Sightsong

自縄自縛日記

ドン・チェリーの『Live at the Cafe Monmartre 1966』とESPサンプラー

2007-07-27 23:52:11 | アヴァンギャルド・ジャズ

自由人、無国籍人、ドン・チェリーの1966年の録音『Live at the Cafe Monmartre 1966』(ESP)が出た。ブルーノートの『Complete Communion』のあと、欧州に渡って、カール・ベルガー(vib)、アルド・ロマーノ(ds)と組んだものだ。

フロントはアルゼンチン出身のテナーサックス奏者、ガトー・バルビエリと組んでいる。演奏の完成度じたいは、さほどレコードとして評価されるものでもない気がする。しかしそれよりも、各人がまるで「音楽の力」を信じてぶつかり絡み合う様は、文字通り感動的で、聴いていると後頭部が熱くなってくる。 ドン・チェリーは、『ダウンビート』誌の取材で、リロイ・ジョーンズ(のちのアミリ・バラカ)にこう言ったという。「グループを組むには2人いれば十分だ。もしその2人が、強く、そして独自であれば・・・。」もちろん、この独自性はバルビエリに見出しているのである。(ジャズ評論家のRuss Mustoによる)

このCDにはもうひとつの目玉がある。おまけ(目立たない!)として、ESPレーベルのサンプラーDVDがついているのだ。これが凄い。ESPレーベルで作品を発表した音楽家別に、レコード1枚につき2曲程度がおさめられている(長い曲は一部分)。画面には、そのレコードジャケットと解説が表示される。ESPのレコードやCDは大分持っているが、知らないものも随分ある。

ESPだから、アルバート・アイラーの数がとても多い。他にも、オーネット・コールマン、ファラオ・サンダース、サン・ラ、マリオン・ブラウン、ジュゼッピ・ローガン、ポール・ブレイ、スティーブ・レイシー、ガトー・バルビエリ、バイロン・アレン、フランク・ロウ、ソニー・シモンズ、サニー・マレイ、ノア・ハワード、チャールス・タイラー、フランク・ライト、ミルフォード・グレイブス、バートン・グリーン、ギュンター・ハンペル、・・・書ききれないほどの猛者たち。ビリー・ホリデイやバード、バド・パウエルといった巨人の録音もある。溶けそうだ。

あらためて、マリオン・ブラウンの叙情的なアルト(いまは引退してハリウッドに住んでいるそうだ!)、ポール・ブレイの危ういピアノ、バド・パウエル晩年の酔っているようで恐ろしいほどの力をもつピアノ、ノア・ハワードの人間くさいアルトなどに心を奪われる。

そういえば私のレコード棚に、『The ESP Sampler』というレコードがあるが、こういうつまみ食い的集約ではDVDに敵わない。


『Live at the Cafe Monmartre 1966』(ESP)


マリオン・ブラウン


バド・パウエル


『The ESP Sampler』と、CD発売時から大事にとってあったESPのブックレット