六文錢の部屋へようこそ!

心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

もう最後かもしれない今年の土筆

2016-03-18 02:26:14 | よしなしごと
 今年は早いと聞いていたのだが、やはりそうだった。
 やっと時間ができたので採りに行ったらもう頭の部分が開ききったものもある。
 土筆採りの話である。

            

 他ではもうすっかり採り尽くされているかもしれないが、私のマル秘スポットへは誰も採りには来ない。大きな建物の北側で、日当たりが悪く、こんな所に土筆が出るなんてまずは考えられないからだ。しかも、私の家からは徒歩30秒・・・。
 私だって、ほんの偶然、ある時に見つけたのだ。だからここはマイ・スポットで、ここ何年か土筆に不自由したことはない。
 今年もあるわあるわの林立状態、一度手を伸ばしただけで3本採れるなんてこともある。

            

 やや遅きに失したとはいえ、土筆の旨みは頭部のほろ苦さと同時に茎のシャキッとした食感にもある。だから採った、採った。例年より多く採った。
 それには訳がある。数日前から、私のうちの前で大々的な工事が始まった。既存の駐車場や田んぼを数枚埋め立てて、中部地区に本拠を置くドラッグストアが進出してくるというのだ。
 そうなるともう来年は採れないかもしれない。

            

 わざわざ遠くへ採りに行く元気ももうないから、これが今生の食い納めかもと、欲張ってたくさん採ったのだ。
 しかしだ、土筆採りをしたことのある方はおわかりだが、採るのはある所へ行けばいとも簡単に採れる。問題はその掃除だ。
 袴を取って綺麗にするには並大抵ではない。
 今回も、15分ほどで採ったものを綺麗にするのに2時間はたっぷり要した。

            

 それらを流し台のシンクで洗って、冷蔵庫へ収納した。
 夕食時には、その三分の一ほどを使って定番の卵とじに。
 半熟卵で仕上げるつもりが、ちょっと目を離していて煮えすぎてしまった。
 画竜点睛を欠くだ。
 でも、春の味が口中に広がって、その味を満喫できた。

            

 ここに住んで半世紀、はじめは私のうちの100メートル以内には人家はなく田んぼに囲まれていた。田の間を流れる小川は、今のようにU字溝ではなく、一年中水が流れ、メダカやフナ、ドジョウがわんさかいた。
 今のU字溝は必要なときだけ水を流すから、水生生物は皆無だ。
 あの強固な、ジャンボタニシすら姿を見なくなっている。

             

 そして巨大ドラッグストアの出現。
 これから先、この辺りはどうなるのだろう。
 土筆はどうなるのだろう。
 そう、スーパーへ行けば袴を取った綺麗なものがパックにして売られている。
 しかし、子供の頃から土筆は自分の手で採って食べてきた私には、スーパーのそれはなんだか違うものに思えてしまうのだ。
 歳をとるということは保守的で頑固になるということだろうと思うが、この世界との関係においては柔軟で自由でありたい。






コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする