森崎東『生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言』(1985年)を観る。舞台は敦賀湾の原発銀座である。
沖縄居酒屋「波の上」に、ドサ回りのヌードダンサー・バーバラ(倍賞美津子)が帰ってくる。連れ添いの原発ジプシー(原田芳雄)とは、沖縄のコザ暴動のときに一緒に逃げた仲である。沼のような社会に、退学中学生、責任を取らされた引率教師(平田満)、ダルマ船の船長(殿山泰司)らがうごめく。彼らが食べていくための手段は、結局、孫請け、曾孫請けの原発ジプシーでしかない。接着剤となっているのはヤクザである。そして、原発の廃液漏れの証人を逃がそうとしたために、目に見えない権力と目に見えるヤクザに命を狙われることになる。
話をあえて混乱させることにより、混沌とした世界を描こうとする森崎東の手法は、三流としか言いようのないものだ。それはそれとして、黒木和雄『原子力戦争』(1977年)に続き、原発立地という穴を描く作品に登場した原田芳雄の演技は貫録である。殿山泰司もいつもながらの存在感をみせている。
原発ジプシー、被曝、原発立地という蟻地獄、隠蔽。
問題が問題として告発されている限りにおいて、問題は永遠の問題にとどまる。現在はとうの昔から存在していたのである。
『アートシアター ATG映画の全貌』(夏書館、1986年)より
●参照(ATG)
○淺井愼平『キッドナップ・ブルース』
○大島渚『夏の妹』
○大島渚『少年』
○大森一樹『風の歌を聴け』
○唐十郎『任侠外伝・玄界灘』
○黒木和雄『原子力戦争』
○黒木和雄『日本の悪霊』
○羽仁進『初恋・地獄篇』
○実相寺昭雄『無常』
○新藤兼人『心』
○若松孝二『天使の恍惚』
○アラン・レネ『去年マリエンバートで』
○グラウベル・ローシャ『アントニオ・ダス・モルテス』