一昨日の菅氏の“自己都合”会見に対し、昨日、枝野官房長官、岡田幹事長、玄葉国家戦略相など、政府・与党の幹部が次々に「首相の個人的な思い」を修正しました。そして、今日、閣僚懇談会で様々な意見が出されると、あれだけ大々的にベラベラと語った当の本人が、「あれは私の個人的な思いだ」と弁明しました。
毎日のぶら下がり会見も拒否して、執務室に引きこもるヤドカリ総理が、わざわざ記者会見を設定してぶち上げたことが、とどのつまり「私の思い」って一体何でしょう。
総理大臣になったら、「私の思い」を述べるために、記者を集めて、プレスルームを使って、SPをはべらせて記者会見が出来るのですか? 私だって、「散ドラをこんな風に強くしたい」を「私の思い」を述べてみたいものです。
この程度の覚悟にもかかわらず、社民党の福島瑞穂代表のように手放しで「大英断」と賞賛する人もいます。また、政府批判をした経産省官僚の古賀氏が「脱原発は事前に根回しをすれば、東電、経済界、政界の既得権益に絶対につぶされるため、首相はあえて根回しなしに、唐突に政策を発表することで、既得権益に戦いを挑んでいる」という主旨の発言をし、それに同調する論調を結構見かけます。
しかし、こんな事実誤認も甚だしい見解で、菅氏を英雄であるかのように祭り上げるのは間違っていますし、こうした主張を展開するのは、元々反原発派のバリバリ革新派だと思います。誤解のないように言っておきますが、私は、保守や革新といったイデオロギーに興味はありません。事実がなにか、何が合理的なのか、全体整合を考えた時に何がベストなのかに興味があるだけです。
その観点で見た時に、菅氏は、元々市民運動出身で、社会民主主義寄りですから、メンタリティとしては脱原発というものはあったかもしれませんが、これまでの政治活動の中で、それを信念としてきたことはありません。それは、一昨日の会見で自分も言っていました。
それどころか、自分の信条を述べるにはベストであるはずのサミットの場でも、原子力問題の当事者であるにもかかわらず、「自然エネルギーを30%にすると言いたい」という駄々っ子のような態度をとるだけで、国益として断固原発推進の仏大統領サルコジや、脱原発に明確に舵を切った独首相メルケルなどとは、明らかに違って、どういう方向を目指すのか明らかにしませんでした。
そして、日本に戻ってからも、浜岡原発の停止要請の会見を海江田大臣から奪って自分で行いましたが、浜岡原発の停止は、他の原発は基本的には大丈夫ですというスタンスの政策でした。その延長線上で、海江田大臣はその他の原発の安全宣言をし、菅氏もインターネット集会で、「まったく同じ考えです」と言ったわけです。
こうした事実関係を抜きにして、菅氏が既得権益と戦うために、根回しなしに孤軍奮闘なんてちゃんちゃらおかしい笑止千万の意見です。
何度も言いますが、私は保守も、革新も興味はありません。今大事なのは、私利私欲ではなく、国のために尽くすことです。その点で、菅氏は明らかに資格を欠いているので、その座を退くべきです。その他の能力が多少劣っても構いません。今必要なのは、誠心誠意、国家国民に尽くすことです。
そういう意味では、いろんなしがらみに縛られ、批判はすれども、やりたい放題にさせている、政府首脳、民主党執行部も、今や同罪です。今日の若手の反菅集会も30人程度しか集まらなかったようです。民主党がメルトダウンしようと一向に構いませんが、日本を巻き込んではいけません。
菅氏がどんなくだらない暴挙に出ようと、今のような空白どころか、害毒をまき散らす状態を続けるのであれば、閣僚、与党執行部は、辞表を提出すべきでしょう。北澤防衛大臣と江田法相は菅支持になるかもしれませんが、それも含めて、それぞれの政治信条をはっきりさせるべきです。もう本当にいい加減、うんざりです。
被災地の復興は、実は被災地のためだけでなく、日本全体に関わる問題ですし、菅氏が個人的な思いでぶち上げた脱原発の問題も、本当に多くの人に関係する問題です。全員に関係するところでは、電力料が高くなるという問題がありますし、それにより、製造業が海外にシフトすれば、雇用などに大きく影響してきます。心情的には、事故が起きた時のリスクが高い原発はなくてもいいというのが、多くの人に共通する気持ちでしょうが、それによって、あなたは職を失いますよ、あるいは、遠く離れたところへ配置転換になりますよ、と言われて、はいそうですか、と言えるかどうかです。
そういう議論を抜きにして、どさくさ紛れの、自己都合だけでこういう大事な問題を持ち出すということ自体が、そもそも不見識、非常識、手前勝手と言われる所以です。
脱「菅」!くだらない目標ですが、日本再生はまずここからです。