分の夢が実現する『奇跡』を信じ行動を共にします。
そして周辺には、その子供たちを助ける人たちがいます。それは老人であったり教師であったりします(この辺は少し甘い気もしましたが)。
それらの人に助けられながら、後半は子供たちのロードムービーの様相を呈します。
子供たちはそれぞれ別途の夢を持ちながら行動を共にします。

圧巻は、奇跡の場に到達した子供たちがそれぞれ予め決めていた夢を託して叫ぶのに、主人公の兄弟が敢えてそれを叫ばなかったことです。
この兄弟は、私的な家族の幸福(それへの希求から出発しながらです)ではなく、「世界」を選びます。
「世界」は、私的な領域や実生活を離れた子供から大人に共通する「夢」であり「奇跡」への期待です。
小難しく言えば、必然性から逃れた偶然性への期待、それがもたらす新しいものへの希望です。
そして、それがこの映画がホームドラマから離れて開けへと通じている核心だと思いました。
奇跡は起きたのでしょうか?
実は起きているのです。
子供たちが集まり、その奇跡の場へと導かれる過程、そこへ至る過程で出会う人々、そしてそれに連れて起きる「出来事」、それらがすでにしてまさに奇跡なのです。
最後にひとつだけ自慢をさせて下さい。
ラストシーンで兄弟の兄の方がベランダに出てする仕草、そして台詞まで、私はその直前に完全に分かってしまったのです。
自分でも驚きました。
彼はこうするだろう、こういうだろうということがまさに寸分違わず合っていたのですから。
まさに私に起こった奇跡です。
私って是枝くんぐらいの監督としての才能があったのかも知れません(なんて、すぐその気になる)。
*若干、回りくどくて分かりにくいのは、まだ観ていない人のためにネタバレにならないように書いたからです。
ご覧になる価値はありますよ。
この監督の作品はこれまで
『DISTANCE』(2001年)
『誰も知らない』(2004年)
『花よりもなほ』(2006年)
『歩いても 歩いても』(2008年)
『空気人形』(2009年)
と、並べてみると自分でも驚くほどよく観ているのですが(いずれも公開時劇場で)、やはり巧いし、それぞれに違った味があるため、つい次を期待し、観てしまうのです。
この監督の多才ぶりは、上に掲げた映画がそれぞれ全く連続性のない違った分野のものであることに示されているのですが、今回の『奇跡』は、敢えて言えば『誰も知らない』の系列にあるといえるでしょう。

共通点は、大人の生活(それ自身大変なのですが)の変化の中で、知らぬ間に疎外されてゆく子供たちを描いた点です。
しかし、大きな違いもあります。
それは『誰も知らない』が、ほとんど救い手のない中での子供たちの孤立を描いているのに対し、今回の『奇跡』は子供たちに開けの可能性を残していることです。
そのひとつの要因は、主人公の兄弟にはそれぞれ仲間がいて、この映画そのものがそれら子供たちの群像劇の一面をもっていることです。
子供たちは自分の夢が実現する『奇跡』を信じ行動を共にします。
そして周辺には、その子供たちを助ける人たちがいます。それは老人であったり教師であったりします(この辺は少し甘い気もしましたが)。
それらの人に助けられながら、後半は子供たちのロードムービーの様相を呈します。
子供たちはそれぞれ別途の夢を持ちながら行動を共にします。

圧巻は、奇跡の場に到達した子供たちがそれぞれ予め決めていた夢を託して叫ぶのに、主人公の兄弟が敢えてそれを叫ばなかったことです。
この兄弟は、私的な家族の幸福(それへの希求から出発しながらです)ではなく、「世界」を選びます。
「世界」は、私的な領域や実生活を離れた子供から大人に共通する「夢」であり「奇跡」への期待です。
小難しく言えば、必然性から逃れた偶然性への期待、それがもたらす新しいものへの希望です。
そして、それがこの映画がホームドラマから離れて開けへと通じている核心だと思いました。
奇跡は起きたのでしょうか?
実は起きているのです。
子供たちが集まり、その奇跡の場へと導かれる過程、そこへ至る過程で出会う人々、そしてそれに連れて起きる「出来事」、それらがすでにしてまさに奇跡なのです。
最後にひとつだけ自慢をさせて下さい。
ラストシーンで兄弟の兄の方がベランダに出てする仕草、そして台詞まで、私はその直前に完全に分かってしまったのです。
自分でも驚きました。
彼はこうするだろう、こういうだろうということがまさに寸分違わず合っていたのですから。
まさに私に起こった奇跡です。
私って是枝くんぐらいの監督としての才能があったのかも知れません(なんて、すぐその気になる)。
*若干、回りくどくて分かりにくいのは、まだ観ていない人のためにネタバレにならないように書いたからです。
ご覧になる価値はありますよ。