任意連携アソシエーションのことは通常公式のメディアで報道されることはありません。
だからフラタニティなどの情報も、通じている人の口コミでしか知られない。
その真実性については読者各氏の判断にゆだねるしかありません。
前回に出た資産家のアソシエーションについてはさらにそうです。
彼らは特に自分たちの社会貢献が知られるのを好みません。
彼らは「世の栄誉」はどうでもいいと思っているのです。
これにも聖句主義的文化の影響があるでしょう。
だからその情報も得にくいのですが、筆者が教会関係者からの口コミで得た一例を
記しておきましょう。
米国には自分の資産を独り占めして抱え込むことをしないで、他の資産家と任意に連携して
社会貢献に使おうという姿勢をもっている資産家がたくさんいます。
それを上空から見ると~
「国家などの公共財源と弾力的に組み合わさったような状態にみずからの資産をおいている」
~ということもできるのです。
彼らはときとして、国家や地方自治体の財源の任意連携システム部分のような働きを
自分たちの資産にさせます。
(寄付行為が税制面で手厚く報われるような制度も背景にあります)
この連携体のことがらは一般人には非常に知られがたいのですが、かつて大統領に就任した
レーガンがアメリカ精神の再活性化を志したときに、その一端が表面化したようです。
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彼はシカゴ学派の新自由主義経済学に経済政策思想を転換しようとして、
経済社会に従来にも増して市場を拡大しようとしました。
そのことは公式のメディアも大々的に報じたのですが、教会関係者によればレーガンは
もう一つのアメリカ再生策も打っています。
彼は国内のキリスト教会がアメリカの活性化機能を果たしてくれることも期待しました。
そのため、第二次大戦での戦勝に浮かれて「世的」になって戦後衰退の一途をたどってきた
国内のキリスト教会を復興しようとしました。
彼は全国の教会を財政面で支援することを望みましたが、政教分離国家では
それを政府が直接的に行うことはできません。
そこで全国の資産家のボランタリーアソシエーションに教会の財政援助を呼びかけました。
これに呼応して寄せられた寄付金は膨大だったといいます。
それは大教会から大学のキャンパス教会さらには地方の零細教会にまであまねく配給された。
その額は受けた教会が驚くほどだったと関係者は伝えています。
これで米国の教会は豊富に設備と人材を整え一気に活性化しました。
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その成果の一端を筆者は1990年代に一年間交換教授として滞在したミシガン州の
ある大学にみることができました。
昼休みの礼拝や夕方の礼拝のために大学の礼拝堂に出席する学生があふれていました。
礼拝堂は1000人近くの収容能力を持っていましたが、レーガン政権以前は出席する学生は
20名ほどだったといいます。
この大学にも教会活性資金は与えられていました。
学校の教会担当者はあるときその財政援助金を用いて、
若者宣教に優れた一人の牧師のスカウトに乗り出したといいます。
ところがその牧師は自分だけでなく賛美音楽を演奏する自らの音楽チームとセットで
雇用することを求めました。
大学はその条件を受け、従来の教会牧師を彼とそのチームに入れ替えました。
その結果大きな礼拝堂が超満員になり、それが90年代にも続いていると言うことでした。
こういう援助を資産家の任意連携体は全国的に行ったのでした。
それはレーガノミックス(シカゴ学派の新自由主義経済学を取り入れた経済政策)の
マイナス面をもカバーしました。
市場を急速に持ち込むと人の絆が切れて国民がバラバラになるという傾向が現れます。
活性化した教会は人々のその絆を強力に再生するのです。
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余談ですが、後年この型の経済政策を後の小泉政権は模倣することになります。
だが、この政権は人民の精神的連帯修復の手段を講じることなく市場化政策をおしすすめました。
その結果、急速に持ち込まれた「市場」が、一般労働者の人的絆を断ち切って
社会をバラバラにしてしまいました。
いったん絆の切れた社会の修復には時間がかかるものです。
それはその後の日本経済低迷の隠れた一因になっています。
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いずれにせよレーガンの打った政策はその後のアメリカを活性化しました。
それは資産家の任意連携体なくして実現しないことでした。
彼らが連携して形成する資産は国家の任意基金の役割をし、
国家財政をデュアルシステム化しています。
そしてそれは聖句主義的文化の貴重な一端なのです。
(10日、11日と所用のため、更新が少なくなるかも知れません)