Sightsong

自縄自縛日記

三番瀬(3) 何だか不公平なブックレット

2007-07-17 23:30:36 | 環境・自然

つい先日出たばかりの、『公共事業は変われるか 千葉県三番瀬円卓・再生会議を追って』(永尾俊彦、岩波ブックレット)を読んだ。

埋め立ての危機にあった三番瀬だが、堂本千葉県知事の就任により埋め立てが白紙撤回され、また、三番瀬の保全などを目的に設置された三番瀬円卓会議でこれまでどのような議論がなされてきたのかが、整理されている。

論点のひとつは、「ヘドロの海」と化している猫実川河口あたりに人工的な干潟を造成するか、自然の力によって回復するのを手助けするか、の選択にあるようだ。もともと人間活動込みの生態系であり、特に浦安市側の不自然な埋め立てがこの現象を引き起こしたらしいので、人工的な改変が必ずしも悪ということにはならないのだろう。

この著者は、不可逆的な人口干潟には反対のスタンスを取っている。また、それが、未だ蠢いている「第二湾岸道路」のステップになってしまうことを危惧している。さらには、その、県や土建業界が喜ぶ従来型の環境破壊と、人口干潟造成を推すNGOとの関係について、まことしやかに説明している。

この説明が、いかにも胡散臭い。そのNGOに県の予算が充てられたからといって不公平だと決め付けたり(予算のパフォーマンスを評価しているわけでは決してない)、NGOを代表する方の行動について「怪しい」印象を与えるよう記述したりしているのだ。確かに第二湾岸などを造らせてはならないし、それに関する国や県や(たぶん)利権構造の動きは怪しいのだろうと思うが、それとこれとは別である。岩波の見識が問われるのではないかとさえ思える。

そのNGOが三番瀬円卓会議から離脱したことについては、いろいろな意見や事態収拾の努力や(たぶん)誤魔化しがあったようだ。

千葉県の資料(円卓会議の経緯)
円卓会議の他の委員の見解
NGOの見解(この本についても批判している)

「まっとうな組織として、県と建設的な議論をする」といったことを公言していたNGOがいまでは県への憎まれ口を公表していることも含め、ちょっと嫌な気分になる。いろいろ経緯があるのだろうが、少なくとも部外者にはそう感じられる。そして、その「諍い」を一面からのみ不公平に書いたこの本についても、決して評価できない。